生成AIで死者を“復活”させるビジネスは 人を救うのか 指摘される懸念とは?

                      山田敏弘       2024年04月27日             ITmedia ビジネスオンライン

 

お世話になります。
アイティメディア株式会社管理本部編集ガバナンス担当の磯貝です。


https://ameblo.jp/kyomutekisonzairon/entry-12849950908.html

当社記事

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2404/27/news029.html
の無断転載が含まれています。該当部分を削除のほどよろしくお願いします。

 

  よって 削除しました。

 

 

 

画像診断など "医療AI"普及も 慶應医学部教授が懸念

     「診断データベース蓄積する外国企業の支配下入り」の恐怖 

             問診を代替できれば 医者スキル格差・地域の医療格差は軽減 

                                       宮田裕章        2024/04/27           PRESIDENT Online

 

医療を助けるAIディープラーニング

 生成AIが、世界を変えています。

医療でも間違いなく 変化を起こしていきますが、最前線で本格的に実装されるのは、しばらく後の

ことになります。医療で使われる技術というのは、患者さんの命にかかわることですので、

安全性の検証が すごく大事。それが 人々の体に どういう影響を与えるのかという検証を踏まえて、

実装されていくんですね。

   今、医療現場で使われているAIというのは、数年前の第3次AIブームの時に世界を席巻した

ディープラーニングと呼ばれる技術です。囲碁の名人を打ち負かした( 2016年3月に囲碁AI

「Alpha GO」がトップ棋士に勝利 )ことで有名になったと思うんですが、このディープラーニング

を使った医療が、今まさに 現場で実装され始めている。そんな段階です。

 

画像診断と相性がよく 既に強力なツールに

   ディープラーニングと相性がいいのは、画像関連の分野。画像診断して腫瘍を見つけるなど、

既に 非常に強力なツールになっています。

  今 一番 有効な使い方は、人と共存させながら チェックをすること。人間2人でダブルチェックを

すると、2人目は手を抜くとは言いませんが、どうしても注意力が落ちてしまいます。AIには

それがありません。AIに まずチェックさせたり、AIにサポートさせながら人間が見たりする

ことで、人間の知覚を拡張していくところに大きな役割があります。

 

 とはいえ 最終的な判断は、やっぱり医師が下します。AIが 人間と置換するかどうかというのは、

少しまだ早い部分があります。雑務的な部分をAIがさっと簡単にしてくれたり、馴れによって

落ちてくる人間の集中力をサポートする。そのような形で使われているのです。

 医療においては、注意事項が 他のビジネスフィールドに比べてたくさんあります。一定規格の

新製品を出すときに、日本だと PMDA(医薬品医療機器総合機構)、アメリカだと FDA(アメリカ

食品医薬品局)など 当局の認可が必要。検証のため どうしても時間がかかってしまうのです。

   AIの実装についても同じことが言えます。他のデジタル分野で、たとえば アプリを作るとか、

ビジネス提案をするといった場合のスピード感とは違ってくるのです。

   4~5年前から、アップルやグーグルなど テックジャイアントと呼ばれる企業が、それぞれ異なる

アプローチで 医療分野参入の戦略を打ち出してきています。でも 彼らでも なかなか大きな成果を

上げづらい。 他の分野なら、日常生活をおくる中で生まれる、言葉は悪いですが そこらへんにある

情報を基にしてもかまわないところがありますが、医療では 精度の高いデータを取らないといけない

場合が多い。そういう質の高いデータは 溢れていないので、ある程度コストをかけて取りにいかない

といけません。この点は、時間がかかったり、他のプレーヤーが苦戦する要因かなと思います。

 

