英国最大の冤罪、富士通を糾弾 システム欠陥で数百人汚名

             2024年1月10日    東京新聞 TOKYO Web

【ロンドン共同】富士通の郵便事業者向け会計システムの欠陥により、数百人が 不正会計や横領罪

  で訴追された英史上最大規模の冤罪事件があり、政府内で 富士通を糾弾する声が高まっている。

  補償金の支払いや、政府が結んでいる同社との契約見直しを求める意見が噴出。

  英下院委員会は16日に 富士通幹部を呼び、証言を要請すると決めた。

 英国では、郵便会社とフランチャイズ契約を結んだ民間事業者が地域の窓口業務を請け負っている。 

  ロイター通信によると、1999~2015年に 窓口の現金と会計システム上の残高に齟齬がある

  などとして、事業者らが 刑事訴追された。多額の弁済を強いられて破産したケースや自殺した人も

  いたという。

 

  しかし 19年に 裁判所がシステムの欠陥を認定。一部の有罪判決が覆され、昨年12月までに

  補償金として 総額1億2470万ポンド(約229億3300万円)が支払われた。

  だが 被害者の全面救済には、ほど遠い。

 英国では これまで補償の動きに焦点を当てた報道が中心だったが、BBC放送は 批判の矛先が

富士通に向き始めたと指摘した。

 

      「違法な取り立て」に心折れ、自殺者も

        ...富士通のシステムが招いた巨大「冤罪」事件に英国民の怒りが沸騰

            2024年01月10日        ニューズウィーク日本版

          富士通が提供した 英国のポストオフィス( 郵便事業のうち 窓口業務を引き受ける国有

       非公開会社)の勘定系システム「ホライズンの欠陥が原因で、民間郵便局長ら700人以上が

       「現金を横領した」などの疑いをかけられ冤罪になった事件。

       これについて ロンドン警視庁は 5日、無実の民間郵便局長らから 不足分の資金を 違法に

       取り立てた ポストオフィスの行為が 詐欺罪に当たるかどうか捜査していることを明らかにした。

          ロンドン警視庁の発表は「 偽証罪と偽計業務妨害罪の可能性について捜査中だ。これらの

       犯罪の可能性は ポストオフィスによって行われた 捜査や起訴から生じたものだ。訴追や

       民事訴訟の結果として 民間郵便局長らから回収された資金についても、これらの訴追によって

       もたらされた詐欺罪の可能性を捜査している 」という。

         この事件では 元民間郵便局長が集団訴訟を起こし、2019年12月、ロンドンの高等法院で

       ポストオフィスは 元局長555人に対し 5800万ポンドを支払うことで和解が成立。

       判事は「 富士通社員が提出したホライズンの欠陥に関する証拠の信憑性に重大な懸念がある

      と検察当局に書類を送付し、ロンドン警視庁は 偽証の疑いで 富士通元社員2人を事情聴取して

      いる。

          地位も財産も信用もすべて失った民間郵便局長らが 無実を証明するまでの約23年に及ぶ

  闘いを描いた英民間放送ITVのテレビドラマ『ミスター・ベイツ vsポストオフィス』が

  1月1日から4日連続で放映された。

   これまで動きが鈍かったロンドン警視庁の反応は ドラマの放映で ポストオフィスや富士通

     への批判が 一段と高まることに備えたためだろう。

 

       少なくとも 4人の元民間郵便局長が自殺

      リシ・スナク英首相は 7日、英BBC放送の政治番組で アレックス・チョーク司法相が

    元民間郵便局長らの冤罪を晴らすとともに、ポストオフィスから 公訴権を取り上げることを

    検討しているか と司会者から質問され、「 法的な複雑さがあるのは明らかだが、司法相は

    そのような分野を検討している 」と答えた。

     13年間、民間郵便局長を務めた元クリケット選手マーティン・グリフィス氏は ホライズンの

    端末から現金不足が生じるようになり、不足分計8万ポンドを支払った。

  13年5月、目出し帽をかぶった2人組の強盗に 3万9000ポンドを奪われ、防犯を怠ったとして

    経営権を剥奪された。強奪金の一部負担も求められ、心が折れたグリフィス氏は 自ら命を絶った。

  ・・・

 

     会員一覧 | 経団連について | 一般社団法人 日本経済団体連合会 

 

 

 

  富士通、マイナ誤交付で揺らぐ「IT最大手」の足元 

     システム障害が頻発、大規模組織再編が遠因か

        2023/07/13   東洋経済オンライン 

  国内トップITベンダーとしては、あまりにもお粗末だ。

 富士通グループが提供するマイナンバーカードを利用した証明書交付システムで、別人の証明書

   が交付されるトラブルが 3月以降、全国の自治体で相次いでいる。

   障害を引き起こしたシステムは「Fujitsu MICJET コンビニ交付」。 富士通の100%子会社である

   富士通Japanが 自治体向けに提供しているサービスだ。

     富士通によると、印刷処理管理プログラムなどに不備があったことで、利用者とは別人の

   個人情報が記載された証明書が 横浜市や東京都足立区などで印刷されたという。

 

     デジタル庁の指示の下、5月にはサービスを提供している自治体で利用を停止し、点検を実施した。

   動作確認をしたうえで サービス利用を再開したものの、6月末に 福岡県宗像市で同様の誤交付が

   発生。富士通は 提供先の全自治体に対して サービス利用の停止を要望し、再点検の実施に

   追い込まれた。

     河野太郎デジタル担当大臣は 7月11日の閣議後記者会見で、システムの不具合を修正できて

   いない自治体が 44あると発表しており、いまだ 復旧完了のメドが立ってない状況だ。

   

