マイナンバー 政官財の癒着/受注4社が自民党に献金5.8億 

                  2023年7月13日   赤旗

 マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次いでいますが、制度設計段階からかかわり、

マイナンバー事業を受注してきた企業が 2014年から21年までの8年間で、自民党の政治資金団体

「国民政治協会」に 計5億8000万円もの献金をしていたことが本紙の調べで分かりました。



表

 14年3月、マイナンバー制度の中核システム

「情報提供ネットワークシステム」を内閣府から

123億1200万円で受注した5社連合のうち、

献金していたのは、NTTコミュニケーションズを除く

4社。マイナンバーカードの誤発行が続いている

富士通はじめ、日立製作所、NEC、NTTデータの

4社です。(表参照)

 同システムは 一般競争入札にかけられたものの、

参加したのは 5社連合のみ。日本共産党の池内さおり

衆院議員(当時)の調べでは、予定価格に対する契約額

の割合は 99・98%で、予定価格が事前に漏れた可能性が指摘されました。

 5社連合は、14年1月にも、「地方自治情報センター」(現「地方公共団体情報 システム 機構(J―LIS)」)

発注した個人の マイナンバー を作る「番号生成システム」

の設計・開発業務を68億9580万円で受注しました。この入札も 5社連合だけでした。

 J―LIS は、マイナンバーカード発行など事業の中核を担っており、5社は、その後、それぞれ

マイナンバーカード関連の契約を多数受注しています。

 一方、献金した企業には、内閣府や総務省、財務省、経済産業省、国土交通省などの幹部が

多数天下りしています。

 

 マイナンバー制度を強力に推進したのは財界です。個人情報をビジネスに利用するため、その道具

として、健康保険証や介護保険証、年金手帳を兼ねた「社会保障個人カード」の導入を求めるなど

してきました。今、健康保険証の廃止について、大手メディアも “いったん立ち止まれ” といっている

のに、経済同友会の新浪剛史代表幹事は6月28日の会見で“廃止の期日を守れ”と岸田首相に要求

しています。

 財界が要望し、その加盟企業が自民党に巨額献金し、事業規模1兆円ともいわれる巨額事業を

官僚が天下りした企業が受注する―。マイナンバー制度を巡る政官財癒着の構図が問われています。

 

図

 

 

 

マイナ受注5社献金/自民資金団体に9年で7億円/関連事業額は1041億円

                 2023年10月9日  赤旗

 「地方公共団体情報システム機構」(J―LIS)から マイナンバー関連事業で巨額発注を受けた

大企業5社が、自民党の政治資金団体「国民政治協会」に2013~21年の9年間に合計7億円

を献金していたことが8日、本紙の調べで分かりました。マイナンバー事業を進めてきた政権党と、

受注企業の癒着の一端が明らかになった形です。(嘉藤敬佑)


J-LISからのマイナンバー関連事業企業別受注額と国民政治協会への献金額
企業名 推計受注額 献金額
TOPPAN 464億円 6300万円
NTTデータ 257億円 3950万円
日本電気 175億円 1億3500万円
日立製作所 94億円 3億3250万円
富士通 51億円 1億3000万円
 ※マイナンバー関連事業の受注額は2013~22年度の合計。共同での受注は契約金額を企業数で割った額
  を集計しています。国民政治協会への献金額は13~21年の合計

 

 本紙の調べによると機構は、2013年度からの10年間でマイナンバー関連事業を少なくとも

313件2810億円超発注しています。うち9割は、大企業8社が共同受注などで独占的に契約

しています。

 自民党が政権復帰をした直後の13年から21年まで9年分の政治資金収支報告書によると、

8社のうち国民政治協会に献金していたのは、NTTデータ、TOPPAN(凸版印刷)、日本電気、

日立製作所、富士通の5社です。(表参照)

