事件の2年前に「改ざん可能」指摘 2018年に宮城県警の警察官が実証 

「ライトワンス」SDカード、全国の警察で使用継続

                 2024年1月22日  熊本日日新聞社

 殺人事件の捜査で、元宮崎県警幹部が キオクシア(旧東芝メモリ)製SDカード「 ライトワンス

メモリカード 」の証拠を隠蔽したとして告訴された問題で、事件発生の2年前に警察庁主催の

コンクールで 他県警からライトワンスが「改竄可能」と指摘されていたことが 22日、熊本日日新聞

の取材で分かった。 長年 鑑識に携わった警察官が、パソコン上で画像編集できるとの実証結果を

示していたライトワンスは 現在も 熊本を含む全国の警察で広く証拠の撮影・保存に使われている

 

              ※ キオクシア - Wikipedia    本社:東京都港区芝浦

                    主に NAND型フラッシュメモリを製造する半導体メーカー

 

 指摘したのは、宮城県警で 交通鑑識を約30年担当した澁澤敬造さん(62)=東京。2010年に

警察庁が「 極めて卓越した専門技能を持つ 」と認める広域技能指導官に指定され、22年には

長年の功労で 警察庁長官表彰を受けている。

澁澤さんは 18年、宮城県警高速隊の警部補として 警察庁の「警察装備資機材開発改善コンクール」

で ライトワンスの問題点を指摘し、大賞に次ぐ表彰を受けた。

 

 具体的には、17年9月23日に 覆面パトカーと別のパトカーを撮影して、画像データをライトワンス

に書き込んだ。5日後に そのライトワンスから データを読み取ったパソコン上で画像を編集し、

双方のナンバーを入れ替えた車両の画像を 別のライトワンスに保存。 撮影日も 実際より3日前の

「9月20日」に書き換えることができた、との実証結果を示した。

 

 キオクシアは、ライトワンスを「改竄防止機能付き」の書き切り型媒体と紹介。カードに 一度

記録した画像ファイルの上書き(編集、加工)や削除はできないとしている。

しかし、熊日の取材に対し、同社は「 パソコンにコピーして編集したファイルを 新たなライトワンス

に書き込むことができる 」と認めた。一方、警察庁は「 お尋ねの指摘は 確認できなかった 」として

いる。

 

 ライトワンスを巡っては 宮崎市で 20年に起きた殺人事件の公判前整理手続きで、被告に有利な

証拠画像34枚が 改竄で隠蔽された疑いがあるとして、被告側が 昨年11月、証拠隠滅容疑で 当時の

宮崎北署長らを告訴した。警察庁は 同月、47都道府県警のうち44警察(他社製との併用含む)が

ライトワンスを使っている と国会で説明。熊本県警は 18~23年度に購入していることが分かって

いる。(髙宗亮輔)

 

 

 

          

   NAND型フラッシュメモリ

     工学博士である舛岡富士雄が東芝に勤務していた 1980年代に発明したものである。

    東芝の半導体メモリ事業の主力製品は、このNAND型フラッシュメモリ と その応用製品

    (ソリッドステートドライブなど)であった。

    半導体メモリ事業は 直近の2015年(平27)度に、8,456億円の売上で1,100億円の

    営業利益を稼ぎ出し、東芝の主力事業のひとつとなっていた。

     また、スマートフォンの大容量化、データセンターにおけるSSDの普及などを背景に、

    将来性も申し分ない事業であったため、東芝は 2016年3月の段階で、半導体メモリ事業を

    原子力事業と並ぶ「経営の柱」に位置付けていた

     ところが 同年12月、東芝グループの原子力企業 ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー

    が買収した原子力サービス会社CB&I(ストーン&ウェブスター)の資産価値が想定を大きく

    下回ったため、親会社の東芝は、巨額の損失額を会計計上せざるを得ない状況となった

    その結果、何の資本対策もとらない場合、東芝は 2016年度期末決算で大幅な債務超過

    陥り、東京証券取引所第二部に降格する見通しまで示された。

 

     債権者に迷惑をかけることなく 債務超過を解消する方法は、増資(新株の発行)や

    優良資産・事業の売却の二つである。しかし 東芝の場合、2015年に発覚した粉飾決算の

    影響で 東京証券取引所と名古屋証券取引所から「特設注意市場銘柄」に指定されていたため、

    増資による債務超過解消は不可能であった。

     更に、優良子会社東芝メディカルシステムズを 2016年にキヤノンに売却したばかりの

    東芝には、債務超過の解消に 必要な数千億円から数兆円規模の売却益が期待できる事業は、

    1年前に「経営の柱」と位置付けたはずの 半導体メモリ事業しか残されていなかったので

    ある。

     東芝の債務超過を解消するために、2017年(平29)2月10日に東芝メモリ設立。

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