NHKがCIA秘密工作番組報道 「第二のCIA」NEDにも焦点を!(遠藤誉) 

   遠藤誉 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

        2024.2.27   - エキスパート - Yahoo!ニュース

 

  2月26日夜10時、NHKが CIA秘密工作に関する番組を特集した。 ようやく明るみに出始めたか

と深い感動を覚えた。しかし 1983年からは CIAが担ってきた「民主」の名において親米的でない

政府を転覆させる仕事は、「 第二のCIA 」と称せられる NED(全米民主主義基金)によって遂行

されるようになっていることには触れていない。

 

 CIAに関して、ここまで 素晴らしい番組を制作するNHKが、なぜ  ウクライナ や 香港 あるいは

台湾で 同様のことを NEDが仕掛け、こんにちの状態にまで持ってきているのかを 直視しない

のだろうか

 

◆CIA 世界を変えた秘密工作

 2月26日の夜10時から NHKは「 映像の世紀 バタフライエフェクト 」のシリーズで

「CIA 世界を変えた秘密工作」という番組を報道した。リンク先には 以下のような説明がある。

 

 ―― アメリカ大統領直轄の情報機関「CIA」は、戦後のアメリカ外交を陰で支えてきた。

    世界の民主化支援という大義の下、極秘に 他国へ工作員を派遣、秘密工作を仕掛けてきた。

    戦後まもないイランでは、巧みな世論操作で 政権を転覆させ、莫大な石油利権をアメリカに

   もたらした。冷戦の時代、ソ連の衛星国ハンガリーでは、ラジオを使って反体制運動をあおった

   南米チリでは、社会主義政権を 親米政権に転換させたクーデターに関与した

                                                                        (リンク先の説明は以上)

 

 アメリカの国家安全保障アーカイブが 39年間にわたり収集した資料を基に、機密解除された

チリの政府転覆計画と実行プロセスに関する詳細な分析は 圧巻だった。イランやソ連の衛星国に

関しても、CIAは「 選挙 」という手段で 親米的でない政府転覆を狙い、対米従属的な傀儡政権を

創り出しては、各地域が 本来持っていた秩序を破壊し、平和を乱し、紛争を起こしてきた。

 CIAが、あまりに 他国の内政に干渉し過ぎるので、政府の機関としては 国際法違反になる

ということもあり、レーガン政権時代の1983年に、民間非営利団体としてNED(National Endowment 

for Democracy)(全米民主主義基金)を創設した。

 

◆「第二のCIA」NED

 なぜ NEDを「 第二のCIA 」と称するかと言うと、拙著『 習近平が狙う「米一極から多極化へ」 

台湾有事を創り出すのは CIAだ!』のp.241に書いたように、NEDの共同創設者の一人である

アレン・ワインスタイン氏が 1991年にワシントンポストの取材を受けたときに「 私たちが 現在

行っていることの多くは、CIAが 25年前から秘密裡に行ってきたことです 」と述べたからだ。

それ以来、NEDは「 第二のCIA 」と呼ばれるようになった。

 

 この「 第二のCIA 」であるNEDが創設以来、「 民主の衣 」を着て 各国の選挙に干渉したり、

カラー革命などを起こしたりしてきた 一覧表を手作業で作成し、同じく 拙著の図表6‐8に掲載した

ので、それを以下に示す。データは 主としてNEDのウェブサイトに基づいた。

 

 

 

NEDのウェブサイトなどに基づき筆者作成(拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのCIAだ!』より抜粋)
NEDのウェブサイトなどに基づき筆者作成(拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのCIAだ!』より抜粋)

 

 

 この一覧表をご覧になれば、「 民主の衣 」を着て、世界中に 紛争を引き起こしてきたのは

NEDであることが 一目瞭然のはずだ。

 

◆ウクライナ戦争を引き起こしたのも、台湾有事を創り出すのも NED

 もう、何度も何度も書いてきたので、くり返すのも心苦しいが、NEDの年次報告書に基づいて

書いた「 証拠 」を、もう一度列挙する。

 

 ●2023年10月4日のコラム

<ウクライナ危機を生んだのは誰か? 露ウに民主化運動を仕掛け続けた全米民主主義基金NED PartⅠ>

 ●2023年10月9日のコラム

<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartⅡ2000-2008 台湾有事を招くNEDの正体を知るために>

 ●2023年11月29日のコラム

<ウクライナ危機を生んだのは誰か? PartⅢ 2009-2015 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>

 ●2023年12月4日のコラム

<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartⅣ 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>

 

などがある。

 

 ウクライナ戦争は 2013年末から2014年初頭にかけて、NEDが起こしたマイダン革命によって

親露政権を転覆させ、親米政権を強引に樹立させたことが 遠因になっているのは、今では知らない人

はいないだろう。

 そのために プーチン大統領は クリミア半島を合併した。

 しかし NHKは「 クリミア半島 」は、「 ロシアが一方的に合併したクリミア半島 」という形で、

接頭語「 ロシアが一方的に合併した 」を付けた名称でないと、「クリミア半島」という言葉を

口にしてはならないという規則でもあるかのように、NEDの正当性(=他国の選挙に干渉して親米的

でない政府を転覆させ、戦争ビジネスで儲ける正当性)を 日本全国民に刷り込んでいく。

そこには「 アメリカ・ネオコンの許可なくして、真実を語ってはならなない 」という規制がある

ようで、怖い。

 (但し、プーチンが ウクライナ侵攻をしたのは許せないということは大前提だ。)

 

  『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのは CIAだ!』の【終章 

「アメリカ脳」から脱出しないと 日本は戦争に巻き込まれる】 で書いたように、日本人は 自分が

アメリカ脳化されていることに気が付かないほどまでに 洗脳されてしまって、「 真実を語っては

ならない 」という「言語統制」を受けているように思う時がある。

 

 昨夜の CIAに関する、このように素晴らしい番組を制作できる視点を持っているNHKであるならば、

必ず NEDの真実を見抜いているスタッフはいるはずだ。

 39年間蓄積してからでないと報道できないとなると、筆者などは とっくの間に この世にいない。

多くの日本人も「台湾有事」により 命を失っているかもしれない。

 CIAの悪行に踏み込むことができたNHKが、NEDの真相に踏み込めないはずがないと思いたい。

一日も早く NEDの真相をも直視し、戦争ビジネスが跋扈しない世の中に 一歩でも近づいてくれる

ことを祈ってやまない。