マイナ保険証のごり押しで混乱

           …河野太郎担当相「やりすぎは気をつけて」 

                    政府が「台本」書いているのに

                                                2024年6月11日          東京新聞

    「 まるで強制だ 」。 

      マイナ保険証の利用を増やすため、政府が推奨する病院や薬局での声かけが 混乱を生んでいる。

      河野太郎デジタル担当相は 11日の定例の会見で、病院や薬局で声かけを強めていることについて

     「 何事もやりすぎ ということにならないように 気をつけていただく必要はある 」としながらも、

     「 12月2日から(現行の)保険証の新規発行が停止されて、マイナ保険証を基本としたものに

      移り変わっていく中で、なるべく早く マイナ保険証をお持ちの方には使っていただきたい 」

      と訴えた。

 

◆「保険証を」の案内が 普及のネック

   河野氏は「 医療機関で『保険証を』という声かけになってしまうのが ネックになってしまって

いる 」と発言。マイナ保険証の利用が進まない原因が、「 マイナ保険証を 」と案内しない病院や

薬局での窓口対応にあるとの見解を示した。

   マイナ保険証の利用促進のため、「 そこ(病院や薬局での声かけ)の是正というところに力を

入れていただくようお願いしている 」とし、窓口での声かけを通じた普及策に 力を入れていく考えを

示した。

 

◆尻たたいているのは 政府のほう

  そもそも 低迷するマイナ保険証の利用促進のため、病院や薬局の尻をたたいているのは 政府の

ほうだ。 厚生労働省は、医療機関向けに 窓口での声かけの「台本」(トークスクリプト)を用意。

最初に「 マイナンバーカードをお持ちでしょうか? 」と声をかけるように促している。

台本通り声かけを徹底するため、医療機関への支援金の支給条件の一つにしている。

   一方で、現行の保険証が 当面、使い続けられることなどの説明は少なく、「 マイナ保険証一辺倒

では『ごり押し』になる 」と 複雑な心境を語る薬局関係者もいる。

 

◆河野氏の発言に「責任転嫁だ」

 河野氏は 4月、自民党の国会議員に、マイナ保険証が使えない医療機関を見つけたら「通報」を

促すような文書を配り、物議を醸した。

   窓口での声かけに「 やりすぎは気をつけて 」と医療機関に忠告するような河野氏の発言に、

X(旧Twitter)上では「 責任転嫁だ 」といった批判が相次いだ。

   病院や薬局での声かけや配布チラシを通じて、12月2日からは「 マイナ保険証しか使えない 」

と誤って解釈する人も出ている。

 

◆周知方法見直しには直接回答せず

 12月2日以降も 現行の保険証が 最長1年間使えることや、資格確認書で引き続き受診できることを

併せて アナウンスするよう医療機関側に求めるなど、国民への周知方法を見直す考えはないのか。

 

   河野氏は 会見で、記者から こう問われると、「 チラシなどの紙面が限られている中で、

まず マイナ保険証を基本とする受け付けになるべく早く変えてください ということを分かりやすく

伝えていきたい 」と述べるにとどまった。

 

 

  薬局での声かけを巡っては、大手薬局の系列店に薬をもらいに来た男性が、現行の保険証を

突き返されたため、「 マイナ保険証がないと薬がもらえない 」と思い、不本意ながらマイナ保険証

の利用登録をするトラブルも。 男性の抗議に、大手薬局は「 誤解を招いた 」として謝罪文を送った。

 

   この大手薬局では、現行の保険証廃止を見越して、昨年12月から保険資格の確認に現行の保険証

を用いない運用に切り替えていた。廃止前から、現行の保険証が使えない と受け取れるような対応に、

医療団体からは「 マイナ保険証の使用が義務かのような誤った印象を与える 」と疑問の声が出ている。

 

◆武見厚労大臣「丁寧な説明が重要」

  武見敬三厚生労働相は、この日の会見で、大手薬局の窓口対応に触れ、「 医療現場では 

患者に対して(健康保険証やマイナ保険証のどちらか一方を)無理強いをするのではなく、丁寧に

説明を行い、薬局は 処方箋、マイナ保険証、健康保険証のいずれかの方法で患者の資格確認を行う

こととされていることを踏まえて 適切に運用することが重要 」と答えた。

 

