核のゴミ「文献調査」から「概要調査」へ進むかどうか住民投票へ…北海道寿都町

                2024/05/11  読売新聞

 佐賀県玄海町に先行して文献調査が進む北海道 寿都(スッツ)町の片岡春雄町長は10日、

読売新聞の取材に、第2段階「概要調査」へ進むかどうかの判断として、住民投票を行う意向を

明らかにした。

 寿都町では 2020年11月に文献調査が始まり、今年2月に原子力発電環境整備機構(NUMO)が

「候補地になり得る」とする報告書案を公表した。片岡町長は これまで、文献調査が行われている

同町と 神恵内(カモエナイ)村のほかに、調査を受け入れる「第3の自治体」が現れるまで 概要調査へ

進む判断はしないと明言してきた。

    玄海町長の調査受け入れ表明を受け、片岡町長は「 決断に敬意と感謝を申し上げたい 」と述べ、

北海道以外でも議論が さらに広がることに期待を示した。今後は 寿都町内での議論の深まりを

見ながら、6月以降に住民向けの勉強会や有識者による討論会を開催した上で、住民投票を実施

する考えだ。

 

                            ◇   ◇       ◇   ◇

                 

 

核のゴミ「文献調査」熟慮の受諾

…佐賀県玄海町長「議論の呼び水に」「お金目的ではない」

                                  2024/05/10    読売新聞

    原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場選定に向けた「文献調査」

を巡り、10日に 佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長が明らかにした結論は、町議会の意向に沿った

「受諾」だった。これまでは 受け入れに否定的な見解を繰り返してきた脇山町長。「 町議会で請願が

採択されたことは大変重い 」。熟慮した上の決断だったことをにじませた。

 

全員協議会は 非公開

 「 文献調査が処分地に直結するものではない。住民の皆さんは ご心配があると思うが、なし崩し的

に最終処分場になることはない 」。午前11時半過ぎ、町議会全員協議会後 記者会見に臨んだ脇山町長

は、受け入れに至った理由を淡々と説明する中で こう強調した。

 

  原発立地自治体としては 初めての表明。これまでの町の取り組みを振り返り、「 全国で議論が

高まり、日本のどこかに最終処分場の適地が見つかる呼び水となれば 」と述べた。町の財政状況も

説明した上で「 お金目的で受け入れるわけではない 」とも語った。

 

 脇山町長の判断が注目された全員協議会は、報道陣や町民らの傍聴を禁止する異例の対応が

取られた。通常は 議長判断で非公開にしているが、今回は 町民の関心事であるため、前日の早い段階

では公開の準備が進められていた。しかし、その後、「 混乱しないようにしたい 」などの理由で

非公開に転じたという。

   このため、議会棟入り口の自動ドアが閉鎖され、議会棟につながる役場内の階段前には 立ち入りを

制限するポールとバーが設置された。近くには 職員が配置され、事情を知らずに訪れた人への対応に

追われた。

   全員協議会は 午前10時に始まり、10分ほどで終了。だが、脇山町長の記者会見が始まる午前11時半

まで内容は明かされなかった。

 

議会は推進の意志

 玄海町議会は4月、賛成6、反対3で文献調査の受け入れを求める請願を採択し、強い推進の意志

を示していた。賛成派の議員の多くは「 処分場選定の議論が進まないことに一石を投じたい 」と口を

そろえる。

 国は 2002年から、最終処分場の候補先を募ってきた。ただ、応募はわずかで、現在、文献調査に

入っているのは 北海道の2自治体のみだ。

 請願の採択に賛成したある議員は、国が示すマップで 町域の多くが「処分場に好ましくない特性が

あると推定される地域」に分類されていることや、文献調査以降の調査には 知事の同意が必要になる

など、最終的な処分場建設には 高いハードルがあることは十分に理解しているという。

 それでも、文献調査に手を挙げることが重要と考え、採択したことで「 役割は果たした 」と強調

する。地域の分類についても「 ほかの同様の地域が手を挙げやすくなる 」と前向きに捉える。

また、「 国から交付される20億円は返上したらいい 」とも話し、今回の採択が交付金が目当てでは

ないことを強調している。

 

反対派は抗議活動

 文献調査の受け入れに反対する住民らは 抗議の声を上げた。議会棟前には、文献調査受け入れに

反対する団体のメンバーら10人ほどが集まり、「 社会的合意形成未熟 」などと書かれたのぼり旗を

掲げた。正面玄関は締め切られ、議員らは 裏側の出入り口から入った。

 佐賀市在住で、「 玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会 」代表の石丸初美さん

(72)は「 民意を無視したやり方に憤りを感じる。(文献調査の次の)概要調査には進まないよう

声を上げ続ける 」と語った。

 

町の大半「好ましくない特性」

 最終処分場にふさわしい特性を有しているのかどうかを示すため、国が 2017年に公表した

「科学的特性マップ」では、好ましくないのか、好ましいのかについて、全国を四つの色で塗り分け

ている。

 

 資源エネルギー庁によると、玄海町の大半は「 好ましくない特性があると推定される 」地域で、

石炭や石油などの鉱物資源の埋蔵地で 将来の掘削の可能性がある地域(シルバー)に分類されている。

   請願を審議した玄海町議会原子力対策特別委員会でも、このマップをどう捉えるべきかが議論に

なった。 同庁は、マップは 全国規模のデータに基づいた分類のため、「 特性を確定的に示すもの

ではなく、地域の詳細な様子は明らかになっていない 」と説明。鉱物資源の埋蔵状況について、

詳細な調査内容をまとめた地域の資料などを調べる文献調査の実施は可能だとしている。

 

