テスラが「自動運転機能」の“問題”を修正、米国でほぼ全車両をリコールへ

                 2023.12.14    WIRED.jp

 
    テスラが これまでに 米国で販売した車両のほぼすべてに相当する200万台以上をリコールする。
自動運転技術を用いたテスラの運転支援機能「オートパイロット」を ドライバーが使用する際に、
周囲に注意を払っていることを確認するよう設計されたシステムの “問題” を修正する目的だ。
   米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が 12月13日(米国時間)に掲載した文書によると、
テスラは 物理的な改修を伴うリコールではなく、問題を修正するためのソフトウェアアップデート
を配信する予定だという。
    今回のリコールの対象となる製品は、テスラが米国で販売した「モデルX」「モデルS」「モデルY」
「モデル3」を含む ほぼすべての車両。 2012年10月5日から23年12月7日までに生産された車両が
影響を受ける。
 
   一連の衝突事故の調査を経たリコール
   この措置が発表されたのは、オートパイロットを使用中に起きたとされる一連の衝突事故について
NHTSAが 2年にわたり調査した後のことだ。 NHTSAは 16年以降、オートパイロットなどの
高度運転支援機能が オンになっていた と疑われる事例を含む 40件以上の事故の特別調査を テスラ
と共同で開始している。
   これらの調査では 19件の事故死の事例が報告された。 調査を経て NHTSAは、ドライバーが
周囲に注意を払って 自ら操作している状態を確認するオートパイロットの方法は 不十分であると
結論づけた。 そして「オートステアリング(ハンドルの自動操作)が作動している特定の状況下に
おいては、注意を促す動作や対象範囲が ドライバーの誤使用を防ぐには十分ではない可能性がある 」
と指摘している。
 NHTSAの報告書によると、「 ドライバーに継続的な運転責任を順守するようさらに促す 」ための
制御や警告が追加されるほか、テスラによる ソフトウェアアップデート(すでに一部の車両向けに
提供され、現在も展開が進んでいる)は オートステアリングを利用できる場面を 明確に制限する
ことになる。

   具体的には、以下ように記載されている。
「 追加される制御には、特に ユーザーインターフェイス上の視覚的警告を目立たせること、
オートステアリングの作動と解除を簡素化すること、オートステアリングを作動させる際や、
立ち入りが制限されている高速道路以外の道路や交通規制に接近する際に オートステアリングを
使用する状況での追加確認、オートステアリングが作動している間に ドライバーが 継続的かつ
持続的な運転責任を示さない行為を繰り返した場合には 最終的に オートステアリングの使用を
停止する 」
   テスラの公開資料には、「 オートパイロットは ドライバーによる運転を補助するシステムであり、
ドライバーが周囲に完全に注意を払っている状況下でのみ使われることを前提としています。
テスラ車を 自動運転する機能でも自律走行させる機能でもありません 」と書かれている。
   つまり、その名称の言葉通りではなく、オートパイロットは 車線内での自動操舵や自動加速、
自動ブレーキはできるが、あなたの代わりに運転することはできないのだ。
 
   テスラ車のドライバーは オートパイロットを有効にする前に、常に ハンドルから手を離さずに
車両の「 制御と責任を維持する 」ことに同意しなければならない。オートパイロットが作動すると、
視覚と音声による警告が 状況に応じて段階的に表示され、ハンドルにかける力(トルク)が 不十分な
場合は ハンドルに手を置くようドライバーに注意を促すよう設計されている。 これらの警告を
ドライバーが繰り返し無視した場合、その走行中のオートパイロットは停止される仕組みだ。
 
 つまり、多くの先進運転支援システムと同様に、オートパイロットは ドライバーが ハンドルから
手を離さないように求める。しかし、一部の人々は ハンドルのスポークにおもりをかけることで、
こうしたシステムを欺く方法を発見したりもしている。
 
  21年の『Car and Driver』の調査によると、ドライバーが ハンドルから手を離してから 警告が
点滅するまでに、車種によって 25秒から40秒かかった。ドライバーが反応しなかった場合、
ブレーキをかけるまで さらに 30秒かかるクルマもあったという。
   これを高速道路を走行するテスラ車に当てはめると、最大 1マイル(約1.6km)もドライバーの
操作なしで作動することになる。実際に 過去の極端な事例では、オートパイロット機能をオンに
したまま 後部座席に座っていたドライバーが逮捕されたこともある。
 
    リコール文書によると、NHTSAの調査官は 今年10月中旬から12月にかけて テスラの担当者と
面会し、「 オートステアリングの作動時に ドライバーが誤用する可能性がある問題に関連する
NHTSAの暫定的な結論について話し合った 」とされる。
  テスラ側は NHTSAの分析結果に同意しなかったが、「 自主的にリコールを実施し 改善策を提供
する 」ことに同意したという。今後も NHTSAは テスラの調査を継続する方針だ。
「 テスラの改善策の有効性を監視し、最高レベルの安全性を確保するためにテスラと協力し続ける 」
と、NHTSAは説明している。
 
 
               (Bloomberg) - Yahoo!ニュース
(ブルームバーグ): 米電気自動車(EV)大手テスラは、200万台以上を対象とするリコール
(無料の回収・修理)を届け出た。
米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が同社の自動運転支援システム「オートパイロット」の
誤用防止対策は不十分と判断した。

   これを受け、ニューヨーク時間13日早朝の米株式市場時間外取引で 同社の株価は一時

約1.6%下落した。

 

 今回の動きは NHTSAが 数年かけて行ってきた欠陥調査の結果を受けたもの。 テスラによる

修正措置の有効性を監視するため、NHTSAは 今後も調査を継続する。NHTSAの報道官は、

ドライバーの操作を保つための手段が テスラの場合は 不十分だったことが判明したと述べた。

   NHTSAは 13日の発表文で、「 自動化技術は 安全性の向上に大きな可能性を秘めているが、

それは 責任を持って導入された場合に限られる 」と指摘。「 今回の措置は、安全性を優先する

ことで 自動化システムを改善する例だ 」と続けた。

 

    テスラは リコール報告書の中で、12月12日もしくは その直後に 当該の無線ソフトウェアアップデート(OTA)を開始する予定だと説明した。

   テスラの自動運転システムに関するリコールは 今年2回目。 同システムを巡っては 死亡事故を

含め 数百件の衝突が発生しており、当局は 調査を強化している。

 

     オートパイロットは 新しいテスラ車には標準装備されている。