十勝岳 | 独り言ちの山暦

独り言ちの山暦

「風の又三郎、又三郎、早く此さ飛んで来!」「この頂で赤道から北極までの大循環の自慢話を聴かせてくれ。」

 

2024.7.21。

猛暑の中、十勝岳を登ってきた。

早朝、6時前にスタートしたが駐車場は満杯。

仰ぎ見る十勝岳はこれから気温が上昇することを

予測させるには充分な熱い威容を見せていた。

今日は記念日になる筈である。

予てから登山デビューを待ちかねていたTOKUさんの

奥様の初登山日であるからだ。

一歩踏み出した時から暑い、と感じた。

充分に水分をとりながらユッタリと歩を進める。

「優しい、本当に優しい」

TOKUさんは細目に奥様に声掛けし、水を手渡し汗を拭って

やり、色々と気遣う。仲睦ましいご夫婦だ。

こんなに優しく労わってくれる旦那さん。さぞかし奥様は幸せ

でろうな、とKAWAさんと語り合う。

時代が違うのかな、とも思てみたが。

KAWAさんご夫婦も私と比べれば充分に奥様ファーストである。

価値観の違い、愛情の差なのかな。

途中では栃木県宇都宮からの女性グループを追い越した。

今日は道外からの登山者が多いようだ。

笑顔が映えた宇都宮からのグループとはその後再会することは

なかった。もしかすると途中で断念?

何度も休憩をとりながら圧倒的に雄大な道に歩を進める。

富良野岳には癒されるけど、暑さが容赦なく体力を奪っていく。

初めての登山、やはり過酷な条件だったようだ。

7時15分、避難小屋に到着。

スタートから1時間25分。避難小屋には多くの登山者が休憩

を取っていた。

ここで長めの休憩である。

愛知県安城市からの登山グループとのつかの間会話。

遠来の岳人との山談議は楽しいものだ。

愛知県グループは下山は上ホロ経由で十勝岳温泉に降りると言う。

明日は旭岳から間宮岳、中岳分岐、中岳温泉、据合平を

廻る計画のようだ。折角の北海道の山旅、明日も天気に恵まれればと願った。

十勝岳避難小屋から擂鉢火口へと歩を進める。

途中で足が攣ってきたようである。TOKUさんが湿布を張ったり

懸命に手当てをする。「本当に優しい」。

痛む脚で、それでも一歩一歩のぼり始める。

これから先も厳しい登りが続く。そして気温は上がり続ける。

あの大きな岩まで頑張ってみよう。

そこで判断しよう。

ここらが限界だと思った。

初登山で、この猛暑の中、ここまで頑張っただけで素晴らしい。

無理は禁物だ。

8時25分。

残念ながら撤退である。

TOKUさんが2人でユックリと戻るので私たちに頂上へ

行って来てくださいと言う。

迷ったが天気も不安なく、多くの登山者がいるので大丈夫だろう

とKAWAさんと頂上を目指すこととした。

それでも気が揉める。それからは休むことなく登り続けた。

体力的にはきつかった。久しぶりに登山の辛さを味わった。

写真を撮るときの一瞬の休みの有難さを甘受しながら頑張った。

幾人かの登山者を躱し最後の急登に耐えた。

いつもならこの辺りに辿り着けば風が癒してくれるのに

そよとの涼風もなかった。

数を覚えていないくらい十勝岳を登っているが

この暑さの経験は初めてである。

9時30分、頂上。

凄い数の虫が飛び回っていた。

名の分からないトンボのような虫だ。この虫にとっては最適

な環境なんだろう。

何時ものように何葉かの写真を納めた。

美瑛岳と奥のトムラウシ山。この光景は何度みても

素晴らしい。

気温の上昇で彼方は靄っているようだ。

 

頂上では写真をとり休むことなく下山開始。

このまま下山しようと思ったが、体力的に耐えられなくなった。

火口を眺めながら15分ほど休憩。そして下った。

避難小屋に辿り着いた。何かあればTOKUさんにはここで待機

していて欲しい、と伝えてあった。

避難小屋を無事に過ぎて下山したようだ。安心した。そして水を摂っ

て10分ほどの息ついた。

12時05分下山終了。

TOKUさんは11時に下山と登山届にあった。既に帰宅の途についたようだ。

無事の下山を確認できて安堵の息を吐いた。

今年一番の猛暑日。旭川では35度を記録した。

願いはこれに負けることなく、そして懲りることなくTOKU奥様には

登山を続けて欲しいことだ。

訊くところによると、十勝岳登頂を目指しリベンジ心を燃やしている

とのことである。天晴である。

この優しい旦那が傍に付いているのだから傍がそんなに心配すること

でもないようだ。