債務貨幣のシステムデザイン欠陥
 

  銀行は無から預金を信用創造

 

    次に、民間銀行は 信用創造で、無からお金をつくることができるという話。

                                                     この忍者の絵は 公共貨幣フォーラムがつくったもの。

お金とはなにか

 

  例えば、我々が 100万円を銀行に預金すると、100万円という預金通帳が作られる。

 銀行は この預かった100万円を 誰かに貸し出す。その結果、銀行を通じて 200万円というお金が

 流通するようになる。まさに 忍者の分身の術のようだ。

  注意したいのは、この流通額の半分の100万円は 銀行預金としてしか使えないということだ。

 現金としては使えない。我々も利用しているクレジットカード、信用払いやローンなど、すべて

 預金口座のみで決済が行われる。キャッシュはいらない。預金をもとにさまざまな決済ができる、

 これが 無からつくられたお金が流通できる仕組みである。しかも、銀行からこのお金を借りると

 必ず利息がついてくる。

 

     もう少し詳しく見てゆく。

お金とはなにか

 

 

  

  現在、日本には、日銀が発行した 101兆円の銀行券 と 4.7兆円のコイン(政府貨幣)とがある。

 それ以外に、銀行が 預金の保証として 日銀に預けている準備金があり、これが積もり積もって 2012年

 の58兆円から 昨年10月現在で 約6倍の約370兆円になっている。この370兆円の準備金を元にして、

 民間の銀行は 615兆円の預金を、無からつくっているのである。

 

  我々が 615万(615兆)円の預金は いつでも、銀行から現金で引き出せると思って、一斉に 銀行に行く

 と、銀行には この615万(615兆)円分の準備金はない。この図の場合だと、およそ 250兆円足りないわけ

 である。

  黒田総裁が 量的緩和ということで、約370兆円へ と この準備金を積み上げた。以前には 58兆円しか

 なかったが、今では これだけのお金が積みあがっているのである。

 量的緩和で積み上げたお金は 準備金(銀行の預金)として増えただけで、企業や家計の預金は そんなに

 増えていない。

 

  教科書では、中央銀行は いつでも お金をつくり制御できると教えるが、制御できるのは この準備金のみ 

 で、企業や家計の預金は 制御できない。これが 経済学の大きなウソである。

  実際には、企業や家計や政府が 銀行に お金を借りにきて、預金というお金が 信用創造で生まれてくる

 のである。この預金が 全体の85%を占めている。これが 債務貨幣の正体である。

  銀行券の発行が 民間の中央銀行に独占的に支配され、それを元に 民間銀行が何十倍のお金をつくり

 だしている。そして そのお金すべてに 利息がついて、我々が利息を支払わされている。

 ――― これが債務貨幣システムの正体である。

 

 債務貨幣の欠陥デザイン

お金とはなにか

 

   この債務貨幣システムが機能すれば良いが、実際には 機能していない。何が起きているかというと、

 バブルで信用創造したお金が膨れ上がって インフレとなったり、不況になると お金が収縮してデフレとなり

 大量の失業が発生するといった、好況と不況が繰り返される。 景気変動の元凶となっているのである。

お金とはなにか

  

  2番目には、誰かが借金しないと 経済が必要とするお金が生まれないのだが、90年代のバブル崩壊後

 は、民間企業に代わって 政府が借金を肩代わりさせられてきた。 40年前の政府には 借金が無かった

 のだが、今では 約1000兆円の借金をしている。 政府が借りているお金は、平成29年度で865兆円となって

 いて、国民一人あたり約700万円の借金になる。 とうてい 返せるわけがない借金。それ以外にも特別会計

 ということで 100兆円、政府が隠れて借金をしている。マスコミにも教科書にも出てこない。まさに裏金。

 政府の一般会計予算にも入ってこない。

 

  この1000兆円を どうやって返済していくのかだが、まず一般会計で 新たに 33兆円借金しないとやって

 いけない。これが新規借り入れ。それから 約100兆円が借り換え。それに 特別会計の裏借金が12兆円、

 総額で 毎年150兆円 (国民一人当たり約120万円) もの借金返済に迫られている。

 この危機的状況に、我々はほとんど気がついていない。借り換えを拒否されるだけで、たちまち日本政府

 は倒産してしまう。今や日本政府は財政破綻寸前である。

お金とはなにか

 

  さらに3番目には、非正規雇用が増えてきている。現在、10人に 4人は非正規社員である。

 表で分かるように、正規社員は 平成元年以来、ほぼ 3,400万人とほとんど変わっていない。新しく増えた

 雇用の ほとんどが非正規雇用。パートやアルバイトや契約社員などである。

 

お金とはなにか

 

   この30年間で 日本は ほとんど経済成長していない。それに対し 中国は すごい勢いで成長している。

 アメリカも成長している。 これが 日本における債務貨幣システムの大きな欠陥である。今の日本には

 明日に希望が持てない、経済成長の喜びを知らない若い世代が たくさん生まれてきている。若い人に夢を

 与えられないことに、胸が痛む。 その原因は 債務貨幣システムにある。

 

お金とはなにか

 

     まとめると、バブル・不況が生じる、政府の借金が増える、所得格差が拡大する、環境が破壊される
  ――ー 債務貨幣システムは こういう帰結になる。与党であれ、野党であり 誰が政権を担っても結果は
  同じである。 債務貨幣システム自体に、システムデザイン欠陥があるからである。