米政府、飲料水のPFAS基準厳しく 日本の1割未満の新規制 

           2024年4月11日   日本経済新聞

       

【ニュ―ヨーク=西邨紘子】米環境保護局(EPA)は10日、人体への有害性が指摘されている

有機フッ素化合物「PFAS」について 飲料水における含有基準を決めた。

日本が定めた暫定基準値の 1割未満に相当する厳しい水準にした。

   米連邦政府が PFASを巡り、強制力のある基準を定めるのは初めて。PFAS規制を巡る

日本の議論にも影響を及ぼす可能性がある。

 EPAは、PFASのなかで毒性が強い「PFOS」と「PFOA」の基準値を1ℓ当たり4ナノ

(ナノは10億分の1)グラムと定めた。強制力のない目標値は ゼロにした。

 両物質の合算で 同50ナノグラムとする日本の暫定基準を大幅に下回る。

 「PFNA」や「PFHxS」など他の3種類のPFASと、2種類以上のPFASの混合物質についても

基準値を 1ℓ当たり10ナノグラムと定めた。

 新規制は 全米6万6000の水道システムが対象となる。水道会社には 今後3年以内に飲料水中の

PFAS量を測定し、情報を公開するよう求める。
基準を超えるPFASが測定された場合、5年以内に削減するよう対応を求める。

 EPAは、新基準に対応が必要となる水道システムを 全体の1割程度と推定している。

対応費用は 全体で 年間およそ15億ドル(約2300億円)と見積もった。

 EPAは 新規制で「 PFASにさらされる人が約1億人減り、数千人の死亡を防ぎ、数万人の

重篤な病気が減る 」と理解を求めた。水道を運営する州や自治体に対し、PFAS検査や対応を支援

するため 約10億ドルを提供する。

 水道事業者が加盟する非営利団体の米国水道協会(AWWA)は声明を出し「 公衆衛生を保護する

強力な飲料水基準を支持する 」と規制の設定に支持を表明した。
  新基準に対応するための費用負担は EPAの試算値の「3倍以上になる」と指摘し、多くの地方で

水道料金の値上げにつながると懸念を示した。

  バイデン政権は 2021年の発足以来、PFASの規制強化に取り組んできた。

 EPAは 21年10月、飲み水や産業製品、食品などに含まれるPFAS量を調べたり、飲料水の

安全基準を引き上げたりするなど 3年の工程表を公表した。毒性が強い 6種類のPFASを

有害物質に指定し、規制の枠組みづくりを進めてきた。


 直近では PFAS汚染に企業の責任を問う動きも広がる。23年には、公共水道システムの

PFAS汚染の責任を問う訴訟で、製造元の米化学大手スリーエムとデュポンが 相次いで 巨額の

和解金の支払いに合意した。

 

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