行政の過失、不始末の尻拭いを、
行政自らがせず、
「一般国民」につけまわしする日本の国家体質は、
今に始まったことではない。
この「一般国民」が、
やがて、
彼ら 国の支配層には、
この「国土の自然」への態度と同じものとなる。
いくら自然を 乱暴に扱っても 破壊しても、
自然は 文句は言わない。
自然は、母のように
そのワガママをすべて受け入れ、浄化しててくれる・・・。
こうした自然や国民への甘えが、
日本国の支配層をして、
この国土の自然と人間の破壊を
とめどないものにするのだ!
合掌
マイナンバー問題は「消えた年金記録」と病巣が同じ!総点検してもムダな理由
三木雄信 ダイヤモンド・オンライン 2023.8.20
マイナンバー関連のトラブルが相次ぐ中、政府は「総点検」をしながら健康保険証とマイナカード
の一体化を急いでいる。かつて「消えた年金記録問題」の対応をした筆者は、「政府はナンセンス。
今のままでは事態は解決しません」と断言。
個人情報に関する構造問題について、年金手帳を例に解き明かす。(トライオン代表 三木雄信)
● 消えた年金問題も マイナンバー問題も根は同じ
マイナンバーに関して さまざまなトラブルが発生し、岸田内閣の支持率にも 影響が出るほど
問題が深刻化しています。政府は「総点検本部」を設置し、地方自治体も巻き込み、省庁を挙げて
「総点検」を進めています。
しかし、前回の記事『「マイナンバー総点検」が残念すぎる理由〈消えた年金〉収拾の専門家
が「ナンセンス」とバッサリ』でも書いた通り、今のままでは 事態は解決しません。
私は、厚生労働省の大臣政策室政策官や日本年金機構理事(非常勤)として、年金記録問題の解決に
当たってきた経験から、断言します。
実は、年金記録問題も マイナンバー問題も、根っこは同じ。原因は、国民の個人情報に関する
構造問題(データガバナンスの欠如、詳細は後述)が本質であり、いくら総点検しても その解決には
至りません。今回は、この個人情報に関する構造問題について、年金記録を具体例に説明します。
さて、読者の皆さんの多くは 年金手帳をお持ちでしょう。ちなみに、年金手帳は 2022年4月に
廃止されたので、それ以降に 20歳になった人や、紛失した人は、年金手帳の発行はされません。
だからといって それで「困った」という話を聞かないと思います。それは 年金手帳が、基礎年金番号
の確認のため「見る」以外に、手帳としての機能を失っていたからです。
では、そもそも 年金手帳とは なぜ「手帳」だったのでしょうか?
● 昔の年金手帳なら 総点検は可能だった!
元々、年金手帳は 「国民年金印紙」という切手のような印紙を貼るための、“スタンプ帳”だった
のです。この方式は 印紙検認方式と呼ばれ、昭和36(1961)年4月から行われていました。
年金加入者は 月々の保険料の納付を行うと、国民年金印紙を受け取って 年金手帳に貼り、住所のある
市町村で検印(郵便局で切手に押される消印に似たもの)を受け取っていました。
そして 市町村は、納付情報を 管轄の社会保険事務所に毎月報告。また、印紙がある程度たまると、
加入者自らが、年金手帳から 印紙が貼られた台紙を切り離し、社会保険事務所に送付していました。
ここで確認しておくべきことは、データ(個人情報)が 3カ所にあることです。すなわち、
加入者個人(年金手帳)、住所地市町村(被保険者名簿)、管轄社会保険事務所(被保険者台帳)。
この3カ所で 時差はあるものの、本来は 一致する情報が蓄積されていました。
万が一、何かの間違いがあったとしても、国民年金印紙が貼られた年金手帳さえあれば、年金の
納付を確認して 情報の修正ができます。つまり、年金手帳が 全てのデータの基本となるマスターデータ
として、「総点検」が可能な仕組みになっていたといえます。
● オンライン化が問題を複雑にした
ところが、この印紙検認方式は 昭和46(1971)年9月に変更されました。保険料を納付すると
印紙ではなく、市町村であれば 納付書、金融機関であれば 領収書が渡されるようになります。
