🔷「メディアも含めて勉強不足」「根本的に間違っている」

丸山達也島根県知事が激しく反論した “消滅可能性自治体” の問題点

                2024.5.3    文春オンライン 

 

    財界人や学者らの有志で作る「人口戦略会議」(議長、三村明夫・日本製鉄名誉会長)が、

全国の744市町村を「消滅可能性自治体」と位置づけて話題になっている。

 国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が公表した「日本の地域別将来推計人口」をもとに、

2020年から2050年までの30年間で、出産適齢期の20~30代の女性が50%以上減少する自治体を

「消滅可能性自治体」と分類したのだ。

    同会議の副議長、増田寛也・日本郵政社長(元岩手県知事、元総務大臣)は 10年前の2014年、

座長を務めた有志グループ「日本創成会議」でも同様の分類を行い、896市区町村を「消滅可能性

都市」と発表した。

 

   こうした動きを現場の知事はどう見たのか。人口戦略会議の発表(2024年4月24日)後、

その週のうちに 定例記者会見があった都道府県から知事発言の内容を拾った。

 

   最も激しい反応を示したのは、島根県の丸山達也知事だろう。

     「 メディアの皆さん含めて 学習能力がちょっと足りない

     「 根本的なアプローチの違和感というか問題は、市町村ということで捉えると何個消滅する

      とか ショッキングな話になりますけど、都道府県単位では 東京以外は 全部人口が減るわけ

      でしょう。つまり、国の問題だということです。日本全体の問題を 自治体の問題であるかの

      ようにすり替えて言われているのは 根本的に間違っている 」

などと、発表内容そのものを バッサリ斬り捨てた。

 

 そして、メディアの報道の仕方についても

     「 消滅可能性自治体が こんなにあったら、国が滅びる ということとして捉えなきゃいけない

       のに、相変わらず 消滅可能性自治体とかいって、首長の話を聞くなんて 愚かなことを

       繰りかえしているところが、すいません、メディアの皆さんも含めて 学習能力がちょっと

       十分じゃないんじゃないかと思います 」

と苦言を呈した。

 熱い主張で知られる丸山節は 止まらない。

    「 出生率が高いところもあるけど、総じて どこも下がっていて、我が国の傾向なわけですよ。

      そうすると 国の政策とか、日本社会全体の問題を解決しないといけないのに、自治体ごとに

      取り組まないといけない課題であるかのように、誤った世論誘導をしているところが問題 」

    「 大きな会社の社長さんとか 会長さんとかが(人口戦略会議に)お集まりであれば、日頃

      パーティーで会ってる時に 茶飲み話みたいなことをするのではなくて、政府や国政に携わる方々

      に対して、きちんと 問題提起をされた方がいいんじゃないかと、私は思います 」

 

   今回、消滅可能性自治体とされた島根県内の自治体は 4。10年前の発表からだと 12も減った。

そのことは 人口戦略会議が発表したレポートでも特筆された。

 それでも 4自治体が「 抜け出せない 」ことについて 記者が質問しようとすると、さえぎって

熱弁が始まる。

    「 だから 私が言っているように、市町村単位に置き換えること自体がナンセンスだと思いますよ。

     市町村の努力が足りないからと押しつけていますけど、じゃあ 東京都が すごい頑張っているから

     人口増えているの? そんなことないでしょう。合計特殊出生率(1人の女性がおおむね生涯で

     出産する子の数)は都道府県で最低だよ(1.04)。よそから 人を吸引できる恵まれたポジション

     に社会構造上あるから、そうなっている 」

 

   丸山知事の指摘は止まらない。

    「 自治体に転嫁していく レベルの問題ではない 」

    「 分かりやすいのは 東京一極集中だけど、私からすると 三大都市圏とそれ以外の地域との

      格差構造を是正しなければ、こんなの(人口減少)どんどん進むに決まっていますよ。

      一生懸命に 出生率を上げて 子育て環境を整備したとしても、大学・専門学校への進学、就職

      という段階で、子供さん達が 地方に残れない構造です。

      それは 市町村単位でも、県単位の問題でもなくて、どちらかというと三大都市圏とか、

      東京に人が集中していくという構造を放置している 日本全体の政策、これは経済界も含めて

      ですよ、日本社会のありようが 引き起こしている現象だと捉えるべきでしょう。

        消滅可能性自治体が どうだこうだというふうに 自治体に転嫁していく レベルの問題じゃない

      ということであります 」

 

