🔶政治圧力に「裁判官は服さない」 赤根智子ICC所長が来日して会見

                  2024年6月14日 朝日新聞デジタル

 国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)赤根智子所長(67)が就任後初めて来日し、

14日、東京の日本記者クラブで 記者会見した。各地で 戦争が起きている現状を「大きな困難」だ

としつつ、「 我々としては 法の世界で 正義を貫くという姿勢を真っすぐに突き進め、他の方面の

方々とも呼応した形で、最終的には 平和な世界を目指すということに尽きる 」と語った。

  ICCは 戦争犯罪や人道に対する罪に関わった個人を訴追する機関。赤根氏は 判事をつとめた後、

今年3月日本人として 初めて所長になった
                                                           国際刑事裁判所 - Wikipedia
 ICCは 昨春、ウクライナ侵攻に関連して ロシアのプーチン大統領に逮捕状を出したが、

担当裁判官だった 赤根氏は ロシアから指名手配されている。また  ICCの検察局は 5月、

パレスチナ自治区ガザでの戦闘をめぐり、イスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を請求。

イスラエルや米国から 強い反発を受けた。

 

   こうした政治的圧力について問われた赤根氏は、個別事件への言及は避けたものの、「 ICCの

職員や裁判官は これらに服しないという気持ちで、毎日業務に向かっている 」と答え、「 ICCの

司法判断を尊重すべきだ という空気を作り出すことが 政治的な圧力に対する抑制になる。それこそ

法の支配を標榜(ひょうぼう)する日本の方々の役割でもあると思う 」と述べた。

 ICCへの理解促進が 今回の来日の目的の一つだという。日本は ICCの分担金の最大の拠出国

である一方、日本人の職員数は 少ない。また、戦争犯罪や人道に対する罪に関する国内法の整備が

不十分だと赤根氏は指摘した。

 また アジア太平洋地域の ICCの広報を担う地域事務所を置く構想があり、東京は候補地の一つ

になっていることも明かした。

 

 

2024.6.14    日本記者クラブ   (57分)

 

 

 

 

 

🔶ICC イスラエル首相やハマス指導者ら双方計5人の逮捕状請求 

              2024年5月21日    NHK 

 イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐって、ICC=国際刑事裁判所のカーン主任検察官は、

イスラエルのネタニヤフ首相 や ハマスのガザ地区トップのシンワル指導者など、双方の合わせて

5人に対して 逮捕状を請求すると明らかにしました。これについて、双方が相次いで声明を出して

反発しています。

 

 ICCのカーン主任検察官は 20日に声明を発表し、戦争犯罪人道に対する犯罪の疑いで、

イスラエルとハマスの双方の合わせて 5人に逮捕状を請求すると明らかにしました。
  このうち イスラエル側は、ネタニヤフ首相とガラント国防相の2人に対してで、去年10月8日以降、

戦争の手段として 民間人を飢餓に陥らせたり、意図的に民間人に対して攻撃を行ったりした戦争犯罪

などに責任があると信じるに足る合理的な理由があるとしています。

  一方、ハマス側は、ガザ地区トップのシンワル指導者や、ハニーヤ最高幹部ら3人に対してで、

去年10月7日のイスラエルに対する襲撃で 民間人を殺害したり、少なくとも 245人を人質にとったり

した戦争犯罪などの責任があると信じるに足る合理的な理由があるとしています。

   カーン主任検察官は、声明で「 国際法は すべての人に適用される。歩兵も司令官も政治家も

罰を免れることはできない 」と強調したうえで、今後 さらなる逮捕状を請求する可能性もあるとして、

改めて国際法の順守を求めています。
   裁判所では 今後、予審裁判部が、検察官が提出した証拠などを検討したうえで、逮捕状を出すか

判断することになります。

 

双方 ICCに対し反発

   これに対して ネタニヤフ首相は 20日の声明で「 ICCの検察官が 大量殺人者であるハマスと

民主的なイスラエルを対比したことを 嫌悪感をもって拒否する。われわれの手を縛ろうとする試み

は失敗する 」と非難しました。

   また ハマスも 20日の声明で「 被害者と死刑執行人を同等に扱おうとすることを強く非難する 」

と反発しました。ICCは 今後、予審裁判部が、検察官が提出した証拠などを検討したうえで逮捕状を

出すか判断することになります。

 

米 バイデン大統領「 イスラエルとハマス 同等ではない 」

   ICC=国際刑事裁判所のカーン主任検察官が イスラエルのネタニヤフ首相や、ハマスの

ガザ地区トップのシンワル指導者などに対し 逮捕状を請求すると明らかにしたことについて、

アメリカのバイデン大統領は 20日、声明を発表し「 イスラエルの指導者たちに対する逮捕状の

請求は言語道断だ 」と非難しました。

   また、バイデン大統領は、ユダヤ系アメリカ人を招いた、ホワイトハウスでのイベントで挨拶し

「 イスラエルとハマスは同等ではない。民間人を守るためにできることは すべてするが、はっきり

させておきたいのは、ICCの主張と違って、いま ガザ地区で起きていることはジェノサイドではない。

我々は そうした主張を拒絶する 」と述べました。

 その上で「 我々は 常にイスラエルと共にあり、イスラエルの安全保障への脅威に立ち向かう 」

と述べ、イスラエルの防衛を支援していく姿勢を強調しました。

 

ICC逮捕状の意義と影響

   ガザ地区で続く衝突の双方の当事者に対する逮捕状を請求することについて、カーン主任検察官は

声明で「 法を公平に適用する姿勢を示さず、選択的に適用している と受け止められれば、法が崩壊

する条件をつくってしまう 」と説明し、捜査の公正さと中立性を強調しています。

   ICCが 逮捕状を出すかどうかは このあと予審裁判部の判断に委ねられますが、実際に逮捕状が

出されれば、ICCに加盟する日本を含む 124の国や地域は、域内に対象の人物がいれば 身柄を拘束し

裁判所に引き渡す義務を負うことになります。

   このためネタニヤフ首相らは これらの国や地域への渡航が難しくなり、外交活動などが制限される

事態も想定されます。
  ICCが ウクライナでの戦争犯罪の疑いで 逮捕状を出したロシアのプーチン大統領は 去年、ICCに

加盟する南アフリカで開かれた国際会議への対面での出席を見送りました。

  イスラエルは ICCに加盟しておらず、首相や国防相に対する逮捕状が請求されたことに 激しく反発

していて、今後の捜査などにも 一切 協力しないものと見られます。