避難者が到着時に小中学校8校で施錠状態、ガラス窓を割って中へ

             …震度5強の富山市 

                                              2024/01/18           読売新聞

    富山県内で最大震度5強を観測した能登半島地震で、住民が 緊急避難場所の小中学校に

避難しようとしたところ、校舎が施錠されたままになっていたケースが 富山市で相次いでいた

ことがわかった。住民が ガラス窓を割って鍵を開け、中に避難した学校もあった。

当時は 津波警報も発令されており、市は迅速な解錠方法を検討している。

                                                                                          (谷侑弥、上田津希乃)

外階段3階に殺到

    市立水橋西部小学校(水橋辻ヶ堂)は 海岸から600メートル離れた場所に位置し、津波の
指定緊急避難場所になっている。地震発生から 約20分後には 富山湾で最大の津波(80cm)
が観測され、その頃、同校には 150人ほどの市民が集まっていた。
    だが、校舎は 施錠されたまま。外の非常階段では 最上部の3階付近に人が殺到していたという。
そこで、避難誘導をしていた押田大祐市議が「 階段で 将棋倒しになる危険もある 」と考え、市の
許可を得た上で 職員室の窓を割って中に入り、校舎の鍵を開けた。
    息子夫婦ら9人で避難した男性(80)は「 津波避難は『とにかく高いところに』というのが
頭にあった。中に入れるまでは ずっと不安だった 」と振り返る。
 

    市防災危機管理課によると、今回の地震で 住民がガラス窓を割って中から鍵を開けた小中学校は

8校あった。鍵を管理しているのは、各地区センターの職員か 学校関係者だが、いずれも校区内に

住んでいるとは限らない。水橋西部小では 地震発生から地区センター所長が到着するまで約50分

もかかっていた。

 

オートロック検討

 こうした遅れを解消するため、全国では 屋上につながる外付け階段の前に 蹴破れるドアを設置

したり、避難所の鍵を 暗証番号で開けられる電気錠に変更したりしている自治体もある。

 高知県四万十市では 2012年、市立竹島小で屋上に避難できる外付け階段を設置。日頃は

階段の入り口を 集合住宅のバルコニーなどに設ける「隔て板」で閉じ、災害時は 蹴破って避難

できるようにした。

   三重県桑名市でも、緊急避難施設の扉に 非常時は壊すことのできる小窓をつけ、鍵を開けられる

ようにしている。両自治体の避難所の学校には、震度5弱以上で 自動的にふたが開いて鍵を取り

出せる箱も設置されている。

   一方、18年に 西日本豪雨の被害を受けた広島県三原市では、学校の体育館や公民館など

市内22か所の鍵を、暗証番号で開けられる電気錠に変更した。地元住民も 市が電話で暗証番号を

伝えることで解錠できる。同市デジタル化戦略課の担当者は「 開閉時間も記録できる。安全を担保

しながら解錠も早くできる 」と言う。

 こうした仕組みは 富山市では導入されておらず、藤井裕久市長は 4日の定例記者会見で、

ガラス窓を割って鍵を開けたケースが相次いだことを認め、「 オートロックなど市側で解錠ができる

システム導入を検討したい 」と語った。