カメムシ: カメムシ亜目に属する昆虫の総称。
あるいは、この内 水生種(水生カメムシ類)、グンバイムシ(日本では約70種)、トコジラミ
などを除いた陸生種の総称。後者では、日本に 1000種以上いる。
2022年9月22日 日本経済新聞
秋の収穫期を迎えている国内で、イネの養分や果汁を吸うなど 農作物に被害を及ぼすカメムシ
が近年大量発生している。今年も 8月末までの農林水産省の集計で、延べ35都道府県が農家向け
の「カメムシ注意報」を出した。専門家は 地球温暖化が背景にあるとして、今後もこの傾向が続く
可能性が高いと指摘する。
「 今年の被害は これまでで最もひどい 」。川崎市で ナシを生産する農家、川名徹さん(47)は、
カメムシに果汁を吸われて 凸凹ができたナシを手に、ため息をついた。「 気候変動で気温が上がり、
カメムシなどの病害虫が増えた 」と実感しているという。
カメムシ注意報は
① イネの養分を吸ってコメを変色させる「 斑点米 カメムシ類 」 ② 果汁などを吸う「 果樹 カメムシ類 」
―― などに分けて出る。
農水省によると、今年の注意報は 5月24日に 香川県が 果樹カメムシ類で発表したのが最初だった。
過去10年の中で 特に多いわけではないが、8月末までに、果樹カメムシ類の注意報は 24都府県、
斑点米カメムシ類は 18道府県が発表、7府県は 両注意報を出した。
このほか、ダイズを狙う「吸実性 カメムシ類」の注意報を 山口県が発表。この10年で 最多の個体数が
確認された地域もある。
斑点米カメムシ類の注意報を 8月に出した福岡県が 5~8月、5カ所で行った光を使ったおびき寄せ
調査では、ミナミアオカメムシが 1083匹と平年の約6倍だった。
強烈な臭いを出すことで知られるカメムシ。昆虫関連の学会などで構成する日本昆虫科学連合の
元代表で、50年以上 カメムシを研究する藤崎憲治・京都大名誉教授によると、
日本には 千種類以上のカメムシが生息し、うち農作物に被害をもたらすのは 100種を超える。
近年 増加しており、「温暖化などが原因」とみている。
「 イネ、野菜、果物、何でも対象のミナミアオカメムシは アフリカ原産だったが、温暖化の影響も
あって世界中に広がった 」。藤崎名誉教授が 日本の季節で最も大きい影響として指摘するのが冬だ。
南方由来のカメムシは、高温化で 冬を生き延びる個体が増えたという。
※ ナミアオカメムシ: 体長は12~ 16mm程度。主要発生地は、本州、四国、九州
さらに、年間を通じて温暖化したことで
① 春以降の活動が活発になる ② 繁殖開始時期が早くなる ―― などの要素が重なっていると
藤崎名誉教授。「 出荷できない農作物が増え、農家には死活問題だ。カメムシが嫌う黄色の蛍光灯
や防虫網、農薬散布などを組み合わせて対策を講じる必要がある 」と話している。〔共同〕
都市部でカメムシ大量発生 背景は? 部屋に入った場合の対処法 ...
2023年9月29日 NHK
・・・
カメムシを専門に研究する伊丹市昆虫館の長島聖大 学芸員に聞きました。
長島さんは「 きちんとしたバックデータがあるわけではない 」と断ったうえで、ひとつの
仮説を示してくれました。
今回、都市部で見られているのは、全身が緑色の「ツヤアオカメムシ」。
夏の間は 山で 杉やヒノキなどの実を食べて幼虫から成虫になり、秋になると エサを求めて、
あちこちに移動します。
▼ ことしは エサが豊富にあったたため、そもそも 成虫に育った個体が多く、その成虫が
あちこちに移動するなかのひとつに 都市部があった。
▼ 都市部には 明かりが多く、カメムシも 明かりに集まる習性があるため、人の目に
つきやすくなった、というのです。
伊丹市昆虫館 長島聖大 学芸員
「 山の中で 少なくとも エサが多かったのは間違いないだろうなとは思います。夏の間に
山で増えたものが 市街地にむけて 一直線にいくのではなくて、いろんなところに飛び散る。
その移動中のものを見ているようなかたちで、光に集まる性質が強いので目立つのだと
思います。ことしは すごく多くて、大阪の街まで とんでいくというのは 私も驚くほどの
長距離移動です 」
ネオニコチド系農薬の問題の概要- 一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト
ネオニコチノイド系殺虫剤の水田での利用
イミダクロプリドは イネの重要害虫に卓効を示し、 育苗箱処理剤という新しい農薬施用法
が開発されま した。現在では 他の系統の薬剤や殺菌剤との混合剤 も使用され、日本の
移植水稲栽培において 水田での農薬散布が大幅に軽減されています。
冒頭で述べた「斑点米カメムシ防除」にも触れておきましょう。水稲が出穂し実り始める
と、周辺に生息していた吸汁性のカメムシ類が水田に侵入して、もみから吸汁します。
吸汁痕は変色して斑点米となり、米の等級に影響します。収穫した玄米中の斑点米の数が
0.1%を超えると 1等米でなくなって価格が下ってしまい、場合によっては、不稔等により
収量にも影響を及ぼすことから、水稲の出穂期以降に殺虫剤を散布するようになりました。
斑点米カメムシ防除の難しさは、 カメムシ類が水田で増えるのではなく、周辺から侵入
してくる点にあります。ネオニコチノイド系殺虫剤はカメムシに対して優れた効果をもつ
から、斑点米カメムシの防除に広く利用されています。
- カメムシ
- ホソハリカメムシ(水稲) 9~ 11mm程度。主要発生地は関東以西
- クモヘリカメムシ(水稲) 15~17mm程度。発生地は西日本全域から関東・南東北の太平洋側
- シラホシカメムシ(水稲) トゲシラホシー:4.5~ 7mm程度。主要発生地は、本州、四国、九州 オオトゲシラホシー:5~ 7mm程度。主要発生地は、北海道、東北、北関東、北陸
- ツヤアオカメムシ(果樹)
- チャバネアオカメムシ(果樹)
- アカヒゲホソミドリカスミカメ(イネ科) 5~ 6mm程度。 主要発生地域は、青森県、秋田県、山形県、新潟県など北日本の日本海側から北陸地域
〇 カメムシ目 あるいは半翅目(ハンシモク) Hemiptera
:口が針状になっているのが特徴。