【諸永裕司のPFASウオッチ】

「何も説明しないし、対策も持ってこない!」

      静岡市長が会社に“公害の汚染者負担”求める

                    2024年5月15日  スローニュース

 

 国際機関から発癌性を指摘されているPFAS(有機フッ素化合物)。ジャーナリストの諸永裕司さん

は、静岡市にある 三井・ケマーズフロロプロダクツ(旧三井・デュポンフロロケミカル)の清水工場

で 高濃度に汚染された排水や排気の実態を記した 大量の極秘資料『ディポン・ファイル』を入手し、

スローニュース上で スクープ連載を発信。 PFAS汚染が 全国で問題になる中、地元のみならず各地

から反響の声が上がっています。

   この報道を受けて、いま どう対処しようとしているのか。今回、工場が立地する静岡市の

難波喬司市長に諸永さんがインタビューをしました。

 

 「 公害であるのは明らかだ 」
  難波市長は 対外的な説明を 一度も行っていない会社に、説明責任を果たすよう 強く求めると

語りました。主な 一問一答です。

 

「会社から何のコメントも出ていない」

―― 三井ケマーズフロロプロダクツ(MCF)の清水工場による汚染について、市は これまで

   会社から どのような説明を受けてきましたか。

 

   工場の外は(MCFは)調べてない、我々が調べてるだけですよね。工場の中の汚染についての

説明は ほぼゼロですね。

 

―― 市長が聞いても 答えない?

 

   最低限のことは 答えますけどね。どのあたりが 一番 濃度が高かったとかは話してくれますけど、

公表は不可ということです。

 

―― 公表不可というのは、会社側から?

 

  企業情報ですから聞いたからといって (市が)一方的に出すわけにはいかない。

「 公表していいですか 」って聞いたら「 いや、ちょっと駄目です 」みたいな感じです。

教えてもらっているのは、工場の西南角あたりの濃度が高いということぐらいですね。

 

―― 工場から数キロ離れた地区でも 地下水汚染が起きています。

 

  大気(汚染)以外はない ですよね。あの地区まで地下水は繋がってないですから。

大気で広がったものが土壌に落ちて、それが 何らかの形で水に出ているっていうことだと思います。

 

―― 会社が 市民に対して説明する必要性はないでしょうか。

 

  市民に対して説明する必要はある と思います。ただし、どのぐらい使っていたかよりも、

(汚染を)拡散させていた事実を認めることが大事だと思います。

  はっきり申し上げますが、この会社から公式見解が出たことはない。工場の近くだけではなく、

数キロ離れたところでも 地下水の濃度が高いという実態に対しても、会社から何のコメントも

出ていないというのが実態ですね。

 

―― 静岡市、地元自治会、MCFによる3者協議でも言及はないですか。

 ないですね。(過去に)何が行われていたかの言及もない ですね。

 

汚染者負担の原則を

―― 汚染対策の費用負担については どう考えますか。

 

  我々は どうやって濃度を下げていくかを注視していますけど、一定の費用がかかることを

会社が どうお考えなのかは、これから話をしていかないといけないですよね。

(補償も含めた)法的なところまで含めて やる可能性はあります。

 

―― 会社に対して補償を求めることもある、と。

 

  PPP(Poluter Pay Princeple)、汚染者負担の原則について検討していますが、適用できるかどうか。

環境基本法とか 個別法までみても 明確には書かれていないので、もうちょっと詰めていかないと

いけない。また、法令上の問題とは 別に、良識の問題がありますよね。

 

―― 良識というのは 企業倫理ということですか。

 

  そうです。仮に、法的には 汚染者負担の原則は適用されないとなったとしても、

 「 じゃあ、私達は関係ありません 」で 企業倫理として済むのかというのはあります。

 

―― 例えば、市が 土壌や水質の改善に取り組むということは?

 

  あまりにも範囲が広すぎるので、できないです。工場周辺だけなら、遮水壁などを設ければ

汚染を遮断できると思っていたのですが、(汚染は)地下水が連続していないところにも、

数キロ先まで広がっているので。

  市として 取り組むのは、工場からの排水が流れ込んでくるポンプ場の水を浄化することです。

これを市の税金でやります と言ったら、社会的には 誰も納得しないですよね。それに対しては

(MCFに)一定の負担をしてもらう。

 

―― そういったことに関しても、会社は説明していない。

 

  普通ならやりますよね。これだけ迷惑をかけていて。

(丸山剛社長との面会でも)「やるつもりはない」ということがあって。市民に対して説明する

必要性はあると思います。

 

―― 今年に入ってから、MCFとの話し合いは?

 

  今年度に入ってからは ゼロです。間違いなく ゼロ。 新年度 こういう対策を取りますって

いうふうに来られるのが 普通だ と思いますけども。

 

―― そこに 憤ってらっしゃる?

 

  まあ、そういうことですね。

 

「公害以外のなにものでもない」

―― 総務省は、公害について、次のように定義しています。

  「 事業活動に伴って生じる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音・振動、

地盤の沈下、悪臭、健康や生活環境への被害が生じること 」。

清水工場による汚染が これに当たるかどうか。どうお考えですか。

 

  公害です。公害以外のなにものでもないですよね。法律に照らして厳密にみたわけではないですが、

実態的には 公害ということで十分だと思います。公への害ですから。

 

―― 飲用井戸が使えなくなった方々への補償なども必要になりそうですね。

 

  本来は、1軒1軒自ら調べて 自ら対策を取るっていうことは、やらないといけないと思います。

ただ、(住民から)申し出があった場合は 対応されてる。でも、本当に それでいいんですか、

ということは 問われてもおかしくないですよね。

 

―― 市長も そろそろ堪忍袋の緒が切れると。

 

  何回も 切れてますけど。例えば (MCFが昨年、ポンプ場に設置した)活性炭による浄化装置は

何も効かなかったんですよ。私、見に行きましたけど、見た瞬間に こんなもの効くわけないと

わかるものを設置して、それで 何カ月失ったんですかって。そのときは ずいぶん言いましたよ、

いい加減にしてください、と。

 

今後の取り組みは

―― 今後、市として 取り組んでいくことは?

 

  とにかく ポンプ場ですね、ポンプ場の排水を何とかしないといけない。

あとは(遮水壁の設置による汚染の)遮断ですよね。遮断してもらわないと納得できないです。

 

―― どうみても 公害で、企業として 社会的な責任を果たしてほしいと。

 

  今後の対策は 一体どうされるんですかと。これまでは 企業の良識におまかせしていましたが、

そろそろ こちらから申し上げないといけない時期かな という感じだと思います。

 

―― PFOSとPFOAは 国が規制対象にしています。ただ、これに代わって 使われている物質

については ノーチェックです。欧米では PFASをグループとして規制すべきという議論もある中で、

どう考えますか。

 

  化学物質の安全性ついては、市が 判断するには限界があり、権限も及ばないころがあるので、

そこには踏み込みません。そこは 国でやっていただきたいですね。

 

 

   スローニュースの報道を受けて、市民も動いた。

工場の元従業員、住民、医師、弁護士らは 18日、市民団体「 清水PFAS問題を考える連絡会 」を

立ち上げ、住民の血液検査などを 会社に求めていくという。