勾留で「がん発見遅れた」 冤罪の大川原化工機事件、遺族の請求棄却

             2024年3月21日    ライブドアニュース 

  化学機械メーカー「大川原化工機(おおかわらかこうき)」(横浜市)の社長らの起訴が

取り消された冤罪事件を巡り、勾留中の東京拘置所で適切な医療を受けられずにがんの発見が

遅れたとして、被告の立場のまま病死した同社元顧問の遺族が 国に1000万円の損害賠償を求めた

訴訟の判決で、東京地裁は 21日、請求を棄却した。

         【図で解説】大川原化工機事件 なぜ起訴取り消しに?

 元顧問は相嶋静夫さん(当時72歳)。相嶋さんは 2020年3月、軍事転用可能な装置を不正輸出

したとして 社長らとともに外為法違反容疑で警視庁公安部に逮捕され、東京地検が起訴した。

社長らの勾留は 約11カ月に及び、相嶋さんは 21年2月にがんで死亡した。地検は 初公判4日前の

同7月に「 起訴内容に疑義が生じた 」として 起訴取り消しを公表した。

 

 訴状によると、相嶋さんは 亡くなる7カ月前の20年7月に 東京拘置所で貧血の症状が出て、

その後は 胃痛や血が混じった便も確認された。同10月の拘置所の検査で胃に悪性腫瘍が見つかり、

一時的に 勾留の停止が認められて 外部の病院を受診し、進行胃がんが判明。外部の病院に入院

できたのは 同11月だった。

 遺族側は 訴訟で「 拘置所は 適切な検査や早期の転院を怠った。適切な対応がなされていれば

延命できた 」と訴えた。これに対し、国側は 相嶋さんの貧血は 軽度で精密検査を必要とする状態

ではなかったと主張。血が混じった便が確認された後には 内視鏡検査を実施していることなどから

「対応に問題はない」と反論していた。

 大川原化工機を巡っては、違法な逮捕・起訴があったとして 社長らが国と東京都に損害賠償を

求める別の訴訟を起こしている。東京地裁は 23年12月、国と東京都に計約1億6200万円の賠償を

命じる判決を言い渡し、双方が 東京高裁に控訴している。【巽賢司】    毎日新聞