【官房機密費を知り尽くした男】平野貞夫・元参院議員が語る“授受”のリアル 

「本格的に増額されたきっかけは日韓国交正常化」

                                        2024.06.03            NEWSポストセブン 

  毎月約1億円、年間約12億円もの税金の使途が “ブラックボックス”になっている ── それが

官房機密費」だ。 国会で 「政治とカネ」の改革を掲げて 必死にアピールする岸田文雄・首相も、

そこには 決して手をつけようとしない。

 このままでは、次の総選挙で 機密費が好き放題に使われかねない。そこで 本誌・週刊ポストは、

官房機密費に触れたことがある人物たちに総力取材した。

 

予算増額のきっかけは 1965年の日韓国交正常化

 衆議院事務局職員などの経験を持ち、豪腕・小沢一郎氏の「知恵袋」と呼ばれた平野貞夫・

元参議院議員は、永田町の住人のなかでも 官房機密費“授受”のリアルを知り尽くした数少ない人物だ。

   平野氏は「 機密費予算が 本格的に増額されるきっかけは 1965年の日韓国交正常化を巡る国会

だった 」と語る。

「 日韓基本条約を有利な形で結ぶため、佐藤栄作内閣は、韓国の政治家や日本のマスコミを懐柔する

カネの捻出を迫られた。 金銭面でも 米国に頼らない独立国として機密費を準備しておく重要性が

意識され、翌年度予算で措置されたのです 」

 

 当時、与野党対決ムードの衆議院で 自民党の国会対策を担ったのが、副議長の園田直氏。

その秘書が平野氏だった。

「 副議長の使いで 月の初めに官邸に行くと、竹下登・官房副長官から 国会対策費用として機密費

から300万円を渡されました。そのカネを秘書として預かっていたら、議運の理事だった自民党の

金丸信さんが『野党理事を石和温泉に連れていく』と言って持っていったこともありました 」

 

 佐藤内閣退陣後は、田中角栄内閣が発足。 平野氏は、衆院議長の前尾繁三郎氏の秘書として

働くことになったが、その時も 機密費と間近で接した。

「 前尾さんの私邸に 二階堂進・官房長官が会いにきた時のことです。長官が帰った後で部屋に行くと、

紙袋に100万円ずつ包まれた札束が 5つ。金権選挙にも批判的だった前尾さんは『 こういうことだから

民主主義が育たない 』と怒って 紙袋を投げ捨てました 」

 

政権交代を経ても 同じ議論が繰り返される現状

 1992年に 参議院議員に当選した平野氏は、小沢氏らとともに 自民党を離党し、細川護熙・

羽田孜内閣では 与党議員になった。

 議員になってからは、“餞別”として 機密費を受け取る経験もあった。

「 ワシントンDCで 日本の政局について講演を依頼されて渡米する際、羽田内閣で官房長官を務めた

熊谷弘さんの秘書官が 餞別として100万円を届けにきた。間違いなく機密費からでしたね 」

 

使途が公開されない「官房機密費」の資金の流れ

 

 長年にわたり、機密費と接してきた経験がある平野氏は、今こそ 機密費について包み隠さず話し、

改革を訴えなくてはならないと考えているという。

 そして、政権交代を経ても 同じ議論が繰り返される現状をこう嘆く。

「 政治にカネがかかるのは確かですし、現在の日本政治文化のなかで 規制や廃止をしても、さらに

闇に消えるカネが増えるだけです。だから 具体的な使途を公開することが重要です。

せめて アメリカのように 20年後には使途を公開するような仕組みに変えるべき。そうでなければ、

いつまで経っても機密費の改革は進まないままです 」