ドイツ緑の党、支持率急落で気候保護法を緩和

   熊谷徹のヨーロッパSDGリポート  【10】:朝日新聞SDGs ACTION!

                                2023.11.03    

 地球温暖化対策を重視しているはずのドイツのショルツ政権が、今年9月、気候保護法を緩和し、

部門別の削減目標の廃止を含む改正案を連邦議会に提出した。環境保護団体からは、強い抗議の声

が上がっている。この背景には、環境保護を最優先にする緑の党の路線への、市民の不満感の

高まりがある。

 

        目次

  気候保護法の部門別目標を廃止

  経済界寄りの政党FDPのゴリ押しが通った

  緑の党の譲歩の背景に、支持率急落

  ネオナチに近い政党が支持率で第2位に

  急落の引き金は、暖房改革をめぐる混乱

  景気悪化の時代に環境保護を貫徹することの難しさ

 

気候保護法の部門別目標を廃止

  9月22日、ボートに乗った環境保護団体グリーンピースの活動家たちは、連邦議会議事堂に近い

シュプレー川の岸壁に、白いペンキで「気候保護法(Klimaschutzgesetz)」と大きく書いた。

気候保護法という言葉は 斜めに書かれているので、右端から徐々に水没しているかのように見える。

彼らは このパフォーマンスによって、「気候保護法が骨抜きにされ、実効性のないものになる」

というメッセージを発したのだ。

  グリーンピースが批判しているのは、オラフ・ショルツ政権が この日連邦議会に提出した、

気候保護法(KSG)の改正案である。KSGは、2019年12月18日に施行された。KSGにより

ドイツ政府は、2030年の温室効果ガス(GHG)排出量を 1990年比で少なくとも65%減らすことを

義務付けられている。さらに 政府は 2040年までにGHG排出量を1990年比で少なくとも88%減らし、

2045年までに カーボンニュートラルを達成しなくてはならない。いわば、ドイツの地球温暖化対策

・気候変動対策の根幹をなす法律だ。

   グリーンピースが抗議した理由は、ショルツ政権が KSGの部門別削減目標の廃止に踏み切った

からである。 現行のKSGでは、削減目標が 部門別に定められている。同法は、エネルギー、製造業、

交通、建物(暖房)、農業、廃棄物の6部門について、GHG排出量の上限値を設定している。

エネルギーと製造業、廃棄物については 経済気候保護大臣、交通については 交通大臣、建物(暖房)

については 建設大臣、農業については 農業大臣に目標達成の責任を負わせている。

   目標を達成できなかった場合、担当大臣は「緊急対策プログラム」を策定して、いつまでに目標を

達成できるかを公表しなくてはならない。

 

   KSG改正案によると、ショルツ政権は、部門別の削減目標を廃止し、GHG排出量の全体量によって

目標の達成・未達成を判定することを決めた。たとえば 2030年に交通部門からの排出量が目標値を

超えても、エネルギー部門の実際の排出量が 目標値よりも大幅に低ければ、交通部門の超過分は

相殺され、総量では「目標達成」ということになる。

   2022年は、その例だ。ドイツ連邦環境局(UBA)によると、2022年の交通部門からのGHG排出量

は 約1億4800万tで、KSGが定める2022年の目標値(1億3900万t)を6.5%上回った。2022年の

建物(暖房)部門からのGHG排出量は 約1億1200万tで、KSGが定める2022年の目標値(1億800万t)

を3.7%上回った。この2部門は「不合格」である。

   しかし エネルギー部門を初めとして、その他の全ての部門は GHG排出量が KSGの目標値よりも

低かったため、2022年の全部門のGHG排出量合計は 約7億4600万tで、2022年の目標値7億5600万t

よりも1.3%少なかった。つまり ドイツは 総量では 2022年の目標を達成したわけである。

 