AIによる判断根拠を透明化していく

 AIを実装するにあたっては、ブラックボックス問題への対応も必要になります。AIは

アルゴリズムを用いて 何らかの結果を提示するわけです。それが どういう基準に基づいて判断されて

いるのかについては、多くの場合、企業の側が データを持っているので、根拠がわからなくなって

しまっているのです。それを どのように信頼しながら使っていくのか。

   たとえば 大きな懸念のひとつは、日本の医師たちが 遠からぬ将来、皆、生成AIを基に診断を

してしまった場合です。診断のデータは 医師たちのネットワークではなく、外国の企業に蓄積される

わけです。もし、ある企業が データベースに蓄積したデータの公開を止めた場合、日本の医療は

成立しなくなってしまう可能性がある。

 

    生命に直結するアルゴリズムに関しては、日本側が データをしっかり持って独自に積み上げら

れるようにするということが、やはり必要でしょう。独自のデータを持ち、プラットフォーマーに

すべてコントロールされないような セキュリティを確保していくことが、ブラックボックス問題に

対するひとつの対策です。

 

    もう一つの対策として、判断の根拠になっているものを 生成AIに示させるようなアルゴリズム

をつくるということも挙げられます。それぞれの判断について、根拠を示しながら提案をして下さい

ということ。根拠について透明化することも大事です。

 

未病対策にこそ AIが力を発揮し 超高齢化社会の日本を支えてくれる

   現状、画像診断など 医師のサポートに使われているAIですが、未病対策にも有効だと思います。

医療に関係する者として 自戒を込めて言えば、今までの医療は 多くの場合、病気になって、そして

それがある程度進行して 病院に来たところから始まるんですよね。もちろん、古くは それが社会

にとって一番良かった。あるいは それしかできなかったわけです。

   でも 世界で 最初に超高齢化社会に突入する国である日本では、病気になってからの治療モデル

だけだと 財政的にも厳しいわけですよね。

一人一人が その人らしい生き方をして、自然に健康が保たれる。あるいは 病気になっても、障害が

あるとしても、それが 人生の妨げにならない。年齢を重ねても その人らしい暮らしができる時間が

長い。そういう社会をつくることが すごく重要です。

 

   たとえば 認知症で言いますと、中等度以上になってから治す薬というのは、少なくとも今後15年は

世に出ません。ですから 認知症になる前の段階で改善をはかることが望まれます。

多くの場合、その前の段階で フレイル(加齢による虚弱)に注意する必要があります。もちろん

いろいろなプロセスがありますけど、身体が弱ってきて 外出をしなくなって閉じこもり、その結果

認知症が進行するという経過を辿ることもあります。フレイルが進行する前で 改善できれば、未来

を変えることもできるかもしれない。

   フレイルの重要な予測因子として、歩行速度が挙げられます。まだ精度の問題はありますが、

今は スマートフォンで、歩行速度が表示できるようになっています。これを使うことで認知症の

手前の段階から、改善のアプローチをしていくことができるでしょう。

   健康診断でわかることでもありますが、通常検診は 1年に1回。1年の間に どんどん悪化している

かもしれない。ライフログ(人間の生活の様子をデジタルデータで記録)を活用すれば、歩行速度が

落ちていった、運動できなくなっていった、睡眠の質が良くないということなどがわかり、病気

になる前や症状が悪化する前のタイミングで 改善のために介入していくことができます。

 

バラつきのある医師の能力をサポート

    医療・ヘルスケアという分野は、病気になってから治すというだけではなく、人々の健康を維持

したり ウェルビーイングを高めるために貢献するというように再定義して、人々の未来を一緒に

つくるような役割も重要な側面になるでしょう。

   ある国は、プライマリードクターの役割を、地域の健康を診るということに位置づけています。

その概念は ものすごく素晴らしいのですが、待ち時間が すごく長くなり、現実的には その仕組みは

破綻しているようです。背中が痛いと感じて 医者に診てもらうまでに、2週間。診てもらったら

「整形外科に行ってください」。整形外科でちゃんと診てもらうのに、結果的に 1カ月もかかって

しまうというような状況です。その間に失われる命も もちろん いっぱいあるのです。

 