この結果、年金手帳は、印紙を貼る手帳としての機能が失われました。つまり、この時点で、
年金手帳が 手帳である理由は喪失したのです。
こうした結果、加入者の手元には 納付書が残るだけとなり、時系列に関係なくバラバラになって
しまうなど、多くの人にとって 管理が難しいものになったのです。そして、年金手帳を マスターデータ
として使うこともできなくなりました。
さらに 問題を複雑にしたのが、昭和59(1984)年から始まったオンライン化です。
年金情報は 全てオンラインで 一元管理されるようになり、加入者個人(年金手帳)と住所地市町村
(被保険者名簿)と 管轄社会保険事務所(被保険者台帳)の3カ所に、社会保険庁(現:日本年金機構)
(オンライン)が加わり、計4カ所に 集積されることになったのです。
“最後の砦”だった「印紙が貼られた年金手帳」で 全ての整合性を担保することができなくなり、
本来は 同一であるはずのデータが 複数の箇所に蓄積され、さらに 紙からオンラインのデータに
変換されていったことが、年金記録問題の発生の原因になったのです。
そもそも、同一であるはずのデータが 複数の箇所に分かれてあることが 間違いの元凶です。
加入者の名前は、結婚や養子縁組などで変わり、データの不一致になる可能性があります。
また、名前で使われている漢字には 異体字があります。例えば、漢字の「高」には、「髙(ハシゴダカ)
」と呼ばれる異体字があります。これらを混同すれば データ不一致になるのは明白です。
また、オンラインのデータに キーボードで入力を行うと、問題は さらに複雑になります。それは、
キーボードで入力できる漢字には限界があるからです。
● データガバナンスの欠如がもたらした問題
キーボードで入力できる漢字は、「JIS第1水準」「JIS第2水準」が一般的です。これは、
日本産業規格(JIS)で定められた漢字の規格で、第1水準なら 常用漢字1945字とその他の人名用漢字
を含む使用頻度の高い2965字から構成されます。 なお、第3水準と第4水準もありますが、
環境依存文字として扱われることが多いです。
だから、紙からオンラインにデータを入力する際にも、オンラインからオンラインへデータを
インポートする際にも、漢字がない場合があるのです。実は このような場合、現場の判断で無理やり
入力可能な漢字に置き換えてしまうことがほとんどです。データ不一致の発生は明らかです。
もっと単純に、人間によるキーボードの打ち間違いも発生します。一般的に キーボードの打ち間違い
は、たとえ熟達者であっても 0.1%以上あります。これも当然、データの不一致の原因となるのです。
このように、データの転記や入力をすればするほど、データの劣化は必然的に起こるもの。
そして、年金制度の初期は、そうしたデータの劣化を、加入者自身が持つ印紙を貼った年金手帳で、
最後には補填する仕組みだったのです。
私は この記事の冒頭で、「国民の個人情報に関する構造問題(データガバナンスの欠如、詳細は
後述)が本質」と述べました。ここで、データガバナンスについて話しましょう。
ちょっと長いですが、データガバナンスの定義は、「データの収集、蓄積、活用、設計、運用・保守
を継続的に行うデータマネジメントの実行活動に対し、経営・ビジネスの観点から全社横断の方針・
プロセス・ルール・体制を定め、これを監視・評価・サポートすることで、データ活用による効果の
最大化とリスクの最小化を実現する取り組み」とされています(引用元:野村総合研究所)。
つまり、年金制度の初期は、紙ベースで アナログだったものの、データガバナンスがきちんと
デザインされていたのです。ところが、アナログからデジタルに脱しようとオンライン化を進める
中で、ガバナンスが欠如し、最終的には「消えた年金」として 未曽有の大問題と化したのです。
今回は、年金手帳を例に解説しました。次回は いよいよ、マイナンバーカードについて、
同じ視点から分かりやすく解説します。