昔から、日本は 言の葉の咲き匂う国だという。

ここでもまた、上品で甘い言葉が たくさん語られている。

たいへん めでたいことである。

 

氏は、結局のところ、

厚労省の対応は 何の瑕疵もなかったと語られているのである。

実に、政府の広報官の役割を りっぱに果たしておられる。

 

ところで、私の耳には 今、 

福島第一原発事故の際の 専門家たちのそれと同じ調べが、

またしても 鳴り響いている・・・。

 

――― こうした言葉に酔う心象は、日本人の「死に至る病」なのであるが、

      その自覚症状が なかなか出ないところに、

      この病の深刻さがあるのであろう。

 

                 合掌

 

 

神戸大 岩田教授 と 厚労省 高山氏との応酬

賛否両論…岩田教授の告発騒動に見る、日本の深刻な「構造的問題」

新型肺炎の裏で

 

 

高山義浩

  たくさんの意見や質問をいただいてます。罵詈雑言については 読み流していますが (私以外にまで向け

られたものはヘイトとしてブロックしました)、現状を心配しておられる方、施策のあり方を憂慮されている方

など、公衆衛生を担当する医師として応えていく責任があると感じました。

 なお、私は 医療体制を担当していて、クルーズ船について  詳細に知る立場にはありません。ともあれ、

しっかり検証して 今後に活かすべきというのが、前々からの私の意見です。結果論で満足すべきではあり

ませんが、 船中での感染拡大が起きたかどうかは、エピカーブを完成させることで明らかになることでしょう。

 

   さて、多くの方が心配されていること。それは クルーズ船から下船した人たちより、発症者が出る可能性

はないのか・・・  地域での感染拡大の原因にならないか・・・  ということのようでした。

   結論から言って、ほとんどの方は 感染していないでしょう。しかし、発症する方が出る可能性はあると

思ってます。国内で自宅に帰られたのは 970人ですが、PCR検査の感度が 100%ではなく、船内の感染対策

も限界があったことを踏まえれば、発症者を想定しておくべきだと私は思います。

 

 では、公共交通機関で自宅に返して良かったのでしょうか? ここを指摘される方が多かったですね。

私は 妥当だったと思います。PCR検査にて 陰性かつ症状もないことを確認した方々です。前述のように

偽陰性の可能性は ありますが、あったとしても 極めてウイルス量の少ない無症候性病原体保有者です。

症状がない人であっても ウイルス量が上昇しており、感染力を有する原因になっているとの指摘があります

Lirong Zou: N Engl J Med. 2020 Feb 19.)。そのような人が PCR偽陰性となる可能性は低いでしょう。よって、

今回下船した方々が電車やバスといった一時的な空間共有をしたとしても、感染を広げるとは考えにくいです。

 今後、発症してくる方がいるとすれば、それは 自宅に戻られたあと、数日してから発熱や呼吸器症状を

認めてくることでしょう。 ですから、なるべく 自宅で過ごしていただき、症状があれば保健所に連絡するよう

お願いしています。

 

 実は これ、いま 市中で確認されている新型コロナの患者さんの濃厚接触者と同じ対応なのですね。

市中における濃厚接触者は 自宅で過ごすことを認めているのに、クルーズ船の乗客には隔離を継続する

というのは、矛盾していますし、人権にも関わると 私は思います。

 

 繰り返しますが、ほとんどの方は発症しません。ですから、乗客の皆さんも、迎え入れた地域の方々も、

ことさらに恐れる必要はありません。14日間の船内隔離に協力いただき、PCR検査で陰性を確認している

方々なのです。市中における濃厚接触者よりも、よほど厳格な条件をクリアした方々であることを理解して

ください。

 

 だったら、市中における濃厚接触者も隔離しろ! という声が聞こえてきそうです。そう、完全な感染管理

を求めるのであれば、それが一番だ と 私も思います。 ただし、日本は憲法に基づいて施政が行われる

民主国家です。 隔離というのは 人権の制限であり、濫用すべきではありません。だからこそ、国会で議論

したうえで 感染症法が定められ、それに基づき入院勧告が行われているのです。法を逸脱して運用すること

は憲法違反です。

 

 しかるに、日本では、濃厚接触者を隔離する法体系にはなっていません。外出自粛を要請するのが限度

です。今回のクルーズ船では、検疫法に基づいて 「 手続きが終了するまでは 入国を認めない 」という法理

によって、事実上の隔離を行ってしまいました。ですから、「 あれは人権侵害なのではないか! 」という声の

方にこそ、むしろ 私は丁寧な説明が求められていると感じています。

   いわんや、下船させて 検疫手続きが終了した方々について、さらに 長期間の隔離を継続するなどでき

ません。症状を確認いただきながら、外出自粛をお願いすることが法的な限界ですし、感染対策上もそれで

よい と 私は考えています。

 

 以上、私見を述べさせていただきました。それぞれの専門家が立場を離れて、自由に見解を述べられる

社会であってほしいと思ってます。

 

                                                以上