経済界寄りの政党FDPのゴリ押しが通った

   部門別目標の廃止は、三党連立政権の一党である 自由民主党(FDP)が要求したものだ。

FDPの支持基盤は、企業経営者である。同党は 三党の中で、自動車産業など、産業界と最も太い

パイプを持っている。同党は、「 前のメルケル政権が 2019年に導入した部門別目標は柔軟性に

欠け、社会主義国の計画経済のようだ 」として、部門別目標から総量目標に切り替えることを

要求してきた。

   この政党は、自動車業界にとって都合の良い政策を要求してきた。たとえば ドイツの高速道路

(アウトバーン)には、速度制限がない区間がある。そうした区間では、時速200kmでも300km

でも走ることが許されている。緑の党は、ガソリンやディーゼル用の軽油の消費量を減らし、

GHG排出量を減らすために、高速道路の全区間に 130kmの速度制限を導入することを要求してきた。

   しかし FDPは 頑として速度制限に反対し、2021年12月に調印された連立契約書には、速度制限

は盛り込まれなかった。FDPのクリスティアン・リントナー党首は、自動車の愛好家で、ポルシェの

スポーツカーを持っている。

   今年3月に EU(欧州連合)エネルギー担当閣僚理事会が「 2035年以降、ガソリンまたは

ディーゼルエンジンを使う車の新車販売を禁止する 」という合意を発表した時に、

「 ただし合成燃料(Eフュエル)だけを使う新車については、この禁止措置から除外される 」

という例外措置を盛り込ませたのも、FDPの強い要求によるものだった。

 

   今回 FDPが 部門別目標の廃止に固執した理由は、同党のフォルカー・ヴィッシング交通大臣が

担当する交通部門からのGHG排出量の削減が遅れているからだ。交通部門のGHG排出量の削減が

遅々として進まない理由の一つは、EVの充電インフラ構築の遅れや価格の高さなどにより、ドイツ

のEVの普及率が 2023年8月の時点で 全乗用車の約2.4%(約117万台)にとどまっていることだ。

  ドイツ政府は 2030年までに1500万台のEVを普及させるという目標を掲げているが、実現は

望み薄だ。FDPは「 交通部門は いつも目標を達成できない 」と批判されることを避けるために、

部門別目標の廃止を要求してきた。

 

   これに対し、褐炭火力発電所や石炭火力発電所の廃止によって、KSGの目標を達成してきた

電力業界は、部門別目標の廃止を強く批判した。前のメルケル政権は 脱石炭を2038年までに実現

するという目標を掲げてきたが、一部の電力会社は、脱石炭を2030年に前倒しすることにすでに

合意した。交通部門に比べると、この国の電力業界は、「脱炭素化」においては優等生的な役割を

果たしている。

   このため電力業界は、部門別目標の廃止に強い不満を表明している。ドイツ 連邦エネルギー 水道事業

連合会(BDEW)のケアスティン・アンドレー専務理事は、「 エネルギー業界が GHG排出量を

着々と減らしてきたのに、交通部門では 遅れが目立つ。しかし 気候保護を達成するには、一部の

部門だけではなく、全ての部門が それぞれ目標を達成することが不可欠だ。エネルギー業界が、

自動車業界の脱炭素化の遅れを相殺するのは不公平である。その意味で 部門別目標の廃止は、

間違っている 」と法改正に反対した。

 BDEWは、「 部門別目標が廃止されると、交通部門や建物部門へのプレッシャーが減り、これらの

部門で GHG削減努力が弱まる恐れがある 」と考えているのだ。

 

緑の党の譲歩の背景に、支持率急落

   KSGの緩和は、環境保護政党・緑の党が産業界寄りの政党FDPに譲歩したことを意味する。

緑の党にとっては敗北である。グリーンピースは 9月22日に発表した声明の中で、「 KSGの緩和は、

GHG削減努力を後退させるだろう。緑の党は『気候保護目標を達成する』という公約を実現できない。

同党は、様々な政策論争で他の党に譲歩して、自党の主張を曲げることが増えている 」と批判した。

  緑の党が 気候保護政策で譲歩した理由の一つは、環境保護を最優先にする同党の政策への市民の

風当たりが 最近強くなっているからだ。その傾向は、ここ 1年間の政党支持率の推移に はっきり

表れている。

  アレンスバッハ人口動態研究所が 毎月公表している支持率調査によると、緑の党への支持率は

2022年9月には 19%だったが、今年9月には 5ポイント低下して 14%になった。三党連立政権を

構成する社会民主党(SPD)も 2ポイント支持率が下がった。連立与党を構成する三党の中で、

緑の党の支持率の落ち込み方が一番大きい。

  逆に 右翼政党・ドイツのための選択肢(AfD)への支持率は、同期間に 6ポイント増え、

ショルツ首相が率いるSPDを追い抜き、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)に次ぐ 第二党に