   そこで、データとAIを活用する新しい医療のあり方を考えることは大事なことだと思います。

生成AIに関しては、ふたつのフェイズで考える必要があると思います。

現状で 生成AIが即戦力となるのは、概要をつくる能力。患者さんに説明するときに、中学生の

子供にわかりやすくとか、高齢者の方にわかりやすく というように、それぞれの患者さんにわかり

やすい語彙でまとめる部分です。ただし 正確な診断という点においては、現状 まったく使いものに

なりません。

   ただ生成AIは ものすごいスピードで改善しているわけですよね。チャットGPTでも、前は 

嘘か本当か検証できなかったけれども、今は 使い方を工夫すれば 何を根拠にそういう言葉を作った

のか、引用元を提示させることができます。そういう正確性を担保した判断というところが、

これから間違いなく発展していきます。

   今すぐではないにせよ、いずれ 生成AIが問診をサポートする、さらには代替していくような

フェイズに 必ず入っていくと思います。そうなりますと、一人一人の医師の臨床能力が バラついて

いる部分を、しっかりサポートしていくことが可能になる局面がやってくるでしょう。

 

生成AIが問診を代替するフェイズがやってくれば 医者格差リスク軽減

 地域格差も少なくなっていくと思います。もちろん 外科のような 高度集約的な機能を どこでも

まんべんなくできるようになるのは 簡単ではありませんが、そういうものを除けば AIと

データ活用は、多くの人たちへの質の高い医療の提供と健康的な暮らしの寄与につながっていくと

思います。

 医師は それぞれが、エビデンス・べースド・メディスンといって 最良の根拠を基にした治療を

行わないといけません。そのためにも 一人一人が 最新の論文を定期的に読んで 自分をアップデート

し、この症状の患者に対して 世界中の薬の中で 何が一番いいかと判断しないといけないのです。

とはいえ すべての論文を読むことなどできません。症状を打ち込めば おおまかな判断は 高度なAI

が当たりをつけてくれ、最後の決断は 人間が責任を持って行う という方向にシフトしていくことも

可能になるでしょう。

   AIの発展で医師の役割がなくなるというよりも、これまでやっていたことの一部をAIに任せ、

人間が注意力を使いながら行うべき分野が変わっていくという感じですよね。例として 医師は

患者さん一人一人のライフスタイルに注意を払いながら、普段 どのように行動したらいいのか

アドバイスをしたり、患者さんに寄り添う方向で役割を深めていくかもしれません。

 

新ビジネスモデルで日本躍進の可能性も

   AIを利用した医療は まだ始まったばかりですから、日本が 世界をリードする可能性もあります。

現状の日本は、デジタル敗戦そのものですよね。デジタル技術を上手く生かせなかったことが

「失われた30年」の大きな要因です。日本の医療界で 象徴的なのは、コロナ禍においてファクスを

用いて報告を行っていたこと。悪い意味で 世界を驚かせてしまった。

   そもそも 数十年前のインフラを使い続けるのには、限界が来ています。これを 一気に新しい

デジタルを活用した仕組みに変えるべきタイミングだと思います。中国は 10年前に 国全体を

デジタル化していってから躍進しましたが、日本が 国全体をデジタル化する中で、新しい仕組み、

世界をリードするようなものをつくっていくことは 十分可能なことでしょう。

 

   一方で 高齢化が進む日本では、財政的に厳しい部分はあります。ただし 公的私的なお金を

使いながら医療を良くしていくということは、社会的にも承認される部分です。そこで、医療分野

において AIを使った新しい仕組みなり ビジネスモデルをつくることができる可能性があると

思います。

   高齢化は 日本だけの問題ではありません。中国は 十数年遅れで 日本よりも深刻な高齢化社会

になっていきますし、西側諸国も同じような状況。 課題先進国としての日本が、新しい市場を

つくっていく機会があるわけです。これを ポジティブな未来につなげられるかどうかが、非常に

重要です。