消費税増税を叫ぶ「日本の貧乏神」経団連・十倉会長

「自社業績は一人負け」判断能力ゼロの声…日本にとって無能で有害な経団連会長

                               12/13(水)   みんかぶマガジン 

 経団連の十倉雅和会長は9月の記者会見で「 若い世代が将来不安なく、安心して子どもを持つには

全世代型の社会保障改革しかない。それには 消費税などの増税から逃げてはいけない 」と発言し

大きな波紋を呼んだ。本当に 消費増税しか道は残されていないのか、そもそも 十倉会長とは

何者なのか。元プレジデント編集長で作家の小倉健一が解説するーー。

 

                                          経団連とは | 一般社団法人 日本経済団体連合会 / Keidanren

 

化学大手4社で 一人負けの住友化学

   経団連会長・十倉雅和氏が会長を務める住友化学が 絶不調だ。2023年4〜9月期の連結最終損益

(国際会計基準)が 760億円の最終赤字になった。従来予想である 300億円の赤字から、さらに

赤字が倍以上に増えたことになる。

    化学大手4社(三菱ケミカル、三井化学、旭化成、住友化学)の中で、赤字業績(通期最終損益

見通し)は 住友化学だけであり、現在 一人負けの様相である。

 

    住友化学の業績の足を引っ張るのは、十倉会長が 特に気合を入れて、事業を拡大してきた

「ラービグ」である。住友化学が資本参加する石油化学プラント「ペトロ・ラービグ」は、ガソリン

などの石油製品のほか、ポリエチレン や ポリプロピレンといった石化製品を製造してきた。

約2兆円の総事業費を投じながらも、石化製品需要の低迷などで 業績が悪化していた。

 

経営者としての判断能力がまったくなかったということに

   ラーグビを巡り 事業拡張に踏み切る判断をしたときの社長が 米倉氏の後を継いだ十倉氏だ。

2012年に アラムコと共同で 総事業費が当初見込みで 70億ドル、最終的には 91億ドルにのぼった

大幅な増強を決めて 石化製品の生産能力を倍増させた。結果的に この拡張が 住友化学の業績への

ラービグの影響を高め、足下のダメージを大きく広げている (東洋経済オンライン・11月15日)

という。市場関係者からは 「住友化学のお荷物」と指摘されてきた。

 

    しかも、ラーグビは、石油事業であり、カーボンニュートラルが叫ばれる世界情勢に、真っ向から

は向かうものである。十倉会長は、経団連会長として、カーボンニュートラルを口先では叫ぶものの、

自分の会社では 赤字を垂れ流してでも 二酸化炭素を吐き出し続けている。

   十倉会長は、経団連の最近の会見(12月4日)で「 わが国は、水素・アンモニアを活用した石炭

(ガス)火力の脱炭素化に関わる技術を グローバル・サウスに移転することで、世界の カーボンニュートラル

に貢献することができる 」と述べているが、カーボンニュートラルのためにやめるべきは まず自社の

事業ということだ。

   住友化学で 社長の座を射止めるために、前社長の肝煎事業を拡大した可能性も否定できず、

経営者としての判断能力が まったくなかったということになる。

 

スモールガバメントを自社では求め、国には「 大きさ政府路線 」

   サラリーマン社長と俗にいう、凡庸な人物がトップに立っていいことなどない。彼の会社人生は、

とにかく 上司のいうことを忠実に守り続けて、出世を果たしたようだ。

    PRESIDENT2017年3月6日号<組織改革で貫いた「不可有心」>において、十倉会長が40歳の頃

を振り返る記事があった。

 

    1989年に当時の住友化学の社長が、「 2001年に 国際規模の総合化学会社になる 」とした

長期経営戦略を決定し、当時の十倉会長の上司が 「 本社の機能や権限が大きすぎる、スモールガバメント

(小さな政府、転じて 小さな本社の意)に改革しよう 」と言い出したのを受けて、その改革案を

策定したのだという。 要するに、本社の機能や権限を小さくして、現場にもっと権限を与えよう

という改革だった。

    当時、十倉氏は「 全く同感だ 」と思ったと述べているが、冷静に この構図を考えれば、

言い出したのは 社長、具体化したのは 上司、十倉氏は 指示に従ったに過ぎない。それが 全社的な

改革につながり、実行部隊であった十倉氏は 出世の階段を登っていったのだ。

 

