大阪のPFAS汚染で「1000人血液検査」の中間発表。汚染の広がりが明らかに

         2024.4.10   幸田泉  - エキスパート - Yahoo!ニュース

 

 全国的に汚染が明らかになる PFAS(有機フッ素化合物、ピーファス)の健康への影響を

調べようと、大阪で行われた「1000人血液検査」について、2023年3月31日、分析結果の中間発表

が行われた。PFASの一種、PFOA(ペルフルオロオクタン酸、ピーフォア)を製造していた

ダイキン工業淀川製作所(大阪府摂津市)の工場労働に従事していた人から 極めて高いPFOAが

検出され、摂津市の住民は 相対的にPFOA濃度が高いことが確認された。

  その一方で、摂津市以外の住民からも 一定程度のPFASが検出されており、日常生活に PFASが

深く浸透し、体内に取り込まれている実態が浮き彫りになった。

 

ダイキン工業労働者は突出した数値

 大阪の「1000人血液検査」は「大阪PFAS汚染と健康を考える会」(大島民旗代表)が実施。

大阪民主医療機関連合会(大阪民医連)が 血液採取を行い、京都大学大学院医学研究科が分析を

行った。2023年9~12月に 大阪府内に居住しているか職場がある人を対象に 1193人の血液を採取。

中間発表では 459人の分析結果が公表された。

 数万種類あると言われるPFASのうち、測定したのは、PFOAのほか、PFOS(ペルフルオロオクタン

スルホン酸、ピーフォス)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)、PFNA(ペルフルオロ

ノナン酸)の計4種類。いずれも 様々な製品の撥水加工などに使われてきた。

 

 アメリカの科学アカデミーは、血中のPFAS濃度が 20ng/ml以上の人は健康被害のリスクが高まる

として、脂質代謝異常、甲状腺異常、腎がんなど特定の疾患について診察、検査を勧めている。

459人の平均値をみると、

PFOSが 6.5ng/ml ▽ PFOA 8.5ng/ml ▽ PFHxS 1.1ng/ml ▽ PFNA 3.1ng/ml。4種類の合計の

平均値は 19.2ng/ml。459人のうち 摂津市住民 181人だけでみると、4種類の合計の平均値は

20.1ng/ml、PFOAの平均値は 9.41ng/mlで、全体の平均値よりやや高い数値だった。

 検査参加者の中には、摂津市在住ではないが、長年にわたりダイキン工業淀川製作所で勤務して

いた人がおり、血中のPFOA濃度596.6ng/mlと突出していた。

「大阪PFAS汚染と健康を考える会」の専門委員会委員長、中村賢治医師は「 体内に取り込まれた

PFASは だいたい4年で半分になる。ダイキン工業は 10年以上前に PFOAの製造を止めているのに、

現段階で 血液から この数値が出るのは驚きだ。どういう労働環境だったのかなど 聞き取り調査を

したい 」としている。

 

どうして 私が? 予想しなかった高濃度の人も

  1000人血液検査に参加した大阪市東淀川区在住の堀智佐子さん(63)は、手元に届いた検査結果

に目を疑った。PFOA 19.7ng/ml、PFOS 9.1ng/ml、4種類のPFASの合計は 35.5ng/ml。

「 血液検査を受けたのは、疫学調査に協力しようとの思いから。まさか 自分がこんな高い数値だとは

予想していなかった 」と話す。

 摂津市内に住んだことはなく、地下水の高濃度汚染地域で栽培された野菜を食べる習慣もない。

考えられるのは「大気」だという。堀さんは「 1984年から18年間、東淀川区の学童保育で指導員を

していた。淀川の堤防で 子どもたちを遊ばせるので、平日なら2時間ぐらい、夏休みになると

1日5時間ぐらいは屋外で活動していた 」と振り返る。

 遊び場だった淀川の数キロ上流にあるダイキン工業淀川製作所では、1960年代後半から他社から

購入した PFOAの取り扱いを始め、1980年代から2012年までは 自社でPFOAを製造していた。

堀さんは「 工場の排気によって PFOAが空気中に広がり、それを吸い込んでいたのではないか 」と

推測する。

 

日常生活に深く入り込んだPFAS汚染

 大阪のPFAS汚染は ダイキン工業淀川製作所周辺への影響が 注目されてきたが、今回の1000人

血液検査では、摂津市以外の住民のPFAS血液濃度も 決して低くないことが判明した。

水や油をはじくPFASは その利便性により 身の回りの製品に幅広く使用されており、汚染原因は

多岐にわたることをうかがわせた。

 4種類のPFAS合計の平均値でみると、

大阪市西淀川区(検査参加者47人)17.5ng/ml ▽ 大阪市東淀川区(同49人) 18.2ng/ml

▽ 大阪市此花区(同22人) 14.8ng/ml ▽ 吹田市(同27人) 16.3ng/ml 

▽ 茨木市(同43人)15.0ng/ml ▽ 東大阪市(同30人)14.6ng/ml などとなっている。

 

 PFOS、PFOAは 既に製造、輸入が禁止されており、血液分析を行った京都大学大学院医学研究科

の原田浩二・准教授は「 検査で明かになった濃度が 過去のPFAS曝露によるものなのか、現在も

曝露が続いているのかは不明であり、今後、見極める必要がある 」と話す。

 「大阪PFAS汚染と健康を考える会」では 血液濃度が 20ng/ml以上の人には 腎臓、甲状腺などの

検査を勧めており、現在、府内2カ所の診療所が「PFAS外来」を設けて対応している。

長瀬文雄・事務局長は「 今後は PFAS外来を10カ所に増やし、20ng/ml未満でも不安のある人には

受診を呼び掛けたい。また、国、自治体、企業の責任で もっと大規模な疫学調査をするよう求めて

いく 」としている。