名古屋に居る時は「オレ達の木」というユッカの木があった。これはよーこが結婚前に実家の庭に生えていた大きなユッカの木から、その小さな枝を切ってプレゼントしてくれたものだ。もらった枝を挿し木して鉢に植えたら根付いて成長しはじめた。結婚した時、だいぶ育ったそのユッカの木を新居に持って来て「オレ達の木」と名付けたのだ。
オレ達の木は大きな鉢に植え替えをするたびにすくすく大きくなっていった。北区から西区へ、貝田町から浅間町へ、名古屋から八ヶ岳へ、八ヶ岳からまた名古屋へ、何度も何度も引っ越しをしたが、その都度オレ達の木も一緒に引越しをした。
それまでは何処へ引越しをしても常にマンションだった。だが、ついに庭付きの戸建ての家に住むことになった。蝮ヶ池もののけハウスである。引っ越した時、オレ達の木のさらなる成長を願って、庭に地植えにしたのだ。
それから10年後、八ヶ岳移住。引越しの準備をしている時、オレ達の木の引越しも考えた。しかし、オレ達の木は地に力強く根を張り、巨大化していたのだ。一緒に連れて行くのはとても無理だった。
<枝分かれし、二階まで届こうとするオレ達の木>
今思えば、最初によーこがプレゼントしてくれた時のように、オレ達の木の枝を一振り切って、持って来ればきっと八ヶ岳でまた根を張ったことだろう。
ただ、別に過去を振り返って後悔したり嘆いたりしているのではない。この春、八ヶ岳もののけハウスのテラスから、見える場所に桜の木を植えようとなった時、名古屋に残してきたオレ達の木のことをちょっと思い出しただけだ。その後、オレ達の木がどうなったのかは知らない。
もののけの森に植えた桜の苗木は、うまく根付いてくれたようだ。来年の春はきっと花をつけてくれることだろう。これが二代目「オレ達の木」となった。
去華就実。花散りて次に葉を茂り実をむすぶ。
諸行無常とは、常に前向きであると言うこと。常に前進せよということに他ならない。何気ない日常も、ものすごい生命とエネルギーに溢れている。
<花咲き花散る桜の木>

