台湾地震、半導体供給網に混乱も TSMCなど一部稼働停止

                2024年4月4日   ロイター

[北京 3日 ロイター] アナリストらによると、台湾で3日発生したマグニチュード(M)7.2

   の地震を受けて、アジアの半導体やディスプレーなどの サプライチェーン全体に混乱が生じる

   可能性がある。半導体受託生産の世界大手台湾積体電路製造(TSMC)(2330.TW)などが

   一部業務を停止したためだ。

      TSMCは 米アップル(AAPL.O) 米半導体大手エヌビディア(NVDA.O)のサプライヤー

   でもある。台湾には この他、聯華電子(UMC)(2303.TW)バンガード・インターナショナル

 ・セミコンダクター(世界先進積体電路)(5347.TWO)などの半導体メーカーが 本拠地を置いて

   いる。

      アナリストによると、台湾メーカーは 何年も前から工場の地震対策を強化しており、生産自体

   や設備への打撃を最小化するための自動緊急停止システムが 広く採用されている。

   カナダの調査会社テックインサイツのダン・ハッチソン副会長は、「 自動停止する設備の多くは

   再稼働に 36時間から48時間もかからない。四半期決算に影響はない可能性が高いが、復旧と

   再稼働は 頭痛の種になるだろう 」と述べた。

 

      大半の工場は 震源地に近くないが、多くの企業は 製造工場の一部を停止させ、幾つかの施設を

   点検のために閉鎖した。

     TSMC は、地震発生から10時間以内に同社の半導体製造施設の全体的な復旧率が 70%以上に

   達し、新しい施設では 80%以上に達したと発表。

   AI(人工知能)向け半導体を TSMCで製造しているエヌビディアは、製造パートナーと協議

 した上で、地震によるサプライチェーンの混乱は 予想していないと説明した。

 

      コンサルティング会社アイザイア・リサーチは、新竹市、台南市、台中市にある TSMCの工場

 では 地震で 少なからず操業が滞ったため 一部の出荷を遅らせたり、ウエハーの投入量を増やす

   必要がある可能性があると指摘。

    「 地震の影響を軽減するには、生産を回復し 品質基準を維持するための慎重な対策と時間が

     必要であり、新たな影響と障害が生じている 」

   と分析した。

       TSMCの台南工場では、3ナノメートルや4─5ナノの先端半導体の製造が一時停止。さらに、

 これらの先端半導体の製造に不可欠な極端紫外線(EUV)露光装置も 8~15時間停止した。

 

  バークレイズのアナリストらは、一部の非常に高度な半導体工場は 数週間にわたり真空状態で

   24時間365日連続稼働する必要があるため、操業の一時停止によって プロセスが中断される

   ことで、半導体部門への価格圧力が高まると指摘。

     この結果、日本や韓国などにおける上流製品の製造のみならず、中国やベトナムなど下流製品

   に重点を置く国の電子機器製造業に「 短期的な障害 」を引き起こす可能性があると述べた。

      また、顧客の在庫水準が低下することで、台湾や韓国の半導体メーカーが価格を引上げる可能性

   があると指摘した。

 

      調査会社トレンドフォースは、テレビ用パネルの出荷も影響を受けると予想。旺盛な需要に対応

   するため、メーカーは すでに 世界的にフル稼働に近い状態で操業しており、地震によって供給が

   逼迫する可能性が高いという。

      テレビ用パネルの価格は 4月いっぱい上昇し続けると予想されるが、台湾のパネルメーカーが

   1週間以上の操業停止を余儀なくされない限り、地震の長期的な影響は限定的とした。

 

 

   TSMC、半導体製造施設で業務再開 地震受けた点検後 

                                                     2024年4月5日        ロイター

       [4日 ロイター] - 半導体受託生産の世界大手、台湾積体電路製造(TSMC)(2330.TW)

   4日、台湾で3日発生したマグニチュード(M)7.2の地震を受けて点検のために停止して

   いた半導体製造施設での業務を再開したと発表した。

    初期調査の結果、台湾の半導体工場の安全システムが正常に稼働していることが分かった

   と発表。一部の工場では従業員が避難したが、全員無事で地震後すぐに職場に戻ったという。

   特定の施設でいくつかの装置が損傷し、操業に一部影響が出たが、重要な半導体製造装置は

   被害を受けなかったとした。

    ただ、より大きな被害を受けた地域の特定の生産ラインでは、完全に自動化された生産体制

   に戻るまでに さらに時間を要する可能性があると言及。半導体製造施設の全体的な復旧率は

   4日時点で80%超となり、新しい施設では 4日中に完全に復旧すると見込んだ。

 