 

佐賀:核ゴミ 文献調査拒否を要請 7県の議員有志 玄海町長に

                                            2024/05/10               読売新聞

    原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場選定を巡り、選定の

第1段階「文献調査」の実施を 国から求められている玄海町の脇山伸太郎町長に対し、九州7県の

議員有志が 9日、調査を受け入れないよう要請した。

  「『核のゴミ』最終処分場問題を考える・九州議員ネットワーク」の名義で、武藤明美県議(共産)

や唐津、伊万里、鳥栖の3市議が この日、町役場を訪れ、代理の職員に要請書を手渡した。

党派を超えた125人の議員が名を連ねているという。

 要請書では、「 最終処分場や文献調査のことを 町民に周知が十分行われていない 」「 町民の分断

や風評被害の懸念がある 」といった点を指摘。「 町議会での真剣な議論は 議員として尊重するべき

だが、この問題は玄海町だけでなく、近隣市町村、九州、全国にかかわる課題だ 」としている。

 

    申し入れた伊藤一之・唐津市議は「 私たちが思う前向きな回答を脇山町長が出していただける

よう、お願いしたい 」と求めた。対応した職員は「 九州の議員の一つの声として、要請書をすぐに

届ける 」と述べた。

 

 

佐賀:核ゴミ文献調査 玄海町長「全国で議論を」 国の早期申し入れ 驚き

                                                   2024/05/02       読売新聞

    原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場選定の第1段階「文献調査」

の実施を、国が 玄海町に申し入れた1日脇山伸太郎町長は、同町が 九州電力玄海原発が立地する

自治体で、国のエネルギー政策に貢献している点を重ねて強調し、「 最終処分場の問題は 全国で

議論して決めるべきだ 」と語った。

 

    斎藤経済産業相名の文書での申し入れは 町役場4階で行われ、資源エネルギー庁の松山泰浩・

首席最終処分政策統括調整官が文面を読み上げた。記者会見で 松山調整官は、町議会で文献調査を

求める請願が採択されたことに「 感謝申し上げ、敬意を表したい 」と述べ、「 さらに検討を深めて

いただけるよう、文献調査実施への理解、協力を伝えにきた 」と説明した。

 請願の中での「 原発立地自治体の責務 」という文言については「 特定の自治体、地域ということ

ではなく、国全体で取り上げていく課題 」とする一方、「 立地自治体の思いとして 取り組んで

いただいている」と、感謝の気持ちを表明した。

 

 脇山町長は、請願採択から間を置かずに調査実施の要請が来たことに、「 こんなに すぐ来られる

とは思っていなかった 」と驚いた口調で話した。松山調整官から斎藤経産相との面会を勧められた

ことについて「(国の原子力政策を巡って)立地自治体が ちょっと苦しい思いをしている部分がある

と自らの意見を述べる好機と受け止めていた。

 文献調査に対する決断については「 まだ固まっていない 」と重ねて強調。「 町民の代表である議会

の請願採択は重いものがある 」と繰り返した。

 

 経産省の関係者は その後、県庁に赴き、申し入れ内容を報告。対応した井手宣拓・県産業労働部長

は「新たな負担については受ける考えがないことを、山口知事も 一貫して申し上げている 」と述べ、

最終処分場を巡る知事の意向を伝えた。

 

 

佐賀:核ゴミ請願採択 「賛成 ダブルスコア」 玄海町長「考える時間必要」

                 2024/04/27  読売新聞

 原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場を巡り、活発な議論が

交わされてきた 玄海町議会(定数10)。処分場選定への「文献調査」を求める請願3件を

原子力対策特別委員会が 賛成多数で採択したことを受けて、26日開かれた本会議での採決も、

特別委と同じ賛成6、反対3の結果だった。「ダブルスコア」――。 賛否の差の重みに、

脇山伸太郎町長は こんな感想を漏らした。

 

   本会議では、特別委の岩下孝嗣委員長が17、25日に開いた審査について説明。「 文献調査を

受け入れれば 処分場まで直結する、との誤解について、資源エネルギー庁から『 先に進まないことは

ありうる 』との説明を受けた 」といった点を報告した。

 反対討論には1人、賛成討論には 2人が登壇した。反対の前川和民議員は、中学生以上が参加する

住民投票を行うなど 住民の意見を十分聞いたうえでの採決を求め、「 将来、子どもたちを処分施設の

上で暮らさせないようにしてほしい 」と訴えた。

 賛成の立場で松本栄一議員は「 (処分場選定の)第1段階の文献調査を議論することが、なぜ

処分場建設になるのか 」と まず文献調査での議論の進展を呼びかけた。同様に小山善照議員は、

処分場問題に関心をもった他の自治体議員が 25日に訪ねてきた、と明かし、「 これこそが 第一歩

の小さな成功例。この広がりを期待している 」と、今回の請願審査が 処分場問題の議論の全国への

拡大につながる取り組みである点を強調した。

 本会議での請願採択後、脇山町長は記者団の質問に応じた。6対3での採択について「 賛成派が

ダブルスコア的なところがあり、それを少し感じている 」と評した。25日の特別委終了後は、

決断の時期を「 大型連休明け 」としていたが、「 明けてすぐ、というわけではなく、考える時間が

必要 」と修正し、「 いろいろ私の中で考えることがある 」と複雑な胸中を明かした。