 最も献金額が多かったのは日立製作所で、約3億3千万円を献金していました。他方、機構からは

推計94億円のマイナンバー関連事業を受注していました。

 同社は 機構から「 マイナンバーカード・電子証明書の海外継続利用等に関するシステムの設計・

開発に係る業務 」(21年度)を他企業と共同で受注するなど、計68件を受注していました。

 同社の故中西宏明元会長は、18年5月~21年6月まで経団連の会長を務めました。

21年4月には経済財政諮問会議の民間議員の連名でマイナンバー制度の徹底活用を提言しています。

提言では、健康保険証や運転免許証とマイナンバーカードの一体化を早急に進めるよう求めています。自らの企業の仕事につながる提言に名を連ねた形です。

 日立の献金額は13~17年までは2850万円でした。中西氏が経団連会長だった18~20年までは5000万円を献金。同氏が経団連会長を退任した後の21年11月30日には、前年からマイナスとなる4000万円を献金しています。

 本紙の取材に、日立は「 政策本位の政治の実現 」などのため、献金は「 企業の社会的責任の一端

としての重要な社会貢献であると認識 」していると回答しています。

 政策本位の政治のため、なぜ自民党側に巨額献金するのか―同社の回答からは、まったく理由が

分かりません。

 

自民党側への献金は「社会貢献」と回答  マイナ関連事業 受注大企業

   企業・団体献金は本質的にわいろ性を持ちます。企業は営利を追求する存在です。 必然的に

献金は、利益=見返りを求める性格をもたざるをえません。

 

道義的に問題

 「地方公共団体情報システム機構」(J―LIS)は、国と地方公共団体が共同で管理する法人です。

マイナンバーカード関連システムなど各種システムの開発・運営を担っています。国政の影響を強く

受ける団体でもあります。そんな法人から多額の受注を受けている大企業からの献金は、道義的に

みて問題があります。

 2013~21年までに自民党の政治資金団体「国民政治協会」に献金した機構発注のマイナンバー関連事業

を受注した5社のうち、推計の受注額が 最も多いのが TOPPANです。

 

 同社の契約件数は、13年からの10年間で11件にとどまりますが、1契約あたりの額が大きく

なっています。22年度に NTTデータ、DNPデータテクノと共同で受注した「個人番号カード交付

申請書受付・発行及び発行管理業務等」では、計589億円でした。単純計算をすると 1社あたり

196 億円となります。

同社の献金額は、計 6300万円です。本紙の取材に、献金の理由などについて、「 回答は差し控え

ます 」としています。

 NTTグループの NTTデータは機構から108件、推計約 257億円の関連事業を受注していました。

献金は 計3950万円です。

 親企業のNTTは 政府と地方公共団体が株式の32・29%を保有。政治資金規正法は国が資本金

を出している法人の献金を禁じています。同社も コンプライアンスで「 政治資金規正法に則(ノット)

り、政治献金は行っていません 」としています。

 ところが NTTデータをはじめ、関連会社で多額の献金をしています。NTTドコモが 計7600万円、

NTT都市開発は 計1550万円 ― などとなっています。

 NTTデータは 取材に「寄付は企業の社会的責任の一端としての社会貢献を意識」としています。

自民党側への献金が「社会貢献」だというのです。

 

本音が浮かぶ

 このほか、日本電気は 推計 約175億円の関連事業を受注する一方で、計 1億3500万円を献金

しています。同社は取材に「 政策本位の政治を実現するために応分の負担をすることは必要との考え

から 」献金をしていると回答。

 富士通は 推計 約51億円の関連事業を受注。献金額は 計1億3000万円です。取材に

「 日本経済の健全な発展や成長に向けた政策推進に貢献するため 」献金していると返事をしました。

 これらの大企業は マイナンバー関連事業だけでなく、各省庁からIT関連をはじめ、さまざまな

事業を受注しています。マイナンバー制度をはじめ 岸田文雄政権の「政策」とは大企業本位そのもの

です。その政策を“推進”するため献金する―そんな大企業側の本音が浮かんできます。