有害無益な宇宙開発を 日米合意   2024.4.11

 

 

JAXAに 1兆円の新基金、夏にも公募開始 民間投資「目利き」課題

                                  玉木祥子            朝日新聞デジタル

 

 日本の宇宙ビジネスの競争力を高めるため、10年で 1兆円の「宇宙戦略基金」の運用が 今夏にも

始まる。政府が 宇宙航空研究開発機構(JAXA)に基金を設け、民間企業や大学の技術開発を 支援

するもので、近くテーマを決める。国際的な宇宙開発競争が激化する中、技術革新につなげられる

のか。 基金を運用する JAXAの「目利き」が問われる。

 基金の第1弾として、2023年度補正予算に 計3千億円を盛り込んだ。 23年度のJAXA予算の

2155億円を上回る規模だ。

 優先的に進める技術開発の分野をまとめた「宇宙技術戦略」をもとに、文部科学、経済産業、

総務の各省は 今月、公募するテーマ案を示した。 多数の人工衛星の連携による通信網構築の加速化

(950億円)や、月面で使える燃料電池システム(230億円)、ロケットの打ち上げ高頻度化や

低コスト化に向けた技術(155億円)など 22テーマについて、内閣府の宇宙政策委員会で 

今月中にも正式に決定する。JAXAは 夏にも 公募を始め、年度内に 支援先を選ぶ方針だ。

 

 政府は、複数年度にわたって使える基金を設けることで、スタートアップや宇宙関連ではない

企業による大胆な技術開発につなげたい考えだ。

 三菱総合研究所主席研究員の内田敦さんは「 宇宙分野は、開発や実装に時間がかかるものも多い。

長期的な研究計画を立てられるので、企業や大学からの期待は大きい 」と話す。

 

 

JAXA基金、10年で1兆円 宇宙スタートアップを支援へ 

                                             2023年12月4日      日本経済新聞

    宇宙航空研究開発機構(JAXA)による民間企業などへの資金提供が 2024年度に動き出す。

今国会で成立した改正JAXA法を根拠に 最長10年間にわたり1兆円規模で支援する。スタートアップ

の技術を どこまでいかせるかが、日本の宇宙開発を左右する。

   JAXAは これまで宇宙分野の研究開発に注力してきた。今回の法改正により、民間の産業分野に

投資する役割が強まった。政府は 23年度中に「宇宙技術戦略」をつくり 集中的に支援する技術と

工程表を示す。

 

   柱とする技術の一つは 複数の小型衛星を一体で運用する「衛星コンステレーション」だ。地上との

通信や地上の観測に役立てる。地上の状況の即時把握や高速通信は、北朝鮮による弾道ミサイルの

迎撃といった安全保障の観点でも重要性が増している分野だ。

  海外をみると 米スペースX や 英ワンウェブなどが関連技術の先頭を走っており、米アマゾン・

ドット・コムも参入を計画している。 国内では QPS研究所(福岡市)などが「 合成開口レーダー

(SAR)」の技術を生かし、夜でも 地球を観察できる衛星群の構築を目指す。

 

 

 宇宙空間の安全な活用を確保するスペースデブリ(宇宙ごみ)を除去する技術や、宇宙旅行を可能

とする輸送技術なども対象となる見込みだ。政府やJAXAが民間支援を急ぐのは、宇宙ビジネス

急速な拡大が背景にある。 米モルガン・スタンレーの予測によると、宇宙産業の世界市場は

40年に 1兆ドル(約150兆円)超と 17年の 3倍程度に増える。

   成長の50~70%を占めるのが 衛星によるインターネットサービスとみる。

欧米では 米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)などが先端技術の商用化を 戦略的に支援

する環境が整っていた。NASAは 年間数千億円規模、ESAは 年間1000億円規模を それぞれ民間企業

や大学の支援に投じている。

  スタートアップは 今回の政府の姿勢をどうみるか。再利用できる小型ロケットの開発を目指す将来

宇宙輸送システム(東京・中央)の畑田康二郎代表は「 (基金の創設が)米国に追いつき、追い越す

機会になってほしい 」と話す。

 

   小型の人工衛星を開発するSynspective(シンスペクティブ、東京・江東)は資金を獲得できれば、

地上観測の解像度が 現在の数倍高い次世代機の開発などに充てる方針だ。

月面に物資を輸送する着陸船を開発するispace(アイスペース)の袴田武史最高経営責任者(CEO)

は「 日本の勝ち筋に沿って、集中的な産業化を後押しするきっかけになってほしい 」と語る。

   支援が 特定の企業にとどまらず、業界全体に行き届くかどうかにも関心が集まる。 例えば 

ロケットや人工衛星は部品数が 数万点にも上る。小型ロケット開発のインターステラテクノロジズ

(IST、北海道大樹町)の稲川貴大社長は「部品のメーカーなども含め資金が回る仕組みを作って

ほしい」と述べる。

 先行する米国は 政府が資金の手当てをつけつつ、民間の主体性を持たせて新興企業を育成してきた。

その代表例が スペースXを育てた商業軌道輸送サービス(COTS)と呼ぶ プログラムだ。

ロケットの輸送能力などを要求するにとどめ、商用化を見据えた詳細な設計や開発方針などは企業の

アイデアを重視した。