見晴山~円山(名寄市) | 独り言ちの山暦

独り言ちの山暦

「風の又三郎、又三郎、早く此さ飛んで来!」「この頂で赤道から北極までの大循環の自慢話を聴かせてくれ。」

 

 

    2020.1.26。

    昨日は真冬らしい纏まった雪が降った。

    久しぶりに除雪に汗を流すと、途端に雪が倦むらしものになってくる。何とも目先の

    利害以外に価値基準を見いだせないかのような、自分をさらけ出すようでお粗末さき

    まりないのだ。

    除雪と降り続く雪に恐れをなして、当初は25日に計画していた名寄市の低山2座を

    一日繰延して、ともかくは登ってきた。

 車での往復4時間、山行時間は3時間もあればなんとかなると踏んでいた。

 旭川を6時30分に出発し、登山口には7時55分に到着した。

 名寄から国道239号を下川町に向かい名寄ゴルフ場を過ぎた7線橋で左折し橋を

 渡りきった時点で左折。後は除雪された道を進むとやがて浄水場である。除雪はここ

 まである。除雪最終地点からスタートする。8時11分。

 

 今日はkawaさんとの山行である。この地点にも林道があった。地形図上の林道では

 なかった。ここを進むと石切場の頭に出た。

今日は晴れている。こんな幸運も時として訪れるものなのだ。気温はマイナス18.5度。

後は右手に沢を望みながらその稜線沿いを進んだ。 昨日来の積雪をラッセルである。2人で交互に先頭を替りながら進むが、鼻歌

混じりとはいかない。

 地形図上にある林道にぶつかった。そこにはブロックの工作物が凍てつくように蹲って

あった。何であるか、または何であったかは思索の外である。人の息吹を感じないもの

はやはり不気味ではあるに違いないが。

  ここからは林道を歩く。左手には見晴山が見えてきた。こちらからは断崖絶壁

の岩肌を望むだけだ。この岩壁はクライミングの垂涎の場であるとかの仄聞する。

林道を沢の最終地点co330から斜面に取り付く。針葉樹が密生する斜面を登るが

斜度は緩やかな方だろう。考えてみれば今回初めての本格的な登りであった、

凡そ登り切ると大岩が進路を塞ぐ。ここを右へとトラバースして頂上に向かった。

後のことであるが、円山に向かう時もこの大岩は同じようにこのルートをトラバースし

たものだ。

 9時56分、蒼空映えるkawaさんが立つ頂上。ここまで3.1km。

 1時間を踏んでいたが1時間45分も要していた。

頂上は高度感があった。西側、南側はスッパと切れ落ちている。

もう一歩先へ、と言われても足元の雪が崩れ落ちれば明日はないはずだ。

だからこその、高揚感、達成感があったのには間違いがない、と述懐するのだ。

 標高417mの頂きであるあるが、名は体を現すごとく見晴らしは抜群である。

 眼下には名寄市街。王子製紙の工場煙が立ち上っていた。その工場も間もなく

 操業停止とか。地方はますます過疎化が進展していくのだろう。

 

 遥か日本海方面にはピッシリ山、等の天塩山塊。

 心素直に見ればどこの山、山並みも日本アルプスに違わない気品、美しさが漂うもの

 である。

 頂上には2ヶ所にピンクテープが括りつけられていた。

次の標的、円山に向かった。一旦下って緩やかに登る。

単調な歩きではあるが、太ももに乳酸が溜まってきた。膝下までのラッセルが

知らず知らずにダミージを与え続けていたようだ。

太ももに違和感。でも頑張り進むしかない。

kawaさんも弛緩なく登り続ける。そのエネルギーは蒼空でありこの雪が

脚色するひと齣ひと齣であるのだろう。

11時12分、円山の頂上(540.4m)。距離5.0km。見晴山から1.9km。頂上を示すテープ

等はなかった。それだけに登る人も少ないのだろうか、とも思う。

そこは平地では味わうことできない雪と森閑の世界であった。

 木々の間からはピアシリスキー場も見えた。   

味わった感動をどれだけ直叙的に表現できたら、いいだろうと思う。

そうは思うが自然美は人の持つ表現術などを遥かに上回ってしまうのである。

円山と言う山の頂上に蒼空があって、緑を纏う事なき、静かに木々が眠るように

屹立している。そこに儚い雪帽子かな。

本当に晴れて良かった。

そして今日にして良かった。

そんな偶然の出合い、人と競うことない幸福こそが生きることを勇気づけてくれる

 ものなのだ。

 

 12時49分に下山を完了した。総行程距離8.8km。

 

 下山後のことではあるが、今日は嬉しかった、そして良かった。

 大相撲では幕尻の徳勝龍が優勝した。

 なにが良かったと言って、多分八百長がなかったと思うからだ。何十回と

 優勝している横綱にはその潔癖性、透明性がない。常に上はその位階を守

 るために下を犠牲にする。権力とはそんなものだ。

 守ることなく懸命で掴んだ本物の優勝に心からおめでとうを言いたい。