2023/10/18   日テレ      (6分)

 

 

 

日本は「 お金が尽きて死ぬ時代 」に突入する

…高齢者に これから襲い掛かる「3人に1人が貧困」という過酷な現実

                        2024.05.03         (冨島 佑允) | 現代ビジネス 

  『2050年には 全5261万世帯の44.3%に当たる 2330万世帯が 1人暮らしとなり、

  うち 65歳以上の高齢者が半数近くを占める 』

    先月に 厚労省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した この数字は 一時Xでトレンドに

   ランクインするなど、衝撃の波紋が広がっている。

     “ 人生100年時代 ” と言われる一方で、歯止めの効かない少子高齢化が進む日本。

    先行きの見えない状況下で 老後を迎えるにあたり、私たちは どう備え対処していけばよいのか。

      お金、健康、法律など各専門分野のスペシャリスト8人が 老後を解説する『死に方のダンドリ』

    では そんな備えと対処について 詳細に明かした一冊だ。本稿で その一部を抜粋・編集。

   「老後困らないためのヒント」をお伝えする。

 

年間42万円のお金が不足する

  「 20万時間 」――。

    これは、あなたが 定年退職してから過ごすことになる、老後の人生の長さです。

この永遠のようにも思える時間を、多くの日本人は お金の不安を抱きながら生きていくことに

なりそうだ、と聞いたら、あなたは 驚くでしょうか。

   厚生労働省が公表した第23回生命表(2020年版)によると、65歳時点の平均余命(平均して

その後何年生きられるか)は、男性は 約20年、女性は 約25年です。

   仮に、あなたが 65歳で退職して 25年生きるとしましょう。25年間は 時間に換算すると
21万9000時間です。つまり、およそ 20万時間が あなたの”老後”ということになります。

                       25年×365日×24時間=219,000時間

 この膨大な時間を、お金の心配なく楽しく暮らせれば 万事OK、何の問題もないでしょう。

しかし、現実は 少し違うようです。

 

    総務省の家計調査報告書を 過去10年にわたって追っていくと、高齢世帯の赤字額の平均値は、

夫婦世帯で 月5万円単身世帯で 月3.5万円です( 実収入から支出を引いた不足分の2010~19年

における平均値。2020年以降は コロナの影響により支出が急速に落ち込んだため、平均値の計算

からは除外)。

つまり、夫婦世帯なら 5万円×12カ月で 年間60万円単身世帯なら 3.5万円×12カ月で年間42万円

ものお金が不足することになります。

老後生活を 仮に25年間とすると、年金をもらっていても 夫婦で 1500万円(60万円×25年)、

単身でも 1050万円(42万円×25年)が不足することになります。

 

    この数字が何を意味するか、もうおわかりでしょう。

退職した時点で これだけのお金がなければ、寿命が尽きる前に 生活資金のほうが底をついてしまう

のです。

   これは、現在の高齢世帯の赤字額から推計した数字です。そのため、将来の高齢世帯は もっと

苦しくなる可能性が高い と思われます。なぜなら、私たちが 将来もらえる年金は 今より少ない

可能性が極めて高いからです。

 

4人に1人が90歳まで生きる時代

  厚労省の「 2019(令和元)年財政検証結果レポート 」によると、現役時代の所得の何割を

年金でカバーできるかを表した年金の所得代替率は、2019年時点では 61.7%でした。2052年

(令和34年)には、それが 36(現状の61.7%の6割弱)~ 52%(同8割程度)まで減少すると

推定されています。

   ※ 所得代替率:公的年金を標準的に受給し始める65歳時点のモデル年金額(額面)が、

         その時点の 男性現役世代の平均手取り収入(賞与込)と比較して、

         どの位の割合かを示すもの

つまり、将来の年金は、今の高齢者が受け取っている水準の6~8割に減ってしまうということです。

   しかも、日本人の寿命は 今もなお延び続けています。内閣府によると、1950年の日本人女性の

平均寿命は 62歳、男性は 58歳でした。1990年には 82歳、76歳になり、2021年には 88歳、82歳

になりました。内閣府の予測では、2040年には 90歳、84歳になります(図1)。

 

【図1】平均寿命の延び

 

   この30年間で 日本人の平均寿命は 6年も延び、65歳を迎えた女性の2人に1人、男性の場合は

4人に1人が 90歳まで生きることが予想されています。

実際のところ、高齢世帯は 少ない収入でやりくりしている人が 過半を占めています。

内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、高齢者世帯の平均所得金額は 332.9万円で、

高齢者世帯と母子世帯を除いた その他の世帯( 689.5万円 )の約半分です。

   内閣府の「2019年度 全国家計構造調査」によれば、65歳以上の単身者の3割は 貧困状態に

あります。つまり、一人暮らしの高齢者が 3人集まると、そのうち 1人は貧困に苦しんでいる

という状況になります。

    ▼相対的貧困: 国や地域の中での 経済格差を測る代表的な指標のひとつ。

                 等価可処分所得 ⊛が、集団の中央値の半分に満たない場合を相対的貧困という。

        ⊛  等価可処分所得 = [可処分所得] ÷ [世帯人数の平方根])

           可処分所得:給料などの所得から税金や社会保険料など必ず納めなくては

                ならないお金(非消費支出)を差し引いた金額

  「 こんなに苦しいんだから、国が なんとかしてくれるに違いない! 」と思うかもしれません。

けれども、国は すでに高齢者を支え切れなくなっています。

 

さらに<【後編】医療はぜいたく品、国も支え切れない…これから日本を襲う「お金が尽きて死ぬ時代」に備える“ダンドリ”の正しい知識>でも、日本の現在から眺めた未来の状況を明かします。