なった。旧東ドイツでは、AfDへの支持率は トップの座にある。

 

ネオナチに近い政党が支持率で第2位に

   緑の党の凋落と対照的に、AfDは 上昇気流に乗っている。今年 6月25日に旧東ドイツ・

テューリンゲン州のゾンネベルク郡で行われた選挙で、有権者は AfDの党員を郡長に選んだ。

AfDの党員が 地方自治体の首長に選ばれたのは 初めてである。

   AfDは ドイツが ユーロ圏やEUから脱退することを提案している。同党の一部の幹部は、演説中に

ナチス・ドイツが好んで使った スローガンを使用したり、全ての難民を犯罪者と同列視したりする。

AfDのテューリンゲン州支部は、連邦憲法擁護庁から 「極右団体」として監視されている。

   ドイツの政府、経済界、学界、メディアは 宗教界、NGOなどは 第2二次世界大戦後、特に

1980年代以降、虐殺関与者の刑事訴追、歴史教育、啓蒙活動などによって、ナチス・ドイツの問題

と批判的に取り組んできた。 長い間、こうした姿勢は ドイツのナショナル・アイデンティティと

なってきた。それにもかかわらず、今日 AfDのような党を支持する有権者が増えているのは、

不気味である。

    この投票行動には、「抗議票」の意味合いが強い。ある世論調査によると、AfD支持者の過半数が、

「 私は AfDの政策が優れていると思って この党を選んでいるのではなく、現政権に対して抗議する

ために、AfDに票を投じている 」と答えた。つまり 多くの有権者は、AfDに票を投じることで、

ショルツ政権への不満を表明しているのだ。

   今年の上半期に ドイツでは、シリアなどからの 亡命申請者の数が 去年の同時期に比べて

約60%多くなっている。難民増加に対する 市民の懸念は、難民排斥を主張するAfDにとって追い風

になる。 AfDの躍進には、1930年代に議会制民主主義の仕組みを利用して 権力の座に就き、

議会制民主主義を廃止した暴力集団ナチスの姿が二重写しになる。ドイツの政界やメディアも、

AfDの躍進を食い止める 有効な処方箋を打ち出せないでいる。

 

