「無縁遺体」5年間で3割増

  独り暮らし増加や親類の引き取り拒否広がり (読売調査

            2024/06/03   読売新聞

 

 死後に引き取り手がない「 無縁遺体 」の取り扱い人数について、読売新聞が 政令市と道府県

庁所在市、東京23区の計74市区にアンケートを実施したところ、計69市区で 2022年度までの

5年間に3割増加していたことがわかった。

 国内死者数の増加率を上回るペースで、背景には 独居高齢者の増加や親類の引き取り拒否が

広がっていることがある。厚生労働省は 近く、実態調査に着手する。

 

身寄りのない男性の葬儀に参列したのは、生前、支援に当たっていたNPO職員1人だけだった(4月18日、名古屋市東区で)=菅野靖撮影
身寄りのない男性の葬儀に参列したのは、生前、支援に当たっていたNPO職員1人だけだった
(4月18日、名古屋市東区で)=菅野靖撮影

 

 孤独死で身元がわからない、または 身元がはっきりしていても引き取り手がない「無縁遺体」は、

死亡地の市区町村が、墓地埋葬法や行旅法、生活保護法に基づき、火葬・埋葬する。

 

   読売新聞は 今年2~5月、政令市など主要自治体74市区に対し、22年度まで 5年間の

無縁遺体の年度別取り扱い人数を尋ねた。把握していた69市区の回答を集計すると、

18年度の計 8800人から右肩上がりに増え続け、22年度は 計 1万1602人に達し、

18年度比で32%増えていた。

 

 22年度の取り扱い人数が最も多かったのは 横浜市の1659人で、18年度比33%増だった。

東京23区では 江東区が最多の501人で、同31%増。 

増加率が目立って高かったのは、名古屋市の80%、札幌市の65%、千葉市の46%だった。

 大阪市は 年度別人数を集計していないが、公営墓地に 合祀した身寄りのない遺骨は  22年度に

3149人分あり、18年度比で 3割増えていた。和歌山市は 無回答。前橋、津、岐阜の3市は 

18年度の記録がなかった。

 

 厚労省の人口動態統計によると、22年の死者数は 156万9050人で、18年の 136万2470人から

15%増加している。各地の無縁遺体の取り扱い人数は それを上回るペースで増えていることになる。 

 増加の理由については、「 独居の高齢者世帯が増え、社会や家族の在り方が多様化している 」

(京都市)、「 親族に連絡がついても 遺体や遺骨の引き取りを拒否される 」(東京都中央区)を

挙げる自治体が多かった。

                                                                         死亡数&死亡率の推移

 

 総務省が 昨年3月に公表した調査結果では、全国の自治体が 18年4月~21年10月に取り扱った

無縁遺体は 計約 10万6000件に上る。ただ、この調査では 自治体別や年度別の取扱い人数を

公表しておらず、地域の実態は 正確に把握できていなかった

厚労省は近く、無縁遺体の取り扱いを巡る課題を把握するため、自治体や専門家へのヒアリングなど

を行う実態調査を始める。