  都市部への人口集中は、企業の集中が 原因の一つだと見られており、矛先は 経済人へも向かう。

    「 なぜ 東京に でかい本社を構えないといけないのか。アメリカのように(分散立地)できない

      のか。それは分かりませんよ。銀座で酒を飲むのが楽しみだから、銀座から離れたくないとか。

    (大阪の)キタの方がいいからとか。ススキノじゃだめだからとか。博多じゃだめだとか。

      そんなことなのか どうか分かりませんけども、少なくとも、大きな経済主体が最適だと思って

      いる選択の積み重ねが、日本社会としては 最悪の事態を招いている。

       なぜならば、国の成り立ちは 領土と主権と国民の三つ。そのうちの国民がいなくなってしまう

      かもしれないという意味での、日本という社会のサスティナビリティ、持続可能性が問われて

      いるのが 人口減少問題の本質です。日本という国がなくなってしまうかもしれませんよという

      話なわけでしょう。

        その問題に対して、市町村に ○×をつけて物事を見るというのは、正しい見方じゃないと

      申し上げている。市町村長だけじゃ 何ともしようがない話で、島根県知事でも何ともしようが

      ない。東京都知事だけが頑張っても、東京都の出生率は上がらないでしょう。もうちょっと

      大仕切りで直さなきゃいけない と 私は思います 」

 

島根県の出生率は 47都道府県の中で4番目。その理由は…

    島根県の合計特殊出生率は 2022年の最新データで 1.57。 47都道府県では高い方から4番目

 だった。 なぜなのか。丸山知事は「 私見 」と断ったうえで、三世代の同居や近居が多いことが

プラスに働いているとの見方を披露した。

 

  だが、安心してはいられない。

   「 子育てがしやすい、近親者の助けを得やすい、というのが 大都市との違いだと思われて

    きましたけど、実際には 高齢者雇用が進んでいますので、おじいちゃん、おばあちゃんが

    年金受給世代になったからといって、家にいてくれるわけじゃない。保育や学童保育を充実して

    いかないと、アドバンテージ(有利であること)が どんどん薄まるのは明らかなので、市町村と

    一緒に 公的サービスの充実に取り組んできました 」と語る。

 

 それでも 人口が減っている現状に変わりはない。

   「  社会が 維持できるか分かりません。バスが 減便になる。学校が どんどん統合されていく。

     部活動の種類が制限されていく。いろんな弊害がでているので、消滅可能性自治体に指摘された

     ところと、されていないところを分けて考えても、本質的な議論ではありません。

    (人口戦略会議の)経済人の皆さんも、10年前の試算の時と あまり前頭葉の思考構造が変わって

     おらず、相変わらずですな という感じなので、そこを変えなきゃいけない 」

 

などと、独自の論理で危機を訴えた。

 

 

🔷全国744市町村は30年以内に消滅してしまうのか? 

             全国の知事たちが冷静に反論した“納得の理由”

                           「消滅可能性自治体というのは一種の煽りです」 

                                   

      20~30代の女性が 30年間で半減すると見込まれる 744市町村を「人口戦略会議」(議長、

   三村明夫・日本製鉄名誉会長)が「消滅可能性自治体」と位置づけた。だが、センセーショナルな

   報道とは裏腹に、多くの知事の反応は 冷静そのものだ。

   「消滅可能性自治体は 一種のアジテーション(煽動)」と発言する知事もいた。

 

各自治体はどのような対策をとっているのだろうか?

    「 (人口戦略会議の)レポートが出なくても承知はしている 」(山梨県、長崎幸太郎知事)

    「 2年前に 人口減少の予測値を県内の市町ごとに出した。いろんな現実を見て、県と市町が

     一緒になって、様々な対策を打っている。 何もしていないと、えっという驚きをもって

     受け止めることになると思うが、今回は『 そういうことでしょう 』という数字 」

                                                                               (愛媛県、中村時広知事)

  こうした淡々とした反応だけでない。愛媛県のように 既に対策を取っていると語る知事が多かった。

   「 職員と話をしたのですけど、(人口戦略会議で出た)議論は 三重県では 2年前から行っている

     ので、これは 初めてだ というのは あんまりなかった。ただ、いろいろ参考になることはあって、

     加速しないといけないことはあるかなと思った 」(三重県、一見勝之知事)

   「 人口問題は それぞれの県で 最重要課題。どこの地方も 一丁目一番地の課題としてやって

     きている 」(山口県、村岡嗣政知事)

 

