1. ダーバン会議 人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容に反対する世界会議」  
  2.                    外務省      平成21年4月24日

1.概要

(1)本件会議は、2001年に開催された「人種主義に反対する世界会議」(ダーバン会議)において採択された宣言及び行動計画(人種差別の原因、差別撲滅の施策、被害者の保護救済等を目指すもの)の履行・進展状況のレビューを目的として、4月20日~24日にジュネーヴで開催された。

(2)昨年より開始された今次会議の成果文書を巡る協議では、2001年世界会議で議論が紛糾した、アフリカ諸国による奴隷制に対する謝罪補償要求及びイスラム諸国によるイスラエル非難等により議論が再燃。米、イスラエルのほか、建設的な議論が期待できないなどとして、独、伊、蘭、加、豪、NZ等が本件会議への不参加を決定したが、最終的には右論点に言及しない形で、人種差別撤廃という本来の目的を再確認し、2001年の宣言と計画のレビューや今後の施策を含む成果文書がコンセンサスで採択された。

(3)なお、会議初日の ハイレベル・セグメントでの演説で、イランのアフマディネジャード大統領がホロコーストの事実を疑問視し、イスラエルをパレスチナ占領地における人種差別政府である等の発言を行い、参加EU各国は議場から退席し、EUからのハイレベルの出席者はいなくなった。その後の各国の演説では、我が国を含む多くの国が、右発言を非難する発言を行った。また、潘基文国連事務総長は、イランの右発言を非難する声明を発表し、ピレー国連人権高等弁務官は、右発言のような事態への最善の反論は、会議からの撤退やボイコットではなく、返答し是正を行うことであるという声明を発表した。

2.我が国の対応

(1)米国をはじめとする複数の西欧諸国が会議不参加を決める中で、わが国としては、本件会議の本来の趣旨である人種主義・人種差別への反対の姿勢を示すとの考え、また本件会議を対立の場とするのではなく建設的対話の場としたいとの考えから、会議参加の対応をとった。(ウホモエビ人権理事会議長より、我が国代表団に対して、我が国が本件会議をボイコットしなかったことに対して謝意表明があった。)

(2)我が国は、成果文書の文言交渉で、イスラムに対する差別禁止やイスラム恐怖症等への言及に固執するOIC諸国に対し、人種差別撤廃という会議の本来の目的を踏まえ、特定の国や宗教に言及すべきではないこと、他の宗教も含めたバランスの取れた一般的な書きぶりとすることを 一貫して主張してきたところ、今回、一般的表現の成果文書が採択されたことで、成果文書において一定の貢献をしたと思われる。

(3)なお、イラン大統領の演説に対しては、我が国代表団のステートメント(英文)の中で「この会議を対立的な場として利用するいくつかの国の演説は本会議の目的に反する内容を含むものであり非常に残念である。この文脈で、本会議でイラン大統領が行った発言は遺憾である。」旨言及し、これを非難した。

3.評価

 人種差別撤廃という開催目的を再確認し、2001年の宣言と計画のレビューや今後の施策を含む成果文書が、EU、アフリカ、OIC加盟国等を含めコンセンサスで採択された。一部の主要国が本件会議に参加しなかったことは残念であったが、成果文書が採択され、今後、本件会議参加各国が反人種主義及び人種差別の撤廃に向けて継続的な施策を実施していくことが合意されたことは評価される。

【参考1】「ダーバン宣言及び行動計画」(2001年)

 「宣言」(Declaration)と「行動計画」(Program of Action)で構成され(宣言:122 パラグラフ、行動計画:219 パラグラフ)、奴隷、奴隷制度、奴隷貿易及び植民地主義等が人道に反する罪であるとの認識及び人種主義、人種差別、外国人排斥の撲滅を中心に、移民、先住民、宗教、貧困撲滅、人身取引、女子及び児童の権利と幅広い分野に関し言及がなされている。

【参考2】今次採択文書(骨子)

1.国、地域及び国際的レベルにおける全ての利害関係者によるダーバン宣言・行動計画の進展についてのレビュー及びその実施(現代的形態の人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容の評価を含む)。

2.既存のダーバン・フォローアップ・メカニズムと人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容の問題を扱う他の関連国連メカニズムの機能を高めるための有効性評価。

3.人種差別撤廃条約の普遍的批准及び実施、並びに人種差別撤廃委員会による勧告の適切な考慮の促進。

4.人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容に対する闘いにおいて、国、地域及び国際的レベルで達成されたベスト・プラクティスの特定とシェア。

5.ダーバン宣言・行動計画の採択以降の進展を踏まえつつ、ダーバン宣言・行動計画の実施を促進し、それについての課題及び障害に取り組むことを目的としたあらゆる形態の人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容と闘い撲滅するための全てのレベルにおける一層の具体的措置及びイニシアティヴの特定。

 

  

  ★2001年ダーバン会議    

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     https://www.youtube.com/watch?v=D4ZgOywtwNw