      競合の大手ITベンダー幹部は「 システム障害の発生はつきものだが、点検後も同じミスを

   繰り返すのは ガバナンス体制がうまく機能していないとしか思えない。 いったい 富士通は

   どうしてしまったのか 」と首をかしげる。

 

    中核子会社が引き起こした致命的ミス

      マイナカードをめぐっては、別人の公金受け取り口座が登録されるなど 行政側の人為的ミスが

   立て続けに露呈し、自治体への自主返納が相次いでいる。

   このコンビニ交付システムでのトラブルも、国民に不信感を与えたきっかけの1つとなった。

   国内最大手のITベンダーである富士通が、日本全体のデジタル化に水を差したとも言える。

 

  「 慎重に設計すれば防げたミスが発端となったうえ、いったん直ったと公表したにもかかわらず

   同じミスを繰り返し、発生から 3カ月以上経った今も火消しできていない。河野大臣からは

   名指しで叱責されるなど、ブランドイメージが大きく傷ついており、情報セキュリティガバナンス

   で考えられる最悪のシナリオをたどっている 」。

     情報システムに詳しい東京都立産業技術大学院大学の奥原雅之教授は、そう切り捨てる。

 

     問題を引き起こした富士通Japanは、富士通グループの中でも中核に位置づけられる存在だ。

   富士通傘下にあったSI(システムインテグレーター)2社を軸にして、2020年に発足した。

   主に 大手企業や通信キャリア、中央官庁向けのシステムを開発している富士通本体とすみ分ける

   ような形で、富士通Japanは 中小企業や自治体などの案件を手がけている。

      2023年3月期の売上高は 5560億円、経常利益は 417億円と、富士通グループ全体の売上高の

   約15%を稼ぎ出している。

  ・・・

 

 

  「みずほ銀行」のシステム障害はなぜ防げなかったのか

   …エンジニアを見下す「悪しき体質」

          2021.09.17  (週刊現代) | マネー現代

  数え切れないほど障害を起こしても、改善の気配がない。ミスや事故にしては多すぎる。

 他の銀行なら起こり得ないことが、なぜ この銀行では起きるのか。序曲は 平成の大再編で、

   すでに聞こえていた。

     19年前の予感

   「 お前らがダメだから、あんなことになったんだよ! 」

     第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が合併し、みずほ銀行が誕生した直後の'02年夏。

 本店の至近距離、銀座の外れにあるクラブで、酔った みずほのシステム担当者が大声をあげた。

   絡まれているのは、接待する富士通のシステムエンジニアだ。勧銀時代から、みずほの勘定系

   (預金・融資・為替の処理と計算を担う銀行の基幹システム)の開発は 富士通が請け負っている。

 

    — お前こそ 底辺のクセに、たかりやがって。

     内心 そう毒づくが、みずほは 大得意先だ。愛想笑いを浮かべるしかない。今夜の会計も こちらが

   出すしかない。

     19年前の この年の春、みずほは 大規模障害を引き起こし、総叩きに遭っていた。

   4月1日に 勧銀、富士銀、興銀の各システムを統合した矢先、ATMが急停止。二重引き落としや

   給与振り込みの遅れ、誤送金が相次いで、トラブルの総数は 250万件にのぼった。

 

   「 こんなアホなことあるかいな。図体ばかり、でかくなって 」

     時の財相・塩川正十郎は、合併初日の失態を叱った。不眠不休で対処にあたるベンダー、

   つまり 富士通や日立の現場エンジニアには 「 とても手に負えない 」と逃げ出す者、過労で

   入院する者が続出した。みずほの行員は 右往左往するばかりだった。

     もっとも、みずほシステム部員の居丈高な態度は、不遇の裏返しでもある。企画部を頂点とする

   銀行のヒエラルキーで、彼らは 最下層にいた。みずほHD発足によって 社員数は 約3万人に

   膨れ上がったが、システム担当者は ごくわずかだ。

 

   「 システムなんて、普通に動いて当たり前。でも トラブルがあれば大減点 」

     それが みずほ内部の常識だから、やる気が出るはずもない。「 利益ゼロのコストセンター 」

   と笑われるストレスを、ベンダーのエンジニアにぶつけている というわけだ。

 

      罵声を浴びながら、富士通のエンジニアは思った。システムはなんとか復旧したが、本当に

   これで終わりなのか。もっと大きな病が、この銀行の奥底には 巣くっているのではないか—。

    その予感は19年後、現実となる。

 

     今年に入り、みずほは 半年間に 6回もの大規模システム障害に見舞われた。

 一昨年、鳴り物入りで本格稼働を始めた新システム「MINORI」が うまく動かないのだ。

   ATMで おカネがおろせない程度ならまだマシで、2月下旬の障害では 通帳やカードが機械に

   吸い込まれたまま戻らず、後日 ぶしつけに 郵送で返却され、顧客を怒らせた。

     8月31日、みずほは 内部調査報告書を金融庁に提出した。中身は 一言で要約できる。

  「原因不明」である。

 

   〈もう、みずほダメじゃん〉

   〈またかよ。何回目だ〉

   〈15年みずほを使っていたけど、これを機に 三井住友に変えました〉

 

   ネット上には そんな言葉が並び、「みずほ離れ」の兆しさえ見える。

  そして 誰もが、薄々気づきはじめた。みずほのシステムには、どこかに根本的かつ致命的な

  不具合が隠れているのではないか。でなければ、これほど トラブルを繰り返すはずがない—と。

  しかし その後 驚くべき現実に直面する。

     その経緯を【後編】「これから「みずほ銀行」に起こる、ヤバすぎる現実…システムの「爆弾」を誰も処理できない」でお伝えする