 もちろん、人口戦略会議のレポートを受けて 何らかの対処をしようと考えている県もある。

 栃木県の福田富一知事は

    「 消滅可能性自治体とされた 8市町と連携し、『消滅克服プロジェクト』みたいなものができるか

      どうか。その会議を持つ必要があるかどうかから 議論していきたい 」

と述べた。

 だが、多くの知事は 民間団体が試算したデータの一つとして見ているようだ。

 

データ分析上の問題点を指摘した知事も

 驚いたのは、人口戦略会議のメンバーに入っている長野県の阿部守一知事が データ分析の問題点

について言及したことだ。

   「 あの分け方で 一喜一憂する必要は全くないのではないかと思っています。推計には 市町村の

    規模とか、広域的に どういう位置づけの地域か というような観点が全く入っていません。

    我々が 人口戦略を考える時には 一つの参考データとしては使えると思いますけども、単に

    あの切り口だけで、これからの将来像を論じるつもりはありません。むしろ 人口減少下でも

    明るい未来をどう描くかということに、しっかり 力を注いでいきたいと考えております 」

と明言したのだった。

   「 消滅可能性自治体というショッキングなタイトルがつけられているので、各メディアが

    そういう形で報道しているわけでありますけども、私としては 一つの参考とすべきデータと

    受け止めています 」とまで語った。

 

 分析上の問題点については、佐賀県の山口祥義知事も指摘した。

 人口戦略会議のデータは 市町村の単位になっている。しかし、エリアが広い自治体では 地域ごとに

課題が違う。特に 平成大合併で面積が拡大した市町村は そうだ。

このため、

    「 合併したりしていると、問題は 地域ごとに起きていることもあるので、見落としてしまいます。

     小さな村も 福岡市みたいな大きなところも、それぞれ 一団体として考えるので、地域の実情を

     つぶさに見ていかないと ミスリードが起きてしまう 」と話した。

 

 一方、人口戦略会議の分類が一人歩きする危うさを具体例を挙げて説明した知事もいた。

 宮崎県の河野俊嗣知事は

    「 今回の分析は 20~30代の女性が 30年間で50%以上減少するかどうかに基準を置いています。

      それを ちょっと上回ったから『よかった』ということにはなりません。例えば、五ヶ瀬町は

      消滅可能性自治体から脱却し、日之影町は残りました 」

と話す。

 

「消滅可能性自治体というのは 一種のアジテーションです」

 今回のような 出産適齢期の女性減少に着目した分析は、人口戦略会議の副議長を務める増田寛也

・日本郵政社長が 10年前の2014年、座長を務めた「日本創成会議」で打ち出したのが最初だ。

   この時は 全国の市区町村の半数近くに当たる 896自治体が消滅可能性都市とされた。今回は 

744自治体が消滅可能性自治体とされ、各都道府県ごとの増減が関心事になっている。こうした話題

そのものに 罠があるというのだ。

 

 河野知事が続ける。

   「 五ヶ瀬町は 前回、減少率が 50数%だったのですが、今回は 50%を微妙に切ったので、

    消滅可能性自治体から外れました。決して それだけでよかったということにはなりません。

    一方、日之影町は 前回の70%台が 今回は50%台。減少率は 18ポイントです。消滅可能性自治体

    のカテゴリーには入っていますが、これまで 10年間の取り組みに 一定の手応えを感じることが

    できます。

     また、西都市と川南町は 50%近くまで減少しているのに、消滅可能性自治体とはされて

    いません。入らなかったからよかった というふうに受け止めるべきではなく、それぞれが 個別に

    検証を行うべきだと考えています 」

と、データの見方に留意するよう呼び掛けた。

 

   既に 全国の知事が 危機感を共有している人口減少。

青森県の宮下宗一郎知事は

    「 人口減少が進んでいくことは、確かな未来として その通りです。消滅可能性自治体というのは

     一種のアジテーションで、煽動的に そのようなことを言って、何らかの行動を促したいという

     ことだけだ というふうに思っています 」

と語った。

   出生率の向上対策は 国の役割ではないか という指摘が 知事の間で噴出していることについても、

ドライな反応だった。

    「 (国は)求めても やってくれないからね、あんまり。今は もう、自分達でどうしなきゃ

     いけないか考えることの方が大事かなと、知事になってから すごく思うようになりました

    (2023年6月就任)。

 今の青森県にいる若い人達が、どういうふうなことを考えて出て行ってしまうのか。出て行った人

が戻って来ないのは 何で なのか。突き詰めて考えていった方が、自分として 前向きな仕事をできる

ような気がします。

 

