管理費だけ 計12億円超たれ流し…国の「休眠基金」が 27も 

原資は国費 識者「 早期に清算し国庫返納を 」

                        2023年3月10日     東京新聞 TOKYO Web

 

   国の府省庁が 国費で設立した基金のうち、補助金交付などの本来の事業を全く行わず、事業費

が ゼロで支出が人件費などの管理費だけだった「休眠基金」が 2021年度で 27に上ることが、

本紙の調べで分かった。休眠状態の残高は 計248億円で、21年度だけで 12億円超の管理費を支出。

ほぼ機能していない基金の維持に 国民の税金が使われている状態で、識者は「 役目を終えた基金は

早期に清算すべきだ 」と対応を問題視している。

 

◆経産省所管が17と突出

 基金は 地方自治体に設立されたものを除いて、21年度に 12府省庁で計176あり、うち 経産省

と農林水産省が創設したものが 全体の6割超を占める。残高は 全基金の合計で 12兆9228億円も

積み上がっている。

 本紙が 全176基金を調べた所、支出の全てが 基金を運営する経費だけという「管理費率100%」

で、本来の目的である補助金交付などを行わずに「事業費」がゼロだった基金は 全体の15%に

あたる 27。経産省の所管が 17と突出し、農水省と国土交通省がそれぞれ 4、防衛省と復興庁が

一つずつだった。

 

◆休眠基金は なぜ存続している? 担当者の説明は

  例えば、革新的なサービスの創出や画期的な試作品の開発などを促す「 ものづくり中小企業・

小規模事業者試作開発等支援事業基金 」(経産省所管)は、16年3月に新規の申請受け付けを終了。

17年度以降の5年間は 補助金を交付せず、管理費だけ 計83億1900万円を支出した。

 同じく 経産省所管の「 円高・エネルギー制約対策のための先端設備等投資促進基金 」も

14年3月で 新規の申請受け付けを停止し、事業者への補助金支払いも 16年度に終えた。それでも

清算せず、管理費だけを支出し続けている。

 

 農水省の所管では、国産畳の市場価格が下落した際、生産者に 一定額を補填する事業を行う基金

が「 畳の価格が安定し、補填金を支払う必要がなかった 」などとして、管理費のみの支出だった。

経産省の担当者は「休眠基金」を 多数存続させていることについて、本紙の取材に「 補助事業が

終わっても数年間は事業の成果把握や補助金の事後手続きなど、事務作業が発生する場合がある 」

と説明している。

 

 白鴎大の藤井亮二教授(財政学)は「 基金は カネの流れが不明瞭になりやすい 」とした上で

「 実質的に機能していない休眠状態の基金は管理費の支出を続けるのではなく、残った管理業務は

所管省庁に移管するなどして清算し、残高を国庫に返納すべきだ 」と指摘している。

 国の基金 複数年度にわたる中長期的な課題に対応する事業を行うため、独立行政法人や

国立研究開発法人といった団体を運営主体として設立される。単年度主義を原則とする予算の例外

になる。弾力的な補助金の交付など 柔軟な運用が可能だが、国会の監視が行き届きにくく、

使用見込み額の過大な算定や似通った事業の実施など無駄遣いの問題も相次ぐ。2013年から所管する

省庁が基金の収支や残高、事業の状況を定期的に公表している。