藤倉善郎 2024/03/20 日刊ゲンダイ
「 ハマスのテロを許すな 」
「 イスラエルに平和あれ 」
そんなプラカードを掲げて アコーディオンとギターをかき鳴らし、おそらくヘブライ語で歌う
約1200人が 東京・銀座を練り歩いた。昨年11月の「イスラエル救援委員会」によるデモ行進だ。
イスラエルによるパレスチナ攻撃に抗議する反戦デモは多いが、イスラエルを応援するデモは
珍しい。参加者数の多さからは 一見、日本でも イスラエル支持の世論が強いかのように思える
デモだが、実は これ、在日イスラエル大使館 と 日本の宗教団体による“自作自演”だった。
このデモは ネットなどで 一般告知されず、なぜか イスラエル大使館が メディアにだけ事前情報
を流した。それと同時に 保守組織「日本会議」の構成団体でもある 「キリストの幕屋(宗教法人
キリスト聖書塾)」が 信者を動員。参加者は ほぼ全員が、その信者と大使館関係者だ。
デモ前、都内のビル内で行われたキリストの幕屋の礼拝集会に、筆者は 潜入した。
会場には「イスラエルのための東京キャンペーン2023」との横断幕。
完全に、デモに向けた決起集会だ。司会者が 信者たちにメディア対応についてアナウンスした。
「 主催は あくまでもイスラエル救援委員会。趣旨に賛同して参加したと答えるようにして下さい 」
教団や大使館の関与を隠すように という指示だ。この委員会自体、キリストの幕屋の教祖である
故・手島郁郎が設立したものだが。
集会には ギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使ら複数の大使館関係者も出席。コーヘン大使は
こうスピーチした。
「 このような東京キャンペーンを企画してくださり、ありがとうございます。幕屋の皆さんは、
どんなときも 私たちイスラエルとともに歩んでくれました 」
相手が キリストの幕屋という宗教団体であることを、大使館側も知った上でのことというわけだ。
これに まんまとだまされたのが、テレビ朝日。さも「 イスラエルを支持する一般市民のデモ 」
があったかのように報道した。しかし 悲しいことに、テレ朝以外のメディアは報じないばかりか、
取材にも来なかった。
イスラエルといえば、映画などでは 諜報機関「モサド」による高度な政治工作が描かれることも
ある。しかし 今回のデモ偽装作戦は、ずいぶんとお粗末だった。 (つづく)