“反ユダヤ”批判受けたベルリン映画祭 

SNS乗っ取り被害も対応声明でまた炎上   

     「臆病で哀れ」「映画人を守れず存在意義とは」

世界三大映画祭のうち、特に政治色が強く大衆主義的ではないと位置付けられています。

            2024年02月27日    ねとらぼ 

    ベルリン国際映画祭が 2月15日から25日まで開催。受賞者たちの発言を含め “反ユダヤ主義的”

な内容だった と 独政治家らを中心に批判されています。

   同映画祭は 26日、関連するSNSアカウントもハックされたことを問題視し刑事告訴する旨を表明

したうえで、受賞者たちによる発言は「 ベルリン国際映画祭の立場を表すものではない 」と声明

発表しました。

   しかし 今度は この対応が クリエイターに寄り添うものではないとして、別の角度から非難される

事態となっています。

 

受賞者たちが公の場で示したパレスチナへの連帯

    世界三大映画祭のうち、特に 政治色が強く 大衆主義的ではない と位置付けられている

ベルリン国際映画祭。第74回目となった今回の授賞式では、受賞者たちによる 10月7日から

始まった イスラエルとハマスの紛争についての発言が目立ちました。

 まず、ドキュメンタリー「Dahomey(原題)」で 金熊賞を受賞したセネガル系フランス人の

マティ・ディオップ監督は、壇上で「 私はパレスチナを支持します 」と明確に発言。同作は

1892年に フランスの植民地軍が略奪した数千点のうち、26点の宝物を 2021年11月に現在の

ベナン共和国へ返還する物語を描いた作品です。

 

   また、イスラエル人とパレスチナ人の集団によるドキュメンタリー「No Other Land(原題)」は

最優秀ドキュメンタリー賞に加え、観客賞も受賞。イスラエルが占領するヨルダン川西岸で、

追放されようとしているパレスチナ人を描いた内容で、受賞に際し 壇上へはパレスチナ人の活動家

バーゼル・アドラと、イスラエル人ジャーナリストのユヴァル・アブラハムがあがりました。

そして  イスラエル人が パレスチナ人を虐殺していると述べ、また ドイツによるイスラエルへの

武器売却も非難、ガザでの停戦やヨルダン川西岸の占領停止を呼びかけました

 

   さらに 米監督のベン・ラッセルは、パレスチナの民族主義を象徴する伝統的なスカーフ

「ケフィエ」をまとって壇上へ。パレスチナとの連帯を示しました

 

政治家は批判 “偏り”を指摘

   こういった、多くのパレスチナへの連帯、また ガザでの停戦を訴えるスピーチは、会場では

大きな拍手を持って 肯定的な雰囲気とともに受け入れられていました。しかし 一歩 会場の外へ

出ると、“反ユダヤ主義的である” として 特に 政治家からの強い批判を受ける事態に。

 

 ベルリン市長のカイ・ウェグナーは X(Twitter)で「 昨日ベルリン国際映画祭で起こったことは

耐え難い相対化を形成するものだ 」「 ベルリンに 反ユダヤ主義の居場所は存在しない。それは

アーティストたちにとっても同様である 」として、運営側への対処を求めました。

 また続く投稿では、「 ベルリンには 自由にして明確な立場がある。ベルリンは イスラエルの味方

であることは間違いない 」として、現在のイスラエルとガザ地区の苦しみは 全てハマスに責任がある

とはっきり述べました。

 

   さらに 独クリスティアン・ホフマン政治報道官は 26日に記者団へ向け、「 10月7日のハマス

によるテロ攻撃について言及されなかったことは容認できない 」とスピーチの“偏り”を指摘。

オラフ・ショルツ首相は「 このような一方的な態度は許容されていないということに同意する 」

との立場を取っていると代弁しました。

 

映画祭運営者の対応は

 このほかにも 多くの政治家から批判され、映画祭側のコメントが期待される中、パノラマ部門の

公式 Instagramアカウントを何者かが乗っ取り、親パレスチナ的な投稿をするという事件が発生。

  「Free Palestine - From the River to the Sea(パレスチナを解放しろ)」との言葉や、

ハッシュタグ「#ceasefirenow(停戦しろ)」とともに、同映画祭の公式ロゴが確認できる

テキスト画像が投稿されたのち、すぐに削除されました。

   事態を重く見た同映画祭は、公式サイト上で発表した声明の冒頭で、「 映画祭のロゴとともに

中東で起こっている戦争に関する反ユダヤ的なテキスト画像が投稿された 」として「 これらの声明は

映画祭が発信したものでも、映画祭の立場を表すものでもありません 」として強く非難。

事態は 調査中として 対象人物は不明ながら刑事告発し、州警察は捜査を開始したと発表しました。

 

 続いて、議論を呼んでいる授賞式についても言及し、「 時に 一方的でもある活動家的発言は、

受賞者個人による意見の表明です。決して 映画祭の立場を反映するものではありません 」と明確に

しました。

  続けて 現ベルリン国際映画祭 エクゼクティヴ・ディレクター の1人であるマリエット・リッセンベーグによる

「 一部の受賞者の発言が、あまりにも 一方的で場合によっては不適切と捉えられたことへの憤りは

理解している 」との見解も掲載。映画祭としては ハマスの攻撃を非難し、イスラエルとガザ、双方の

犠牲者への弔意を表明してきたと主張し、「 一方的なスタンスを共有しない 」との立場を明確に

してきたと述べています。

 

 一方で、同映画祭は「 文化や国を超えた開かれた対話の場 」であるとし、差別や法に触れるような

ことがない限り「 私たちの意見と相反する発言も許容しなければならない 」としました。

もし 受賞者たちのスピーチが差別的なものであれば 不適切と判断しただろうと述べつつ、

「 個々の発言が 反ユダヤ的、反パレスチナ的とは捉えられないようにしたい 」とあらゆる意見を

交換しながら この主題に向き合っていきたいとの姿勢を示しました。

 

 しかし 今度は これら同映画祭の発言について、別の角度からの批判が集中。

特に 乗っ取られた Instagramアカウントへ投稿された 停戦を求める内容が「反ユダヤ的」と

見なされたことへ 落胆を示す声が多く投稿されています。「 これらの投稿がユダヤ人への憎悪に

突き動かされて行われていると断定するのは ショッキングを通り越している 」「 臆病だし哀れでも

ある。現在進行中の大虐殺に反対する映画作家たちのため、声を大にして立ち上がることもできない

とすれば、ベルリン国際映画祭の存在意義とは何なのだろうか? 」などの声が寄せられています。