   海外赴任の際も、< 日本から役員が出張してくる際には、日本的な土産をサンタクロースのように

大きな袋に入れてきてもらい、ホテルで 従業員全員が出る立食パーティーを開く >(PRESIDENT

 2017年3月20日号)などと振り返っているから、十倉氏は仕事ができる というよりは、自己PRが

上手なタイプなのであろう。

   あれだけ、スモールガバメントなどと言っておきながら、政府には それを求めておらず、むしろ

「 消費税を増税せよ 」という大きな政府路線であることも、この自社での改革が いかに自分の頭で

考えていなかったことがわかるというものであろう。

 

国民負担率が上がれば、経済成長にとって負の影響

   経団連は、企業を代表する組織である企業に課税する法人税を上げられたくないから、

同じ上げるなら消費税をあげよ という理屈を、十倉氏だけでなく、歴代の経団連会長が繰り出して

いる。 本当なのだろうか。

 

   国民負担率が上がれば、経済成長にとって負の影響を与えること、家計にも負の影響を与えること

は、2000年に 日銀が レポートを発表して以来、民間シンクタンクで、幾度となく示されてきた

ファクトである。

   今、財務省が発表している『国民負担率』では、国民負担に 財政赤字を加えた潜在的な国民負担率

として、「令和2年度(実績)62.8%と公表されている。とうとう 60%を突破し、江戸時代

における重税の象徴たる「五公五民」を超え、「六公四民」時代が到来しているのだ。

   国民負担率が増えると、経済成長と家計に マイナスになることは明らかになっている。

永濱利廣『 潜在成長率を押し下げる国民負担率上昇 ~国民負担率+1%ポイント上昇で潜在成長率

▲0.11%ポイント押し下げ~ 』2023年5月29日によれば、「 2010年以降の国民負担率の上昇幅を

G7諸国で比較すると、日本が 断トツで上昇していることがわかる 」「 国民負担率(税・社会保障

負担の国民所得に対する割合)の上昇により 可処分所得が減少すれば、消費支出が削減されるほか、

貯蓄の減少ももたらすことになる。国全体としての貯蓄率の低下は、中長期的に資本ストックの減少

をもたらし、潜在成長率の低下につながる 」という。

 

日本にとって 無能で有害な経団連会長

   十倉会長は、企業にさえ これ以上の課税がされなければ、消費税が増税されても問題はないと

考えているのだろうか。まったくの根拠不明である。 消費税でも 法人税でも税金をあげれば、

国民負担率が上昇することは明らかで、十倉会長が 日本経済の成長のため、日本企業のために

言わなくてはいけないことは、増税ではなく 減税であり、そのための行財政改革でしかない。

 

    政府批判をしたくないという事情を抱えているのだとしても、ムダ使いをやめさせるための知見

を、民間企業の経営者として 政府に働きかけていくべきだ。

   やることもやらず、莫大なムダ使いを続け、国民負担を増やし続けて、国民から愛想を尽かされた

岸田文雄首相について「 なぜ これで支持率が上向かないのか私も不思議だ 」「 一つ一つの政策は

いいことをしている 」と意味不明な擁護をしたところで 日本経済は上向くことはない。

 

   岸田首相と一緒に早期に退陣し、少なくとも経営能力があることは証明されているトヨタ自動車の

豊田章男氏に さっさと席を明け渡すべきだろう。日本にとって 無能で有害な経団連会長など、

必要ない。

 

 

住友化学の最悪決算招いた経団連会長の経営判断 

  外部要因への耐性低く複数事業が同時に炎上 

            奥田 貫  2023/11/15   東洋経済オンライン 

“ 財界総理 ”は いま、何を思うのか―。

    十倉雅和・経団連会長の出身母体であり、十倉氏が 現在も会長を務める住友化学が苦境に直面

している。 2024年3月期決算の上半期(4~9月)は、コア営業損益(営業損益から一時的な項目を

除いたもの)が 966億円の赤字(前年同期は1156億円の黒字)、最終損益は 763億円の赤字

(同810億円の黒字)になった。 通期予想も下方修正した。最終損益は 従来の 100億円の黒字から

950億円の赤字へと 1050億円も引き下げた。

   上期実績と通期予想ともに 最終赤字額は 過去最悪だ。岩田圭一社長は 11月1日の決算会見で

「 創業以来の危機的状況であると重く受け止めている 」と述べ、自身と十倉会長の役員報酬を

一部返上することを明らかにした。

 

