「能登の大動脈」寸断、陸の孤島に 1本の国道が全ての障害に

               2024/1/8   毎日新聞

 能登半島地震で、被災地は 救助やインフラ復旧の遅れ、不十分な医療や支援物資、孤立状態など、

さまざまな苦境に直面している。 それらの目詰まりの主因は、半島の道路寸断だ。 政府は 道路を

切り開く作戦を急ピッチで展開している。

 本州の中心から北に突き出た能登半島は 山地が大半を占め、そこに集落が点在する。

「 能登の大動脈 」と呼ばれる国道249号は 半島の沿岸を囲むように走り、山肌を縫うように

県道や農道が通っている。

 

   しかし、1日に発生した地震によって 8日午後2時現在、その国道249号は 少なくとも24カ所で

土砂崩れなどによる通行止めが発生。 甚大な被害が出ている石川県輪島市や珠洲(すず)市の市街地

につながる道路は、1本ずつしか確保できていない。

「 陸の孤島 」と化した能登半島で、住民たちは 過酷な生活を強いられている。

 

 四方を山に囲まれた石川県輪島市打越町地区。1日の激しい揺れで 自宅の外に出た区長の谷内

(やち)均さん(66)は、目の前の光景に がくぜんとした。道路脇の木や電柱が次々と倒れ、

県道につながる 約1キロの道があっという間に塞がれていったからだ。

「直径50~60cmの木が 100本近く倒れて、異常な光景だった」。集落にいた26人が孤立した。

 全員で 集落の集会所に身を寄せ、各自宅にあった食料などで夜をしのいだ。しかし、翌日も

電話は使えず、救助を呼べない。4人がかりで チェーンソーで倒木を切って道を切り開いていったが、

とても 県道までは 辿り着けなかった。

 

 半島北部に位置する 輪島市、珠洲市、能登町、穴水町では、同様に孤立した集落が多数発生した。

 交通網の寸断は、救援物資の輸送も 困難にした。

能登半島の幹線道路の状況(8日午前7時現在)拡大
能登半島の幹線道路の状況(8日午前7時現在)

 

 「 水や食料が足りず、地震から 40時間以上たっても 被災者1人にパン1個しか配れていない 」。

珠洲市の泉谷満寿裕(ますひろ)市長は 3日、毎日新聞の取材に窮状を訴えた。

   医療提供にも 大きな影響が出ている。4日から輪島市に入った災害派遣医療チーム(DMAT)

事務局の医師、伊東尚(たかし)さん(43)は、金沢市内から約100キロ離れた拠点の輪島市役所

まで車で 8時間かかった。治療が必要な人を把握して 病院につなげる役割を担うが、道路の損壊で

避難所に 辿り着くことさえ難しい。「 道路状況が悪いので、日のあるうちに活動を終える必要が

あり、医療が行き渡っていない 」

 

 5日早朝。孤立していた谷内さんたちは、倒木をどけて、ようやく人一人が通れる道を通した。

県道にいた消防署員らに 孤立したことを伝えると、自衛隊による食料の支給はあったが、 救助は

来なかった。

 

「 自力で出るには 今しかない 」。谷内さんたちは 同日午前9時ごろ、自ら脱出を開始した。

腰の悪い80代の女性は、脚立を広げて 担架代わりにして 約1キロ先の県道まで運んだ。そこで

偶然通りかかった地元消防団の車に乗り、正午過ぎに避難所にたどり着いた。

「 何とか生き延びることができた。しかし、これからの生活は何も考えられない 」。

谷内さんは 途方に暮れた表情を浮かべた。

 

 石川県によると8日現在、約3300人が孤立状態となっており、約1万8000戸が停電

している。地震で 多数の電柱が倒れたが、道路事情が悪くて 十分に工事車両が入れないためだ。

                     【朝比奈由佳、川地隆史、柳楽未来】

 

 

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