   国全体の課題が 地方に押しつけられているということは 確かに その通りなんですけど、自分達が

     できることを考え始めないとだめな時代なんですよ。

     これは 県庁だけじゃないです。皆が どう取り組むかの方が たぶん大事なんですよね。そこを

     忘れてしまうといけないと思うので、国に 何だかんだと言うことを考えるより、自分は 青森県知事

     としてできることを考えていった方がいいかなと思います 」

 

解決には「 非常識的な施策を国が打つしかない 」

    「 アジテーション、アジテーショナルといった方がいいか、煽動的な言葉に負けずにやるべき

     ことをしっかりやって、県内で 若者が 自由に未来を描き実現できる社会を実現したいと思って

     います 」

 

 現状をどうするか。悩んだ末に紡ぎ出された言葉なのだろう。

 しかし、具体的に行動することがどれくらい難しいか。

茨城県の大井川和彦知事は

    「 私は 就任以来、人口減少のことしか頭にないぐらい取り組んできました。社会的移動は

      若干好転しても、自然減の波を変える状況には 全く至っていません。こういう状況を反転させる

      には、やっぱり 非常識的な施策を 国が打つしかないのかなと思います 」

 

と述べた。

「非常識な施策」。大井川知事は 会見で 2度もこの言葉を使った。記者からは当然、

「 どんな施策を思い描いているか 」という質問が出る。

 ところが、大井川知事は

    「 非常に難しい問いで、私も これだ、これをやればということは 申し上げる能力はない

     というふうに思っております 」

 

と吐露した。

 

これらの論点とは 一線を画し、徒花のようにしてネット上で話題になった知事がいた。

 大阪府の吉村洋文知事である。

    「 ゼロ歳からの選挙権 」導入を訴えた吉村知事。その真意は…

 政治を次世代に向かせる方策として、「 ゼロ歳からの選挙権 」導入を訴えた。

「 ゼロ歳から選挙権を持って、成人になるまで 親が代理行使をするのです。選挙で影響力があるのは

若い世代だとなってくると、政治家は そちらの方に向いてくるのではないかと思っています。

ドメイン投票といって、研究もなされています。なかなか採用はされていないですが、日本には必要

じゃないかと思います 」

 吉村知事は 3人の子がいるので、4票になる。

 保護者のうち 誰が権限を行使するのか。保護者と子の意見は 一致するのか。子の投票の秘密は

守れるのか。そもそも ゼロ歳児に 政治的な判断はできるのか。多くの疑問が出て、話題に花が咲いた。
 

 


🔷【消滅可能性自治体】

一極集中が進む東京ですら 将来的には消滅危機に 

 もはや「既存自治体の生き残り策」を論じても意味がない 

                           河合雅司      2024.05.02      マネーポストWEB 

 民間組織「人口戦略会議」が 4月24日に発表した〈令和6年・地方自治体「持続可能性」分析

レポート〉が波紋を広げている。「消滅可能性自治体」と名指しされた市町村関係者のあいだには

落胆とも諦めともつかない雰囲気が広がる一方、「 これまでの地域の努力や取り組みに水を差す 」

といった批判の声も上がっている。果たして、打開策はあるのか? ベストセラー『未来の年表』

シリーズの著者・河合雅司氏が解説する。【前後編の後編。前編を読む

 * * *
 そもそも、「人口戦略会議」が試みたような、20~39歳の女性人口の増減見通しだけで

「消滅可能性」に言及する手法は 問題がある。

 例えば、この年齢の女性数が 100人に満たないような小規模自治体は 年代にかかわらず 社会移動

が少なく、人口戦略会議の分類では「消滅可能性自治体」に該当しない。また、20~39歳の女性人口

の変化こそ小さくとも、住民の大半が 高齢者という自治体も対象とはならない。

 だが、実際には こうした小規模自治体は マーケットの縮小スピードが速く、生活必需品を扱う

小売店の撤退が始まっている。医療機関や学校といったサービスの維持も困難である。水道料金など

の値上がりも進み、生活コストは 嵩んで行く。 一方、住民の高齢化が進行するので 地方税収は減少

し、行政サービスは届きづらくなる。

 要するに、20~39歳の女性人口の減るスピードにかかわらず、年々 住みづらくなっている

ということだ。やがて 限界点を超えることになると、人々は 住み続けられなくなる。自治体が

「消滅の危機」に陥るかどうかは 20~39歳の女性人口の見通しだけでは決まらない。

  「絶対的な評価基準」とはなっていない 今回の分析結果に振り回される必要はないが、

人口戦略会議のレポートが 全く無意味だと言うつもりはない。個別の自治体の予測については説得力

を欠くところがあるはいえ、大きな方向性としては 間違ってはいないからだ。

 

