敵国条項(Enemy Clauses  第53条、第77条、第107条、

   国連憲章テキスト | 国連広報センター

 

 

第8章 地域的取極

 

第52条

  1. この憲章のいかなる規定も、国際の平和及び安全の維持に関する事項で地域的行動に適当なものを処理するための地域的取極又は地域的機関が存在することを妨げるものではない。但し、この取極  又は機関及びその行動が国際連合の目的及び原則と一致することを条件とする。
  2. 前記の取極を締結し、又は前記の機関を組織する国際連合加盟国は、地方的紛争を安全保障理事会に付託する前に、この地域的取極または地域的機関によって この紛争を平和的に解決するように  あらゆる努力をしなければならない。
  3. 安全保障理事会は、関係国の発意に基くものであるか安全保障理事会からの付託によるものであるかを問わず、前記の地域的取極又は地域的機関による地方的紛争の平和的解決の発達を奨励しなけ ればならない。
  4. 本条は、第34条及び第35条の適用をなんら害するものではない。

  

第53条

 

  1. 安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極または地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて 又は地域的機関によってとられてはならないもっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの 又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いて この機構が この敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする
  2. 本条1で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中に この憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される。

 

 

第12章 国際信託統治制度  

 

    ・・・
第77条
  1. 信託統治制度は、次の種類の地域で信託統治協定によってこの制度の下におかれるものに適用する。
    1. 現に委任統治の下にある地域
    2. 第二次世界大戦の結果として敵国から分離される地域
    3. 施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域
  2. 前記の種類のうちのいずれの地域がいかなる条件で信託統治制度の下におかれるかについては、今後の協定で定める。
 
第17章 安全保障の過渡的規定
   ・・・
第107条

  この憲章のいかなる規定も第二次世界大戦中に この憲章の署名国の敵であった国に関する行動で

 その行動について責任を有する政府が この戦争の結果としてとり 又は許可したものを無効にし、又は排除

 する ものではない。

 

第18章 改正
第108条

  この憲章の改正は、総会の構成国の3分の2の多数で採択され、且つ、安全保障理事会のすべての

 常任理事国を含む国際連合加盟国の3分の2によって各自の憲法上の手続に従って批准された時に、

 すべての国際連合加盟国に対して効力を生ずる。

第109条
  1. この憲章を再審議するための国際連合加盟国の全体会議は、総会の構成国の3分の2の多数及び  安全保障理事会の9理事会の投票によって決定される日及び場所で開催することができる。各国際連合加盟国は、この会議において1個の投票権を有する。
  2. 全体会議の3分の2の多数によって勧告されるこの憲章の変更は、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国際連合加盟国の3分の2によって各自の憲法上の手続に従って批准された時に効力を生ずる。
  3. この憲章の効力発生後の総会の第10回年次会期までに全体会議が開催されなかった場合には、これを招集する提案を総会の第10回年次会期の議事日程に加えなければならず、全体会議は、総会の構成国の過半数及び安全保障理事会の7理事国の投票によって決定されたときに開催しなければならない。
                                                                          

  ※ 1991年、イタリアは 国連総会において、敵国条項の削除を含む国連制度の改革をもとめた。 また 第二次世界大戦の

   の終結50周年にあたる1995年には、日本国やドイツ連邦共和国などが国連総会において第53・77・107条を憲章から

     削除する決議案を提出し、12月11日の総会において賛成多数によって採択されてもいる(賛成155、棄権3(北朝鮮、

   キューバ、リビア)。

      そこでは、条項が時代遅れ(obsolete)であることが認識され、削除(deletion)に向けて作業を開始することが決議された。

  また戦争終結60周年にあたる2005年の国連首脳会合においても削除を決意することが確認されている。

         国連憲章は 一つの国際条約に該当し、この採択が効力を有し正式に改正(この場合は規定の削除)が為されるためには、

   憲章108条の規定により、総会の構成国の3分の2の多数で採択され、かつ安全保障理事会のすべての常任理事国を含む

   国際連合加盟国の3分の2によって批准されることが必要であり、これにより すべての国連加盟国に対して効力が発生する。

   批准手続きの詳細は 各国で異なるが、通常、批准には 各国政府による最終確認と同意過程を経た上で、これを議会が

   承認することが必要とされるといった複雑かつ迂遠な手続きを踏まなければならない。

   こうした状況から、第53条と第107条の削除を決議した国連総会採択から 月日を経た今日において、同採択を批准した国

   は 効力発生に必要な数には及ばず、敵国条項は 依然として憲章に姿を留めたままとなっている。敵国条項の存在が現代の

       安全保障体制において現実に与える影響は 極めて軽微であると考えられているが、多極化を極めた国連中心主義による

       外交の限界を提示する材料の一つとして しばしば論題とされることがある。

 
     これらの条文は、敵国が敵国でなくなる状態について言及しておらず、
 その措置ついてもなんら制限を定義していない。このため
「 旧敵国を永久に無法者と宣言する効果 」があるとされ旧敵国との紛争については
「 平和的に解決する義務すら負わされていない 」と指摘されている
 
 
 敵国とは、
   ○赤尾政府委員 お答えいたします。
     今先生から国連憲章に言う敵国とはどういう国を意味するのかという御質問でございますけれども、
    これは今御指摘の五十三条及び百七条に規定されておりますように、第二次世界大戦中に憲章のいずれか
    の署名国の敵国であった国を指すというふうに私たちは解釈しております。具体的には日本ですとか
    ドイツですとかイタリア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドでございます。