コメ不足と価格高騰のナゼ? 在庫過剰と需要減退が常態化していたはずなのに

                2024/06/20   日刊ゲンダイ

  数年前まで需要減退、過剰在庫が常態化していたコメの不足が騒がれている。 一部では 

品薄状態が続き、“物価の優等生” の卵が高騰した際も 微動だにしなかったコメが 値上がり傾向に

あるというのだ。

 だが、農水省によると、令和5(2023)年産米は、猛暑の影響で 新潟産コシヒカリなど1等米の

収穫量は減っているものの、全体では 前年並みで在庫は逼迫していないという。

  今 どういう状況なのか。米流通評論家の常本泰志氏に聞いた。

 

   「 昨年の作況指数は 101なので、農水省の発表通り 在庫は十分なはずなのに、なぜコメ不足が

   起こっているのか。田んぼの面積に対する収穫量を示す 作況指数にカウントされにくいのが、

   収穫後、粒の厚みが基準に満たない 網下と言われるコメで、網下米は 令和4年の約半分 10万トン

   ほど マイナスです。これらは 主に 病院など公共施設に卸されるほか、他のコメとブレンドして 

   外食チェーンなどで使われます。こうした安いコメほど価格が上がっている状況です 」

 猛暑による品質低下で 新之助などの1等米だけでなく、業務用スーパーなどで販売されている

廉価なコメも不足している。不足の一方で コメの需要は旺盛で、その原因として インバウンド

(訪日客)の影響があげられているが……。

 

   「 インバウンドの影響は 微々たるもので、それより 東京都や大阪府が 非課税世帯や子育て世帯

    に配布した コメのクーポン券のほうが影響は大きく、これ以降、相場は 徐々に上昇。コメ取引

    の指標となる相対価格(5月)は 前年比で 12%ほど上がっていますが、卸売業者間で その都度

    調達し合う際のスポット価格が 1.6~1.8倍程度になっているケースもあります 」

 新米の出荷で、コメ不足は 解消されるのか。

   「 一番早い 7月末の新米に すでに買い注文が入っています。通常、新米は 早期栽培の産地である

    鹿児島や宮崎からスタートし、四国、三重の順で出荷され、9月初旬に 福井のコメが出てくると

  価格が落ち着いてきます。今年も 猛暑が予想されますが、生育状況が悪いと 色形など品質は

    落ちるものの “日照りに不作なし” と言われるように、量は 確保されるはずです。ただ、長雨が

    続くと 収穫量が減る恐れも。令和6年産の おおよその作況は 9月下旬にならないと判明しないので、

    今のところなんとも言えません 」

  物価が 軒並み高騰する中、コメの不足 と 値上がりが解消されない場合の食卓への影響が 懸念

されている。