Google、 Apple Store、 Facebook、 Amazon

       ―――― 米四大IT企業

 

常態化する国際収支の「デジタル赤字」

          巨大ITへのドル払い増で円安圧力に

           2024.5.11           - NHKニュース 

 財務省が10日発表した令和5年度の国際収支速報で、日本の「デジタル赤字」が常態化している

構図が浮き彫りとなった。米グーグル や 米アマゾン・コムなど 海外の巨大ITのサービスへの

依存度が高く、これらの企業へのドル建ての支払いが膨らんでいるためだ。 日米金利差の開きと並び、

歴史的な円安をもたらす 大きな要因となっている。

 

   国際収支のうち サービス収支は 2兆4504億円の赤字となり、前年度から赤字幅が半分以下に

縮小した。旺盛な訪日需要を背景に、旅行収支が 4兆2295兆円と過去最大の黒字を記録したこと

が貢献した。

   この訪日客からの稼ぎを打ち消したのが、デジタル赤字だ。 デジタル関連の取引は サービス収支

の複数の項目に含まれるが、このうち「その他業務サービス」は 4兆6828億円「通信・

コンピュータ・情報サービス」は 1兆7528億円の赤字を それぞれ計上し、その多くを 米国との

取引が占めた。

 

    業務効率化や省エネへの対応のため、多くの企業が、データの管理や処理を外部コンピューターに

委ねるクラウドサービスを導入している。個人も 娯楽で動画配信サービスを楽しんだり、買い物で

スマートフォンの決済システムを利用する場面が増えている。

 

   10日夕の円相場は 1ドル=155円台で推移。円安の要因として、日米の金融政策の違いから

くる金利差に関する議論が多いが、最近は デジタル赤字の拡大も注目されている。

    三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「 サービス収支

の中で、デジタル赤字の円売り要因 と 訪日客の増加による円買い要因が引っ張り合っている 」と

指摘する。特に デジタル赤字は 解消する見込みがなく、円相場を下押しし続ける可能性がある。

 

    経済産業省はコンピューターサービスの国際収支について、「 市場が指数関数的に拡大する中、

国内企業の供給が伸びなければ 赤字幅も急拡大する 」として、12年度に8兆円の赤字になると予測。

円相場の先行きを占う観点からも、デジタル赤字の動向から目を離せない状況が続きそうだ。

 

 

 

デジタル赤字5・5兆円、14年比で2・6倍…米巨大ITへの依存増

                2024/02/19  読売新聞 

 クラウドサービスなどで 米巨大IT企業の市場支配力が増す中、デジタル関連サービスの海外

との取引状況を示す「デジタル収支」の赤字が拡大している。

   三菱総合研究所の集計によると、2023年の赤字額は約5・5兆円に達し、14年比で2・6倍に

膨らんだ。日本のデジタル分野の劣勢が招く 国富の流出が深刻になっている。

 

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  デジタル収支は、サービスに関連して 海外から日本が受け取ったお金と、日本が海外に支払った分

の差額である「サービス収支」のうち、コンピューターサービス や 著作権等使用料といったデジタル関連の

項目を抜き出した数字だ。

 23年には 日本から海外へ9・2兆円が支払われる一方、日本が海外から受け取ったお金は3・7兆円

だった。赤字額は 22年の約4・8兆円から 0・7兆円余り増えた。

 14年に 約2・1兆円だったデジタル赤字は拡大傾向が続く。最大の要因は、デジタルサービスで

米巨大ITへの依存度が高まっていることだ。

 

 デジタル収支には クラウド や インターネット広告、スマートフォンのアプリストアといった

米巨大ITが強い支配力をもつ分野が含まれるとみられる。クラウドは アマゾンやマイクロソフト、

ネット広告は グーグルやメタ、アプリストアでは アップルとグーグルが 日本で大きなシェア

(市場占有率)を占める。

   コンピューターサービスなど 一部の項目では 特に米国への支払いが多い。三菱総研の推計による

と、23年は 約3兆円の海外への支払いのうち、米国への支払いが 1兆円を超えるという。

 

   日本が 海外のデジタルサービスを 一方的に使う状況が続けば、デジタル分野で 日本企業に回る

お金が減り、さらに 競争力が低下するという悪循環に陥りかねない。政府関係者は「 このままでは

IT基盤をもつ米企業の下で、日本企業の『小作人化』が進んでしまう 」と危機感を募らせる。

 三菱総研の綿谷謙吾研究員は「 チャットGPTなどの生成AIも 米企業のサービスが強く、

日本企業が AIの利用や業務のデジタル化を進めれば進めるほど 海外への支払いは増える。今後も

デジタル赤字は拡大し続けるだろう 」と予測する。