「海岸のゴミ」が「カネ」に変わる⁉

...新しい「人間関係」を提供する鎌倉発祥の「地域通貨」の衝撃の実態

        2024.06.01  (井手 壮平) | 現代ビジネス

 

 「 終わりのない成長を目指し続ける資本主義体制は もう限界ではないか 」

そんな思いを 世界中の人々が抱える中、現実問題として 地球温暖化が「 資本主義など 唯一永続可能

な経済体制 足りえない 」ことを 残酷なまでに示している。しかし その一方で、現状を追認するでも

諦観を示すでもなく、夢物語でない 現実に即した ビジョンを示せる論者は いまだに現れない。

   本連載では「 新自由主義の権化 」に経済学を学び、20年以上経済のリアルを追いかけてきた

記者が、海外の著名なパイオニアたちと共に 資本主義の「教義」を問い直した 『世界の賢人と

語る「資本主義の先」』(井手壮著)より抜粋して、「現実的な方策」をお届けする。

 

探る「第3の道」

   格差を広げ、環境破壊をやめられない 資本主義を修正する さまざまな試みは、抜本的な変化を

もたらすには至っていない。まったく 別の経済システムなど考えること自体が 非現実的だ と

多くの人が考える最大の理由が、資本主義に代わる経済社会システムとして 考察された社会主義の

失敗だろう。

   全体主義がもたらした 人権抑圧や計画経済の非効率は、多くの人々にとって 唯一の受け入れ可能な

経済体制として資本主義を不動のものにした。

だが、資本主義でも 社会主義でもない「第3の道」は、テクノロジーによって可能になるかも

しれない。

 

地域通貨

 神奈川県鎌倉市に本社を置く 唯一の上場企業で、ゲーム開発などを手がける カヤックの社長、

柳澤大輔(49)は 地域通貨に その可能性を見いだす。同社が 2019年に「まちのコイン」事業として

実証実験を始めた電子マネーは、単なる 地域限定の商品券ではなく、お金では測れないものを測る

「別の価値の尺度」を提供することを目標に掲げる。

 

   たとえば、海岸のごみ拾いに参加するとコインがもらえ、それを使って 市内で収穫された規格外の

野菜を買える。「通貨」といっても 用途は限定されるが、海をきれいにした上で食品廃棄も防げる

など、単なる財・サービスの交換以上の価値が生まれる仕掛けだ。

 

   柳澤は「 違う価値観と言ったところで、最終的に価値を測るツールが 法定通貨しかないならば

社会は変わらない。別の発想で、今まで測っていなかったものを測る必要がある 」と狙いを語る。

目指すのは、流通量が増えるほど 地域の人間関係が豊かになっていくような 新しい「お金」だ。

   資本主義を変えるというゴールを 山にたとえると「まだ 0.1合目か 0.2合目」。だが

「まちのコイン」の利用者は 鎌倉市だけで 1万人を超え、全国20自治体以上で展開するなど、普及

への手応えを感じている。

 

「ChatGPT」の次にOpenAIが仕掛ける「世界革命」...アルトマンCEOが主導する「UBI」とは』へ続く