2期連続の巨額の下方修正

   住友化学は 今年2月にも、前期の2023年3月期の最終損益の見込みを それまでの1050億円の黒字

からゼロへと引き下げたばかり(実際は69億円の最終黒字で着地)。2期連続での 巨額の下方修正

となった。

   中国の景気停滞の影響や半導体市場の回復の遅れもあり、化学業界には 2022年後半から強い

向かい風が吹く。とはいえ 住友化学の落ち込みは際立つ。主要事業が軒並み前期より、かつ期初想定

よりも悪化しているからだ。中でも 石油化学系、医薬品、メチオニン(鶏飼料添加物)の3事業が

大きく足を引っ張っている。

 

   まず、汎用的な石油化学製品(以下、石化)を中心とする エッセンシャルケミカルズ事業。

上期は 444億円の赤字と厳しい結果で、通期予想を 従来の70億円の赤字から750億円の赤字

(前期実績は342億円の赤字)へ引き下げた。680億円もの減額幅は 今回の下方修正の最大の要因だ。

 

   中国の景気停滞影響が アジアに波及し、幅広い用途に使われる石化製品が苦戦しているのは

各社とも共通している。住友化学は そこに加え、サウジアラビアに合弁会社のペトロ・ラービグを

抱えているため一層苦しい。

   ラービグは 石化製品の他に、市況変動の影響を強く受けやすい ガソリンや軽油などの石油精製品

も手掛けている。これらの市況が 昨夏以降、原油価格のピークアウトとともに急落している。

 

抗精神病薬「ラツーダ」が パテントクリフで下落

   次に、上期に655億円という主要事業で 最大の赤字を計上した医薬品事業。 通期予想は従来の

610億円の赤字から690億円の赤字に引き下げた(前期実績は162億円の黒字)。

低迷の理由は 明確だ。連結子会社の住友ファーマ(住友化学の持ち分比率は51.58%)の稼ぎ頭

だった抗精神病薬「ラツーダ」の特許切れ (2023年2月で独占販売期間が終了)に伴う他社製の

ジェネリック(後発)医薬品の登場、いわゆる パテントクリフ(特許の壁)が響いている。

  ラツーダの落ち込みは 期初に見込んでいたよりも大きくなっており、さらに ポストラツーダとして

拡販に注力する基幹3薬の シェアアップも遅れている状況にある。

 

   そして 健康・農業関連事業。前年上期の363億円の黒字から 今上期は想定外の76億円の赤字と

落ち込み、通期予想は 従来の620億円から400億円へと引き下げた(前期実績は573億円)。

   農薬は 前年度に 南米で出荷が多かった反動で 流通在庫が増え、今上期に在庫の削減を実施した

一時的な影響があった。下期は 好転する見通し。 問題は鶏飼料添加物のメチオニンだ。

エネルギーコストが高止まりする中、中国企業の生産能力増強による供給過剰が解消せずに 

市況低迷が続き、大不振にあえぐ。

   この状況を受けて住友化学は、上期に メチオニンの製造設備で 146億円の減損損失を計上した

(事業ごとの損益とは 別の非計上項目に参入)。

 

