新型コロナ抗体、保有率60%超も高齢者は低く「秋以降もワクチン接種が必要」
2024/06/18 メディカルドック
厚労省は「 新型コロナウイルスの感染によって得られる抗体の保有率が、2024年3月時点
で初めて60%を超えた 」との調査結果を専門家部会で明らかにしました。この内容について
中路医師( 中路幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター) )に伺いました。
厚生労働省による調査の内容は?
今回、厚生労働省が実施した新型コロナウイルスの抗体保有率に関する調査の結果を
教えてください。
中路先生
2024年3月、厚生労働省は 新型コロナウイルスの抗体保有率に関する調査を実施し、調査結果は
厚生労働省の専門家部会で報告されました。調査対象となったのは 献血した 1万8048人で、
年齢分布は 16~69歳です。 過去、新型コロナウイルスの抗体を持つ人の割合が調べられました。
調査の結果、抗体保有率は 64.5%となり、2024年1月に行われた前回調査で示された58.8%
という結果から 5.7ポイント上昇する形となりました。
年齢別で見ると、抗体保有率が最も高くなったのは 16~19歳で、80.5%という結果になって
います。逆に 最も低くなったのは 60~69歳で、51.6%に止まっていました。
また、全年代を対象に 診療所で採血された検体を分析する調査では、抗体保有率は 60.7%という
結果が示されました。この方法の調査では、5~9歳が 抗体保有率90.6%と 最も高い結果となり
ました。10~49歳は 7割超で、70歳以上は 3割台と低くなっています。
現在の新型コロナウイルスの感染状況は?
新型コロナウイルスをめぐる 現在の感染状況について教えてください。
中路先生
2024年5月27日~6月2日に集計された内容によると、新たな感染者は 全国で 1万7401人確認
されています。去年の同時期と比べると、2割以上 少ない人数です。
都道府県別に見ると、最も感染者数が多く観測されているのが 沖縄県で、1定点あたりの報告数
は 19.74人でした。次いで多くなったのが 鹿児島県で、1定点あたりの報告数が 7.11人、続いて
北海道が 5.44人、佐賀県が 5.13人、千葉県が 4.81人となっています。
年代別に見ると、1定点あたりの感染者数が最も多くなったのは 50~59歳、逆に 最も少なくなった
のは 15~19歳でした。
厚生労働省の調査への受け止めは?
厚生労働省が実施した新型コロナウイルスの抗体保有率に関する調査の結果への受け止めを
教えてください。
中路先生
日本において、ワクチン接種ではなく、感染によって得られる「抗N抗体」の保有率は高くなって
きています。しかし、依然として 高齢者の感染割合は 高い状況が続いています。そのため、今後も
ワクチン接種が必要であり、特に 65歳以上が対象の秋の定期接種は重要であると考えられます。
まとめ
厚生労働省は、「 新型コロナウイルスの感染によって得られる抗体の保有率が、2024年3月時点
で 初めて60%を超えた 」との調査結果を、厚生労働省の専門家部会で明らかにしました。
厚生労働省の専門家部会の部会長の脇田氏は「 高齢者の感染割合が低い状況が読み取れる。今後も
ワクチン接種が必要だ 」とコメントしています。
2024/06/17 メディカルドック
厚生労働省の専門家委員会は、今年度の新型コロナウイルスワクチンの定期接種について、
オミクロン株の新系統「JN.1」やその派生型に対応したワクチンを使う方針を決めました。
この内容について中路医師に伺いました。
≫“新型コロナ後遺症” 5類移行から1年も相談減らず「症状で苦しむ患者が絶えない」
厚生労働省が決定したワクチン接種の方針の内容は?
厚生労働省の専門家委員会が決定したワクチン接種の方針について教えてください。
中路先生
2024年5月29日に開催された厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の小委員会
は、今シーズンの定期接種で使用する新型コロナウイルスワクチンの方針について、「 新しい系統
のJN.1に対応するワクチンを使う 」と決定しました。小委員会では、国内での直近4週間の検出数が、
JN.1系統とその亜系統が 50%超、XDQ.1系統が 30%程度と報告されていました。
JN.1をめぐっては、WHO(世界保健機関)の専門家グループが「 既に承認されているXBB系統
の1価ワクチンでも、初期のJN.1系統に対する 一定の効果が期待される一方で、さらに変異が続くと
発症予防効果が 現状より弱くなる可能性がある 」と言及しています。
つまり、WHOも JN.1系統のワクチンを推奨している形となります。今回、専門家委員会が決定
した方針は、こうした背景を受けてのものになります。JN.1系統のワクチンは まだ流通していません
が、今後は 各メーカーによる開発や承認申請を進めていくことが予想されます。
現在の予防・診療体制は?
新型コロナウイルスをめぐる 現在の予防・診療体制について教えてください。
中路先生
新型コロナウイルスの予防について、新型コロナウイルスワクチンは 2024年3月まで全額公費負担、
つまり 無料で接種を受けることができました。 しかし、2024年4月からは インフルエンザと
同じように、原則接種費用の一部自己負担が求められる定期接種に変わりました。
新型コロナウイルスの医療費を巡っては、2021年から治療薬を全額公費で負担をしていましたが、
2023年5月に 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが 季節性インフルエンザと同じ5類に移行
したことを受けて、2023年10月に 治療薬は 所得に応じて3000~9000円の自己負担となりました。
そして、2024年4月からは 公費負担を全廃しています。そのため、治療薬は 窓口負担の割合に
応じて 1~3割の支払いを求められることになります。
重症化リスクがある人向けの「ラゲブリオ」は、窓口負担3割の人で 約2万8000円となります。
また、軽症や中等症向けの飲み薬である「ゾコーバ」は、3割負担の人で約1万6000円となります。
入院患者向けに使われる点滴薬「ベクルリー」は、3割負担だと 約5万6000円です。
厚生労働省が決定したワクチン接種の方針への受け止めは?
厚生労働省の専門家委員会が決定したワクチン接種の方針への受け止めを教えてください。
中路先生
今回の厚生労働省の専門家委員会の決定は、今後のウイルスの変異が JN.1から続いていくことが
想定される中、JN.1系統 や その下位系統に対応したワクチンの使用を推奨した点で 先手を打つ形
となるので、適切であると考えます。
ただし、全く予想しない 新たな変異株が登場する可能性は ゼロではないため、今後も感染の推移
を慎重に見守っていくことが重要と考えます。
まとめ
厚生労働省の専門家委員会は、今年度の新型コロナウイルスワクチンの定期接種について、
オミクロン株の新系統JN.1 や その派生型に対応したワクチンを使う方針を決めました。
ワクチン接種については、今年度から 65歳以上の高齢者らを除き、一部自己負担が求められること
に変わったので注意が必要です。