経済界寄りの政党FDPのゴリ押しが通った

   部門別目標の廃止は、三党連立政権の一党である 自由民主党(FDP)が要求したものだ。

FDPの支持基盤は、企業経営者である。同党は 三党の中で、自動車産業など、産業界と最も太い

パイプを持っている。同党は、「 前のメルケル政権が 2019年に導入した部門別目標は柔軟性に

欠け、社会主義国の計画経済のようだ 」として、部門別目標から総量目標に切り替えることを要求

してきた。

   この政党は、自動車業界にとって都合の良い政策を要求してきた。たとえば ドイツの高速道路

(アウトバーン)には、速度制限がない区間がある。そうした区間では、時速200kmでも300km

でも走ることが許されている。緑の党は、ガソリンやディーゼル用の軽油の消費量を減らし、

GHG排出量を減らすために、高速道路の全区間に130kmの速度制限を導入することを要求してきた。

  しかし FDPは頑として速度制限に反対し、2021年12月に調印された連立契約書には、速度制限は

盛り込まれなかった。FDPのクリスティアン・リントナー党首は、自動車の愛好家で、ポルシェの

スポーツカーを持っている。

   今年3月にEU(欧州連合)エネルギー担当閣僚理事会が「 2035年以降、ガソリンまたは

ディーゼルエンジンを使う車の新車販売を禁止する 」という合意を発表した時に、「 ただし

合成燃料(Eフュエル)だけを使う新車については、この禁止措置から除外される 」という

例外措置を盛り込ませたのも、FDPの強い要求によるものだった。

  今回 FDPが 部門別目標の廃止に固執した理由は、同党のフォルカー・ヴィッシング交通大臣が

担当する交通部門からのGHG排出量の削減が遅れているからだ。交通部門のGHG排出量の削減が

遅々として進まない理由の一つは、EVの充電インフラ構築の遅れや価格の高さなどにより、ドイツ

のEVの普及率が2023年8月の時点で全乗用車の約2.4%(約117万台)にとどまっていることだ。

   ドイツ政府は 2030年までに 1500万台のEVを普及させるという目標を掲げているが、実現は

望み薄だ。FDPは「 交通部門はいつも目標を達成できない 」と批判されることを避けるために、

部門別目標の廃止を要求してきた。

   これに対し、褐炭火力発電所や石炭火力発電所の廃止によって、KSGの目標を達成してきた電力業界

は、部門別目標の廃止を強く批判した。前のメルケル政権は 脱石炭を2038年までに実現するという

目標を掲げてきたが、一部の電力会社は、脱石炭を2030年に前倒しすることにすでに合意した。

交通部門に比べると、この国の電力業界は、「脱炭素化」においては優等生的な役割を果たしている。

    このため 電力業界は、部門別目標の廃止に強い不満を表明している。ドイツ 連邦 エネルギー 水道事業

連合会(BDEW)のケアスティン・アンドレー専務理事は、「 エネルギー業界が GHG排出量を

着々と減らしてきたのに、交通部門では遅れが目立つ。しかし気候保護を達成するには、一部の

部門だけではなく、全ての部門が それぞれ目標を達成することが不可欠だ。エネルギー業界が、

自動車業界の脱炭素化の遅れを相殺するのは不公平である。その意味で部門別目標の廃止は、

間違っている 」と法改正に反対した。

   BDEWは、「 部門別目標が廃止されると、交通部門や建物部門へのプレッシャーが減り、これらの

部門でGHG削減努力が弱まる恐れがある 」と考えているのだ。

 

緑の党の譲歩の背景に、支持率急落

    KSGの緩和は、環境保護政党・緑の党が産業界寄りの政党FDPに譲歩したことを意味する。

緑の党にとっては 敗北である。グリーンピースは 9月22日に発表した声明の中で、「 KSGの緩和は、

GHG削減努力を後退させるだろう。緑の党は『気候保護目標を達成する』という公約を実現できない。

同党は、様々な政策論争で他の党に譲歩して、自党の主張を曲げることが増えている 」と批判した。

   緑の党が 気候保護政策で譲歩した理由の一つは、環境保護を最優先にする同党の政策への市民の

風当たりが最近強くなっているからだ。その傾向は、ここ 1年間の政党支持率の推移にはっきり

表れている。

 アレンスバッハ人口動態研究所が 毎月公表している支持率調査によると、緑の党への支持率は

2022年9月には19%だったが、今年9月には 5ポイント低下して 14%になった。三党連立政権を

構成する社会民主党(SPD)も 2ポイント支持率が下がった。連立与党を構成する三党の中で、

緑の党の支持率の落ち込み方が一番大きい。

   逆に右翼政党・ドイツのための選択肢(AfD)への支持率は、同期間に 6ポイント増え、ショルツ首相

が率いるSPDを追い抜き、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)に次ぐ第二党になった。

旧東ドイツでは、AfDへの支持率はトップの座にある。

 

ネオナチに近い政党が支持率で第2位に

 緑の党の凋落と対照的に、AfDは 上昇気流に乗っている。今年 6月25日に旧東 ドイツ・テューリンゲン 州

のゾンネベルク郡で行われた選挙で、有権者は AfDの党員を郡長に選んだ。AfDの党員が地方自治体

の首長に選ばれたのは初めてである。

 AfDは ドイツが ユーロ圏やEUから脱退することを提案している。同党の一部の幹部は、演説中に

ナチス・ドイツが好んで使ったスローガンを使用したり、全ての難民を犯罪者と同列視したりする。       AfDのテューリンゲン州支部は、連邦憲法擁護庁から「極右団体」として監視されている。