過去の経営判断の妥当性が問われる

   主要事業が 同時多発的に炎上しているのは “運が悪かった”のかもしれない。だが、各事業を

子細に見ると、過去の経営判断の妥当性が問われる。

  象徴的なのが ラービグである。もともと 岩田社長の2代前の社長で、これまた 経団連会長を歴任

した 米倉弘昌氏が肝いりで始めた事業だ。中国に 石化製品のコスト競争力で対抗し、かつ 海外事業

に成長への活路を求めるために、サウジアラビアの国営企業のサウジ・アラムコと 37.5%ずつ出資

して 2005年に合弁会社を設立、2009年に操業を開始した。

   大きな構図を描いて出発したラービグだったが、当初からトラブル続きで 思うような利益を

出せなかった。その中で 事業拡張に踏み切る判断をしたときの社長が 米倉氏の後を継いだ十倉氏だ。

   2012年に アラムコと共同で総事業費が 当初見込みで70億ドル、最終的には 91億ドルにのぼった

大幅な増強を決めて 石化製品の生産能力を倍増させた。 結果的に この拡張が 住友化学の業績への

ラービグの影響を高め、足下のダメージを大きく広げている。

   ラービグは 何らかのテコ入れをする必要はあるものの、岩田社長は「 石油精製品の高度化が必要

だが、そのためには巨額の投資がいる。石油精製品のような市況に左右されるものに(今後も)投資

をするのは難しい 」と話す。

 

メチオニンでは 他社の増産リスクを見誤った

   メチオニンの事業規模を拡大してきたのも 十倉氏が社長の時代だ。2016年に500億円を投じて

愛媛にプラントの新設を進め、それまで 15万トンだった生産能力を 2018年の完工で 25万トンへ

増やした。 鶏飼料添加物は人口増加に伴う 食肉需要の拡大により安定した市場成長が期待できる

という考えからだった。誤算だったのは、そうした製品は よそも狙うということ。差別化が容易

ではない市況製品なのに、他社の増産リスクを見誤ったようだ。

   足下の状況を受け、住友化学は メチオニンの生産能力を 2025年3月末までに 2019年3月末比で

3割減らすことを検討するという。

 

医薬品も事業リスクへの対処がうまくいっていない。

   そもそも 市況に左右される石化等の汎用品を抱える大手総合化学メーカーでは、需要が景気で

上下しにくい ヘルスケア関連の事業に力を入れるのが トレンドだ。

   他の大手総合化学メーカーでは、たとえば 三井化学が眼鏡レンズ材料や歯科材料、旭化成が

医療機関向け除細動器などをコツコツと伸ばしてきた。それに対して、住友化学は 住友ファーマの

医薬品に偏重している。

   医薬品は、ラツーダのように 大型薬が当たれば大きいが、特許切れまでに 次の大型薬を確保

できなければ たちまち厳しくなる。だが、売れる新薬の開発は 困難で 失敗が当然の世界。

創薬の確率を高めるために、医薬品業界では 自社で巨額の研究開発費を投じるとともに 有力な

新薬候補を持つ企業を買収する「規模の競争」が行われている。

    住友ファーマの規模は、国内医薬品メーカーとの比較に限っても 売上高で7位の中堅だ。

北米での事業を中心に 中枢神経系へリソースを集中する策を取るが、世界的な競争が激化する中で、

難しい立ち位置にいる。

 

   以上のように 多くの事業は 今の業績が悪いだけではなく、先行きでも不安が漂う。

 

リスクマネジメントに問題はなかった?

   決算会見で、岩田社長に これまでのリスクマネジメントに問題がなかったのかを尋ねると、

「 リスクマネジメントに問題があるとは思っていない。事業構造として 市況に影響される製品の割合

が まだ多いことに問題があると思っている 」と述べた。

  だが 10年前後の間でみても 市況製品の割合が増えるような経営判断をたびたびしてきたほか、

医薬品のパテントクリフをカバーできていないのは、リスクマネジメントに問題があったからでは

ないか。結果論ではあるが、経営は 結果責任だ。

 

   SBI証券シニアアナリストの澤砥正美氏は「 需給の変動に大きく左右されない独自製品を いかに

持ち、拡大できるかが重要だ。市況製品である ラービグやメチオニンの事業よりも、そういうものの

開発に もっと資源投入をしているべきだった 」と指摘する。

   経営判断が 業績に影響するまでには タイムラグがある。各事業の状況や経緯をみると、前社長

である十倉氏の責任は大きい。

 

    住友化学は、来期(2025年3月期)の業績回復を目指して、事業整理対象の拡大や投資の絞り込み

を行って コスト削減やキャッシュの創出を進めたうえで、「 新生スペシャリティケミカル企業 」の

実現に向けて 抜本的な構造改革を行うとしている。リストラを進めるうえでは、今の苦境を招いた

経営判断を検証し、体質改善につなげることが求められる。