 

 

半導体製造で唯一無二の台湾、地震の影響を世界が注視-QuickTake

                                                    2024年4月4日       Bloomberg

 台湾でここ四半世紀で最大の地震が発生し、半導体企業の生産が一時止まった。人工知能(AI)

や最新スマートフォン、電気自動車(EV)の最先端テクノロジーを支える先端半導体の製造に

おいて、台湾は 重要な役割を果たしている。

台湾で何が起きたのか
 台湾当局によれば、3日午前7時58分(日本時間同8時58分)ごろ発生した地震で、少なくとも

9人が死亡。米地質調査所(USGS)はマグニチュード(M)7.4の地震だとし、台湾東部・花蓮市

から18キロ付近が震源と推定している。

  米国のアップルやエヌビディアに 半導体を供給する半導体受託生産大手、台湾積体電路製造

(TSMC)は 一時、一部地域で スタッフを避難させ、地震の影響を見極めた。

台湾の同業、聯華電子(UMC)も一部の工場で設備の稼働を停止し、新竹と台南の拠点の一部施設で

退避措置を講じた。

 台湾は 最も先進的な半導体の世界的な生産地だ。台湾で製造される半導体には、アップルの

スマートフォン「iPhone」の心臓部であるプロセッサー米オープンAIの対話型AI「ChatGPT

(チャットGPT)」を含むAIモデルの学習で使われるエヌビディアの画像処理半導体(GPU)

含まれる。

 特に TSMC は、複雑な半導体製造において最も進んでいるため、ハイテク業界の要となっている。

 台湾は最上級半導体の80-90%を供給していると推定され、唯一無二の存在感を示している。

 ベルリンを拠点とするシンクタンク、シュティフトゥング・ノイエ・フェアアントボルトゥング の テクノロジー・

地政学プロジェクト担当ディレクター、ヤンペーター・クラインハンス氏は、台湾を 半導体産業

における「 潜在的に 最も重大な単一障害点 」と呼んでいる

 

AIへの影響は

 テクノロジー分野で 今 最も注目を集めているのが AIだ。オープンAIのサム・アルトマン

最高経営責任者(CEO) や エヌビディアのジェンスン・フアンCEOら 業界のリーダーは 

新しいAIサービスの学習に必要な半導体の不足について 警鐘を鳴らしている。

 エヌディアは現在、AI半導体を 全て TSMCに発注。そのため、TSMCの最上級半導体生産に

短期間の混乱が生じるだけも、影響が生じる可能性がある。台湾の物流・電力インフラに地震の

影響が及べば、最新半導体の納入にも響くだろう。

 

なぜ半導体の生産が集中するのか

 半導体の製造は 極めて複雑で、TSMCは 何十年もの間、エンジニアが協力し 製造システムを

微調整し、専門知識を共有できるよう、製造を 台湾に集中させてきた。

 その結果、TSMCは インテル 韓国のサムスン電子といったライバルを引き離し 大成功を

収めた。しかし、国家安全保障上の懸念が高まり、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的

大流行)期に サプライチェーンの混乱が発生。米国や欧州、日本の政府は TSMCに地理的な製造拠点

の分散化を促している。

 TSMCは 日本と米国に工場を建設。ただ、台湾以外に置く生産ラインは 最先端の半導体向けとは

ならない。

 

台湾に対する懸念は

 台湾を 中国の一部と見なす中国共産党は、台湾との統一を目指すと明言。アジア有数の民主主義を

体現している人口約2350万人の台湾は 今年、現状維持を掲げて 総統選に臨んだ与党・民主進歩党

(民進党)の頼清徳副総統を次期総統に選んだ。

 米国のバイデン政権は、武力をちらつかせ 台湾への影響力を行使しようと図る中国に警告している。

 

軍事衝突のリスクは

 ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、台湾を巡り 戦争が勃発した場合の 世界経済に与える

コストを 約10兆ドル(約1500兆円)と推計している。

 これは 世界の国内総生産(GDP)の約1割に相当し、新型コロナのパンデミックや世界金融危機

による打撃を凌駕(りょうが)する規模だ。