「地方創生」政策で むしろ東京一極集中が進んだ

 実際のところ 自治体の未来が どうなるのかと言えば、人口戦略会議の指摘より深刻だ。

2050年までで区切らず もっと先まで見据えるならば、東京23区を含めたすべてが「消滅可能性

自治体」となる。

 すなわち、「 消滅可能性自治体に該当しなかった 」とか、「 脱却した 」とかというのは

“一時的な話”ということである。むしろ、現状に安堵して 将来に向けた取り組みが疎かになる弊害

のほうが大きいかもしれない。

 

 すべてが「消滅可能性自治体」である理由は、20~39歳の女性人口が 今後 凄まじい勢いで

減り続けていくからだ。総務省によれば、2023年10月1日現在の20~39歳の女性人口は 1273万人

である。これに対して 20年後にこの年齢となる 0~19歳は 958万9000人と 24.7%も少ない。

社人研の推計で 2020年と2050年を比較しても 26.0%減である。これは「 変えることが極めて

難しい未来 」である。

20~39歳女性は20年後に4分の3に(総務省「人口推計」)

20~39歳女性は20年後に4分の3に(総務省「人口推計」)

 

    ここからの四半世紀だけでも 出産期の女性数が4分の3に減る。その先も 減少に歯止めがかかる

予測とはなっていない。必然的に 日本の出生数はかなり遠い将来まで減り続けることになる。

すべての自治体が 現在の姿のまま成り立ち続けるはずがないことは、火を見るより明らかだ。

 地方創生政策の失敗を改めて明らかにしたことも分析レポートの成果だ。

 これまでの政府の地方創生政策といえば、東京一極集中の是正が中心であった。これを踏まえ、多くの自治体は移住促進策に力を入れてきたが、目に見えた結果は出ていない。

 それどころか、奪われる側の「東京」は財政力にものを言わせて手厚すぎるほどの子育て支援策を展開するなど防御に走った。こうしたこともあってか、東京一極集中は、むしろ進んだ。

 

人口減少自治体同士の合併や広域連携では 解決せず

 政策で 状況を変えることの難しさは、人口戦略会議の分析結果からも読み取れる。

 人口戦略会議は 20~39歳の女性人口減少率が 20%未満の市区町村を「自立持続可能性自治体」

としているが、手厚い子育て支援策で メディアに大きく取り上げられてきた自治体が 必ずしもこれに

該当しているわけではない。 政策によって 状況を好転させることは 極めて困難ということである。

 

 先にも触れたが(前編記事参照)、状況が短期的に改善した自治体の最大の要因は、外国人人口の

増大による所が大きいと見られる。だからと言って、外国人を増やし続ければいいということには

ならない。

 人口減少社会で 外国人を増やせば、自治体レベルでは 日本人人口を上回る所が出てくるだろう。

外国人の割合が増えると、生活上のトラブル や 社会の分断が起こりやすくなることは 諸外国が証明

しているところだ。

 

 人口戦略会議のレポート発表後、地方圏の知事などからは、自治体単位ではなく、政府が 先頭に

立って 少子化対策や東京一極集中是正に強力に取り組むよう求める意見が相次いだ。

 いまだ 地方分権 や 道州制を唱える声も無くならないが、人口減少がすでに進行している現時点に

おいては 周回遅れのアイデアだ。人口が激減する自治体同士で合併したり、広域連合を締結したり

しても解決とはならない。

 では、どうすべきか。発想を大胆に変えるしか 打開策は見つからないだろう。現状を維持しよう

と努力すればするほど、結果としては 行き詰まる。時間との勝負だからだ。

 

全国各地に 一定規模以上の人口集積地をいくつ築けるか

 繰り返すが、出産期の女性人口の減少は 変えられず、総人口の激減も避けがたい。

こうした状況を前提として考えるべきは、「 既存自治体の生き残り策 」を見つけ出すことではなく、

自治体の在り方の根本見直し 」である

 

 今後、最重要ポイントとなるのは、住民が暮らしていく上で最低限必要なサービスの担い手を

どう維持するかという視点だ。それには 既存自治体の垣根を取り払い、人口集住を図って効率的な

暮らしを実現していくしかない。

全国各地に一定規模以上の人口集積地をいくつ築くことができるのかが問われているのだ。

「ふるさと」の消滅危機を嘆く前に、日本全体の生き残りをかけて挑むべきことがある。