ダイハツ工業の不正 全車種の出荷停止
2023.12.25 FRIDAYデジタル
「 お客様に責められ続け、現場は疲弊していく一方。中には 激しい言葉で攻撃してくる
お客様もいらっしゃいます。もちろん、優しく励ましてくださる方もいらっしゃいますが…… 」
こう嘆くのは 認証試験での大規模な不正が発覚したダイハツ工業の販売店に勤める女性社員だ。
連日、ダイハツやトヨタの経営陣が会見を開いたり、陳謝したりする姿が報道されているが、
実際、客からの激しいクレームに対応するのは 矢面に立たされる販売店のスタッフだ。
「 朝から電話が鳴りっぱなしです。『5年乗った車を買った金額で引き取れ!』とか。不正が
認められた以外の車でも、とにかく ダイハツの車というだけで、無茶な要求をしてきます。
対象車種以外のキャンセルもすごいですよ。中には いきなり連絡もなく、直接、車をお店にもって
きて『 この車、置いていくから 今スグ お金払って買い取れ! 』といったこともありました。
もちろん、会社の不正によって ご迷惑をかけているお客様には、誠心誠意対応させていただきます。
ただ、肝心の会社が お客様への対応方針を示してくれないのです。明確な対応方法を早急に出して
くれたらいいのですが……。とにかく 現場は大混乱です 」
自動車メーカーが 新たに自動車を製造・販売する際には、さまざまな試験を受けて国交省や国連
が定める所定の安全基準を満たすことが義務付けられている。それらにパスすることを「認証取得」
という。
ダイハツは 多くの車種において 不正な方法で これらの認証を取得したことが発覚したわけだが、
始まりは なんと’89年だという。つまり、30年以上前から 一部車種で行われていたことになる。
第三者委員会による調査報告書によると、 「 当委員会が類似案件として認定した不正行為は
合計174個(不正加工・調整類型28個、虚偽記載類型143個、元データ不正操作類型3個)であるが、
一番古いもので ’89年の不正行為が認められる。
全体の傾向としては、’14年以降の期間で不正行為の件数が増加している状況が認められる 」 とある。
また 今回の不正を受けて、親会社のトヨタは リリースを発表。問題の一因について、
「 ’13年以降、小型車を中心に OEM(自社ではないブランドの製品を製造すること)供給車を
増やしており、これらの開発を依頼していたことが、ダイハツにとって 大きな負担となっていた
可能性がある 」との見解を明らかにした。
ダイハツが トヨタの連結子会社になったのは ’98年だ。さらに 完全子会社になったのが’16年。
リリースの通り、’13年から OEMなどの依頼を増やしたのだとすれば、不正件数が ’14年以降、
増加したことと無関係ではないだろう。
親会社による発注増加により、不正に手を染めざるを得なくなったのだろうか――。
しかし、ダイハツのディーラーに 20年以上勤務してきた西日本在住の整備士は「 トヨタだけが
原因ではない 」と明かす。 「 (開発を早く終わらせろ!という)トヨタの圧力だという声もある
ようですが それだけではないでしょう。なぜなら トヨタの傘下に入るずっと前、OEMを作るように
なった ずっと前から偽装していたわけですから。長い間、開発部門において そのような不正を行う
土壌、上にモノが言えない環境があった と考えています。
また、近年は 激しいコストダウンによる品質の低下も気になっていました。不具合の理由が
コストカットによるものだと思われるケースがたくさんあります 」
大手自動車メーカーとして、長きにわたり 不正に手を染めていたダイハツの罪は重い。
はたして 対象車種のオーナーたちは どうすればいいのか。腹立たしい気持ちもわからなくはないが、
販売店に怒鳴り込んでいっても 解決する問題ではない。
また 中古車市場でもダイハツ車の相場は乱高下しているとの情報もあり、慌てて手放すと
傷口を広げる可能性もある。今後、リコールなどの措置が取られるはずなので 販売店からの連絡を
待つのが賢明だろう。 ダイハツには 迅速で真摯な対応が求められる。
取材・文:加藤久美子
…ダイハツ、日野、豊田自動織機に続き、米国トヨタでも100万台リコールの惨状
2023.12.25 (SmartFLASH) - Yahoo!ニュース
12月20日に発覚したダイハツ工業の車両認証試験の不正問題。不正は 1989年からおこなわれて
おり、64車種、174件が対象となることが発表された。現在、ダイハツは 生産中の全車種の出荷を
停止している。
ダイハツの親会社であるトヨタの中嶋裕樹副社長は、同日の記者会見で、「(トヨタへの)供給が
増えたことが 現場の負担になっていた 」と述べており、SNSでは、トヨタにも批判の声が集まって
いる。
《 親会社のトヨタが 日野自動車やダイハツの不祥事について 他人事のように語るのと、自民党が
派閥の不祥事について 他人事のように語るのはよく似ているなと思った 》
《 現場は 上の方から追い詰められ、追い詰めてる上の方もまた いっぱいいっぱいという、誰もが
何の得もせず 苦しんだ末の不正というのが救いようが無いね 》
ここで思い出されるのが、2023年3月に発覚した、日野自動車によるエンジン燃費試験での不正だ。
当時、日野は トヨタの子会社だった。同時期には、トヨタグループの本家にあたる豊田自動織機で、
フォークリフト向けエンジンの不正認証が発覚。さらに、12月20日には、北米トヨタで エアバッグ
のセンサーに不具合が見つかり、100万台リコールとなっている。
なぜトヨタグループで、こうした不正が続発するのか。
「 トヨタが効率的にクルマを作るため改善してきた “トヨタ方式” についていけない部分があった
のではないか 」と話すのは、あるモータージャーナリストだ。
「 トヨタは 効率化によって収益を上げてきた会社ですし、自分たちのクルマの作り方を信じている
ので、それを 子会社に押しつけようとした部分は、現場であったはずです。 しかし、ダイハツや
日野自動車には、自分たちがずっと続けてきた社内風土があり、トヨタが号令をかけたからといって、
すぐに対応できるわけではありません。自分たちが 今までやってきたのとは違う方法論だったり
基準が出てきても、ダイハツや日野は、それをどう咀嚼したらいいのか、わからないまま来て
しまった。 厳しい要求に応えられない部分に関しては、ここは隠しておこう、嘘をついておこうと、
ごまかさざるを得ない状況になってしまったのではないでしょうか。
とはいえ、すべてにおいて トヨタがガチガチに足かせをはめたわけでもないはずで、その
せめぎ合いのなかで こうした不正問題が起きたのでしょう 」
ある程度は “阿吽の呼吸” でやってきたことが、いきなり コンプライアンスを持ち込まれて
白黒はっきりさせようとなると、あらゆるところで問題が起きてしまうわけだ。
ダイハツは、22日から 福岡県のエンジン工場の稼働を停止、来週から 2024年1月末までは、
国内すべての工場の生産を停止するという。トヨタの豊田章男会長は「 1日も早く信頼を取り戻せる
よう、親会社として全面協力する 」と話しているが、事態は しばらく収束しそうにない。