バベルの塔

     全ての地は、同じ言葉と同じ言語を用いていた。東の方から移動した人々は、

    シンアルの地の平原に至り、そこに住みついた。そして、

    「 さあ、煉瓦を作ろう。火で焼こう 」と言い合った。彼らは 石の代わりに煉瓦を、

    漆喰の代わりにアスファルトを用いた。そして、言った、

    「 さあ、我々の街と塔を作ろう。塔の先が 天に届くほどの。 あらゆる地に散って、

            消え去ることのないように、我々の為に名をあげよう 」。

 

    主は、人の子らが作ろうとしていた街と塔とを見ようとしてお下りになり、そして

    仰せられた、「 なるほど、彼らは 一つの民で、同じ言葉を話している。この業は 彼らの

            行いの始まりだが、おそらく このことも やり遂げられないこともあるまい。それなら、

            我々は下って、彼らの言葉を乱してやろう。彼らが 互いに相手の言葉を理解できなくなる

            ように 」。

 

            主は そこから 全ての地に人を散らされたので、彼らは 街づくりを取りやめた。

            その為に、この街は バベルと名付けられた。

            主が そこで、全地の言葉を乱し、そこから 人を全地に散らされたからである。

 

                                                                                      — 「創世記」11章1-9節

 

 

「人気の官公庁関係のお仕事◎」というバイト求人も

…「マイナカード」へのぬぐい難い“不信感”

        2023.8.11     文春オンライン 

 

 〈 別人口座への誤入金も…トラブル続出のマイナンバー「総点検は無理」自治体の“悲痛な叫び” 〉 

   から続く。

 

   マイナンバーカードの相次ぐトラブルに、岸田首相は 6月21日、総理官邸で総点検本部を立ち上げ、

徹底的に ミスをなくすと表明しました。  

マイナ保険証に 別人の情報が登録されていた件が令和3年10月から令和4年11月末までに 7312件。

地方職員共済組合で、別人の年金情報が紐づいていた件が 1件、障害者手帳で別人の情報が紐づいて

いた件が、静岡県が公表しただけでも 62件と あまりに多いので、

全てのデータについて、秋までに総点検を行い、国民の信頼を回復するとしています。

 

世田谷区長は「無理」と断言

 ただ、すでに申請されているマイナンバーカードは、7月2日時点で デジタル庁の公表では

9737万3895枚(1月4日時点で総務省の公表では約8300万枚)。

マイナポータルで閲覧できる 医療や年金、所得などに関する計29項目の総点検をするのですが、

仮に 1万人の公務員が点検にあたるとしても、1人約1万枚のカードを、それも 29項目も点検する

ことになる。

  これに対して、マイナンバーカードの発行枚数 50万枚の世田谷区の保坂展人区長は、はっきり

「無理だ」と言い切っています。 「 コロナで人が足りない中で マイナンバーカードの申請が殺到し、

それに対応するだけでも 大変な思いをしたのに、さらにここにきて 50万人分のカードを29項目も

点検しろという。政府は、お金も人も出してくれないわけですから、他の業務で パンパンになって

いるところに、さらに仕事を増やすなんて不可能です 」

 

 ただ、保坂区長のように はっきりと「無理だ」と言う自治体の組長は少なく、ほとんどの自治体

では、所轄官庁である総務省の顔色を見ながら、「 無理でも それなりに取り組んでいる姿勢は

見せないと 」ということになっているようです。  

 そこで何が起きているのかといえば、バイト頼みの「総点検」です。

 

「マイナンバーカードの申込確認」のバイト募集

 求人情報を見ると、マイナンバーカード関連のバイト募集が、山のように出ています。

市区町村が 直接バイトを募集しているだけでなく、人材派遣会社の大手から中小まで、こぞって

募集しています。

  「マイナンバーカードの申込確認」の相場は、時給1500円前後。「 未経験者歓迎で写真も履歴書

も必要ない楽な仕事、働き方は自由自在。しかも面接はウェブでもOK 」。

これなら、コンビニのレジよりいいと 応募する人は多いことでしょう。 しかも、中には「 在宅勤務

が可能なお仕事もあり 」???  まさか、マイナンバーカード申込確認を、個人情報の漏洩の可能性

が高い自宅でできるというのでしょうか。

 

「 簡単 」を連発する人材派遣会社

 懸念を抱き、募集している人材派遣会社に バイトを探しているふりをして電話してみると、

「 まあ、そういうのは バイトをする先の規定に従ってもらうことになるので確約はできませんが 」

(あたりまえでしょう!)といいながら、「 とにかく、簡単で初心者でも大丈夫。時給もいいし、

官公庁の仕事なので 確実で簡単ですから ぜひ検討してください 」とのことでした。

 

 個人情報の扱いというのは、もっと厳重な管理のもとで行う大変な仕事だと思っていたので、

「 簡単 」を連発されても、背筋が寒くなるだけです。  

  2022年6月、兵庫県尼崎市の約46万人分の個人情報が入った USBメモリーを委託業者が 無断で

持ち出して紛失した という事件があり、大騒ぎになりました。 紛失したのは、再々委託先の社員で、

多重下請け構造が問題になったばかりです

 

当の自治体が知らなかった「 総点検の前倒し 」

 政府が指示した「 総点検 」については、まだ準備さえできていないという自治体が多いのですが、

なんと、8月末としていた中間報告が、8月上旬に前倒しになりました。しかも、前倒しが指示された

6月30日に、前述の世田谷区長は まだ 何の指示も受けておらず、テレビで知ったとのことでした。

 

  マイナンバーカードでは、コンビニ証明書交付サービスで、別人の住民票の写しが交付される

といったトラブルが続出しました。  

これに対して、河野大臣は 5月末から6月はじめにかけて サービスを停止して一斉点検させ、

6月20日に「 コンビニでの住民票などの誤交付の原因となったシステムの点検が、対象となる

123団体全てで無事終了しました。安心してお使いいただけます 」という安全宣言をTwitterで

出した矢先の同月28日に、福岡県宗像市で 別人の証明書が発行されるトラブルが発生。 

 実は、44自治体で 過去のシステム改修が適用されていないことがわかり、再びサービスの停止に

追い込まれています。

 

  今回のマイナンバーカード総点検について、河野大臣は「 政府の総力を挙げて点検に取り組み、

信頼を回復する 」と語っていますが、多くの自治体では 不可能と尻込みし、バイトに点検を丸投げ

してお茶を濁すということになりそうです。

 

 

第196回国会 2018年(平成30年)1月22日~7月22日

196 4 厚生労働大臣加藤勝信君不信任決議案 本院議了 経過 本文