2023.12.29 週刊文春
ダイハツ「悪質不正」を生んだ「車は妥協の産物」という認識《元従業員が証言》
管理職は「運転が下手なヤツは死ねばいい」 から続く
【画像】「不正が生まれるきっかけ」“白水天皇”こと白水宏典氏
日本を代表する自動車メーカー「ダイハツ工業」の組織的不正問題が波紋を広げている。
同社は 認証をめぐり、エアバッグの衝撃実験をタイマー作動でごまかすなど 命に直結するような
悪質な不正を 30年以上にわたって行っていた。
これを受け、同社は 12月26日までに 国内全工場の稼働を全面停止。 雇用者の数も多く、
“ダイハツショック”が 経済に及ぼす影響は計り知れない。 第三者委員会による報告書は
不正の原因をまとめているが、なかでも 社員に向けたアンケート調査で 最多の回答となったのが、
「 開発スケジュールが過度にタイトになる傾向 」と「 発売時期や開発日程遵守のプレッシャー 」
だった。
社員が語った「 不正が生まれるきっかけ 」
こうした組織的風土について、ダイハツの現役社員が「週刊文春」の取材に応じ、「 “天皇”が
作った体制こそが、不正が生まれる きっかけになったのだ と思います 」などと語った。
“天皇”とは 一体誰なのか。このダイハツ社員が語る。
「 トヨタの副社長を務めた後に 2005年に “天下り”で ダイハツに会長としてやってきた白水宏典
(しらみず・こうすけ)氏。彼の影響が大きいのです 」
「 部署ごとの“タテ割り”が まかり通る事態に 」
白水氏は、会長在任中に 軽自動車販売台数で 30年以上トップランナーだったライバルのスズキ
を抜き去り、ダイハツを 業界1位に導くなど 功績ある経営者として知られた存在だ。
2011年に 会長職を退いた後も、2016年まで「相談役技監」という肩書きを持ち、事実上のトップ
として 同社に君臨していた。
白水氏による “独裁”が ダイハツの組織を歪ませ、不正の温床を作ったと前出の社員は語る。
「 白水元会長は 生産技術部門を優遇する独裁政治を敷いてきたため、設計や実験部門を含み
横断的に管理させる“プロジェクトリーダー”を事実上、存在させてこなかった。そのため、
ダイハツでは 部署ごとの “タテ割り”がまかり通る事態になってしまったのです。大きなプロジェクト
なのに 全体のとりまとめ役がいない というのは異常なこと。責任者を置かないということは
上層部が 現場に責任を押し付ける以外の何物でもありません 」
ダイハツに 白水氏に関する事実関係の確認を求める質問状を送ったが、以下の回答があるのみ
だった。 「 現在、弊社は 12月20日公表させていただいた通り、本件について、第三者委員会
からの報告書を受領したところであり、その中での指摘いただいた事項の詳細確認を進めている
ところです。ついては 今回いただいた 個別のご質問については、回答をさし控えさせていただけ
ればと存じます 」
「週刊文春電子版」では、「 《深層レポート》ダイハツ『不正30年』の病根 」と題した連載を
配信中だ。 第2回目となる 今回の記事 では、“ダイハツの天皇” こと白水氏の人物像、白水氏の独裁
が続いたことで生まれた「事なかれ主義」の実態、開発部門に極端な負荷がかかるようになって
しまった生産体制などについて詳しく報じている。