 

マイナ保険証にイヤイヤ登録させ…「誤解与えた」大手薬局が謝罪文

「現行保険証を突き返された」抗議を受けて

                                    2024年6月9日        東京新聞

 

・・・

 大手薬局は昨年12月から、全国に約900ある全系列店で薬を処方する際、現行の保険証での

資格確認を取りやめていた。

広報担当者は「 いずれ現行の保険証はなくなるし、国もマイナ保険証の活用を進めていこうとして

いたから 」と説明する。

  病院や薬局では 昨年4月から、マイナ保険証をカード読み取り機にかざして健康保険の利用資格

があるか調べる「オンライン資格確認」の導入が義務化された。それでも マイナ保険証の利用は

低迷しており、政府は 今年1月から、利用者が増えた病院や薬局に支援金を出すなどして普及に

てこ入れを図っている。

マイナ保険証の利用促進のため、厚労省が病院や薬局に示している取り組み内容のチェックリススト

 

 マイナ保険証の利用促進のため、厚労省が 病院や薬局に示している 取り組み内容のチェックリススト

 

 大手薬局は 支援金の制度を利用しているかどうかを明らかにしないが、資格確認に現行の保険証を

用いないことについて「 マイナ保険証を推奨している国の方針に沿った対応だ 」と主張する。

大手薬局では、マイナ保険証を持っていない人には 処方箋で資格確認し、薬を出しているという。

広報担当者は「 患者としては『マイナンバーカードはありませんか?』と言われ、現行の保険証を

突き返されると『使えない』と思ってしまうかもしれない 」と、男性の気持ちを推し量った。

 

◆厚労省「法令には違反しない」 その根拠は

   厚生労働省の規則では、薬局が 薬を処方する場合、
     ①処方箋
     ②マイナ保険証
     ③現行の健康保険証
のいずれかで 資格確認することになっている。

大手薬局の運用は、3つある選択肢の1つを奪うことになるが、法令上の問題はないのだろうか。

 

 厚労省医療介護連携政策課の竹内尚也課長は「 3つの方法のうち、どれかで確認していれば

問題はない 」とする。

 

◆「マイナ保険証が義務と誤解生む」

  そもそも 処方箋さえあれば 薬はもらえる。

全国保険医団体連合会(保団連)の本並(もとなみ)省吾事務局次長は、「 あえて現行の保険証を

受け取らず、マイナ保険証の利用を促す 大手薬局のような対応は、マイナ保険証の使用が義務かの

ような誤った印象を与える 」と問題視する。

   本並氏は「 マイナ保険証を普及させたいから、現行の保険証を お払い箱にするのはとんでもない

やり方。国の利用促進キャンペーンが過熱し、トラブルを起こしている 」と指摘する。

 

   不本意ながらマイナ保険証を作った冒頭の男性も、支援金で 病院や薬局を駆り立てる政府の手法に

「 カネ欲しさに利用者をだます 病院などが出てくるのでは。やり方に誠意を感じない 」と疑問を

投げかける。

 

◆東京都薬剤師会「勧めていない」

   現行の保険証を 資格確認に用いない大手薬局の対応について、東京都薬剤師会の担当者は

「 東京都薬剤師会としては、そのようなやり方は勧めていない 」と話す。

他の大手薬局6社に確認すると、「 もちろん、現行の保険証でも資格確認しています 」

「 実際に使っている お客様がまだたくさんいらっしゃいますので 」などと答えが返ってきた。

現行の保険証を 資格確認に用いないとしている社は なかった。

 

    男性に謝罪文を出した大手薬局の広報担当者は「 資格確認の運用を見直すつもりはないが、

マイナ保険証が必須ではないと分かりやすく伝わるように声かけしていく 」としている。

 

 

   「マイナ保険証でしか薬出さない」は 法令違反 - 全国保険医団体連合会