ドイツの政府、経済界、学界、メディアは 宗教界、NGOなどは 第2二次世界大戦後、特に1980年代

以降、虐殺関与者の刑事訴追、歴史教育、啓蒙活動などによって、ナチス・ドイツの問題と批判的に

取り組んできた。長い間、こうした姿勢はドイツのナショナル・アイデンティティとなってきた。

それにもかかわらず、今日 AfDのような党を支持する有権者が増えているのは、不気味である。

   この投票行動には、「抗議票」の意味合いが強い。 ある世論調査によると、AfD支持者の過半数が、

「 私は AfDの政策が優れていると思って この党を選んでいるのではなく、現政権に対して抗議する

ために、AfDに票を投じている 」と答えた。つまり 多くの有権者は、AfDに票を投じることで、

ショルツ政権への不満を表明しているのだ。

   今年の上半期に ドイツでは、シリアなどからの亡命申請者の数が去年の同時期に比べて約60%

多くなっている。難民増加に対する市民の懸念は、難民排斥を主張するAfDにとって追い風になる。

AfDの躍進には、1930年代に議会制民主主義の仕組みを利用して権力の座に就き、議会制民主主義を

廃止した暴力集団ナチスの姿が二重写しになる。ドイツの政界やメディアも、AfDの躍進を食い止める

有効な処方箋を打ち出せないでいる。

 

景気悪化の時代に環境保護を貫徹することの難しさ

  暖房改革をめぐる 緑の党の蹉跌は、GHG削減・パリ協定の目標達成という理想を追求する際に、

  同党が 市民の事情を軽視したことによって、引き起こされた。

  GEG法案をめぐる混乱は、多くの市民に「 緑の党は、法律によって 一部の暖房設備を禁止したり、

  市民の自由を制限したりしようとする政党だ 」という印象を与えた。多くの有権者たちは、

 「 ショルツ政権は、野党が反対するまで、市民の経済的な負担が増えることについても、十分に

  配慮していなかった 」と批判した。

     ある野党議員は、「 AfDへの支持率が増えているのは、緑の党が 自動車、暖房、食生活など

  市民にとって身近なテーマに介入しようとしていることへの反発だ 」と語る。

     緑の党の議員の中には、家畜から出る GHGを減らすために、肉食を控えるべきだと主張する者

  もいる。ドイツは 個人主義が強い国だ。「 緑の党が 私の生活の仕方に干渉するのはご免だ 」と

  考えた人が増えているのだ。

      ドイツ人にも、「 環境保護には 総論としては賛成するが、自分の生活に悪影響を与える場合

  には反対」という人が多いのだ。

     英語で このような態度を NIMBY(not in my backyard)と呼ぶが、この国でも 自宅の近くに

   陸上風力発電設備 や 高圧送電線が建設されることに反対する人が増えている。

 

     ロシアのウクライナ侵攻が引き金となったインフレ と 欧州中央銀行の利上げ、主要貿易相手国

   である中国経済の不調、不動産バブルの崩壊、労働力不足などの影響で、ドイツの国内消費が減り、

   景気は悪化しつつある。

     キール世界経済研究所など ドイツの主要経済研究所が 今年9月に発表した共同予測によると、

   2023年のドイツの国内総生産(GDP)は、前年比で 0.6%減る見通しだ。G7だけでなく、

   ユーロ圏加盟国の間でも マイナス成長が予想されているのは ドイツだけだ。

      連邦労働局によると、今年9月の失業者数も、前年同期に比べて 約14万人増えた。ほぼ20年ぶり

   の深刻な不況は、市民の将来への不安と不満を強め、緑の党の環境保護路線にとって 逆風となる

   だろう。

      今年9月21日 英国のリシ・スナク首相は、「 2030年に予定していた内燃機関の新車の販売禁止

   を、2035年に延期する 」と発表した。この決定には、ドイツの緑の党が 気候保護 や 暖房更新に

   関する政策を緩和させた動きと重なる部分がある。

     緑の党、そして ドイツ政府 や EUの欧州委員会は、右派ポピュリストに率いられて、経済グリーン化

 に反対する市民を どのように説得して、GHG削減を進めていくのだろうか。地球温暖化との戦いは、

   いよいよ難しい局面を迎えつつある。