「消滅可能性都市」から脱却した美咲町

 

 

地方創生、実現遠く 人口減、歯止めかからず―出生率向上へ対策急務

                                                2024年04月24日          時事ドットコム

    民間有識者らでつくる「人口戦略会議」が示した新たな「消滅可能性自治体」のリストで、

厳しい人口減少が 改めて浮き彫りになった。政府は 2014年以降「地方創生」を掲げ、少子化対策

と東京一極集中の是正に取り組んできたが、コロナ禍を経て 少子化は加速。 東京圏への人口流入の

傾向も 再び強まっており、道のりは遠い。

                   人口戦略会議、2050年にかけて全国4割超の自治体が消滅の可能性と公表

 

◇一極集中是正進まず

 「 出生率の低下が 非常に大きい。国全体で出生数が増えない と改善にはつながらない 」。

会議の副議長を務める増田寛也元総務相は こう語り、少子化の基調が変わらない現状に危機感を表明。

従来の取り組みが 「 若者や女性にとって 的を射たものか というと、違っていた部分もあった

のではないか 」と投げ掛け、対策強化を訴えた。

 

 政府は この10年、政府機関の地方移転や移住促進の交付金、東京から 本社機能を 地方に移す際

の減税措置などを打ち出し、若者をターゲットに 地方への定着を促す政策を中心に進めてきた。

 ただ 今回の報告書は「 若年人口を 近隣自治体で奪い合うかのような状況も見られる 」と指摘。

日本の総人口は この10年間で 300万人近く減り、コロナ禍での婚姻数の落ち込みを背景に、

年間出生数は 22年に80万人を割り込んだ。国立社会保障・人口問題研究所は17年に、80万人

を下回る時期を33年と見込んだが、想定より大幅に早まった。

 

 東京一極集中の是正も思うように進んでいない。政府は 当初、地方と東京圏の転出入を 20年に

均衡させる目標を掲げたが、2度にわたり年限を先送りした。コロナ禍では一時、「3密」を避け

東京都外に転出する動きも広がったが、東京都では 最近、転入者数が転出者数を上回る「転入超過」

がコロナ禍前に迫る水準となっている。 

 増田氏は、地方部から大都市部に若年層が流入し、地方は 流出する構図が続いていると指摘。

「 人口の多い自治体は 出生率向上が急務で、自然減対策に もっと力を入れる必要がある 」と

強調した。 

 

◇市町村の格差も課題

  今回の報告書は、10年間で 239市区町村が「消滅可能性自治体」から脱却し、100年後も5割近い

若年女性人口を維持できると見込まれる「自立持続可能性自治体」は 65市町村であることも明らか

にした。

   増田氏は、県内で 12市町村が「消滅可能性」から外れた島根県を例に、「 住まい確保や地域の

(暮らしやすい)空気感など、自分たちでやればできることを考えて取り組んだのではないか 」

との見方を示す。

 

  地方創生を受け、特に 地方部の自治体は 移住政策に力を入れ、小規模市町村を中心に人口流入

が増える「社会増」を達成するケースも増え始めた。

一方で、人口流出に 依然 苦しむ市町村も多く、この格差も課題だ。過疎対策に詳しい小田切徳美

明治大教授は「 先行して頑張る地域が『何に取り組んだのか』ではなく 『どう取り組んだのか』を

横展開し、国は 地方への移住や関係人口の拡大へ音頭を取っていくべきだ。前向きな地域づくりが

移住の増加や出生率向上につながってくる 」と語った。

 

 

 

 

[社説]人口減対策と地域の持続性確保は両輪で

           2024年4月25日   日本経済新聞 

 2050年に市区町村の4割が消滅しかねない という報告を民間の「人口戦略会議」がまとめた。

地方の人口減少の深刻さを 改めて浮き彫りにする内容だ。政府が 地方創生に取り組んで10年

になるが、その政策効果に 疑問を投げかけた といえよう。

 地方創生は 地方への移住を重視したため、自治体間の人口争奪を促すにとどまり全体の

出生率向上につながっていない。人口対策としては 出生数の3分の1を占める首都圏の少子化対策が 

別に必要だ。地方の持続性を高める政策は、人口問題と切り分け、両輪として取り組むべきである。

    報告によると「消滅可能性自治体」は 前回の14年の 896から744に減った。厳しい状況は

変わらないとみるべきだが、それは どの自治体も身に染みていよう。危機感をあおるショック療法

を何度も使うのは感心しない。

   前回報告を 契機に始まった地方創生は、60年に 人口1億人の維持を目標とし、そのために

人口の東京一極集中に歯止めをかけることを掲げた。出生率の低い東京圏に 地方から若い女性が

集まることが 人口減少を加速させるとの問題意識からだ。

 

   しかし、女性の就労率が高まれば、希望する仕事の多い東京圏に出ていくのは 自然の流れだ。

それを前提に 地方のあり方を考えねばならない。

   人口が減る地方で 行政機能を維持するために考えられるのが、市町村合併道州制といった

自治体の再編だ。だが これらは合意形成に 相当な政治的エネルギーを要する。目の前の業務が

山積する現状では、大きな困難を伴う。

 

    それより デジタル化を通じて 自治体業務を共通化し、複数の自治体が共同で担ったり、

都道府県が肩代わりしたりする 広域連携を探っていくのが現実的だ。

これらが進めば、その先に 合併機運が醸成される余地も生まれよう。

 

   行政コストを下げるため、人々が ある程度まとまって住むことも必要だ。居住地などを集約する

コンパクトシティーは 1世代30年かけて進めていく政策だが、足元でも 市街地のマンションに集住

する動きが広がりつつある。福祉や防災面からも望ましい傾向であり、こうした流れを後押ししたい。

 

   人口減対策や地域の持続性を高める政策は 息の長い取り組みが必要だ。消滅か否かに一喜一憂せず、

地道に着実に進めてほしい。

 

 

千葉市長「間違ったメッセージだ」 県内22市町が「消滅可能性」

               2024/4/26   毎日新聞

 「人口戦略会議」が公表した「消滅可能性自治体」の評価について、千葉市の神谷俊一市長は

25日の定例記者会見で「 自治体のランキングを示すのは 自然減対策のメインが 自治体であるか

のような、間違ったメッセージだ 」と苦言を呈した。

 同市は 消滅可能性自治体や自立持続可能性都市などのいずれにも当てはまらない「その他自治体」

の「D―(1)」の評価。神谷氏は「 千葉市は 自然減対策が必要とされている。長く住み続ける

ために 高齢者福祉や子育て支援策をしっかりしなければいけない 」と述べた。

 一方、給食や保育料の完全無償化などの施策について「 自治体の競争になってしまって(出生率)

全体の底上げができていない。国が 財源を確保するなど踏み込んだ対応が必要だ。出生率を上げる

ことは、自治体だけでは限界が来ている 」と主張した。