去年2月、プーケットのイタリア料理のファインダイニングの先駆け、アクアの10周年記念イベントが行われました。

 

 

イタリア・サルディニア出身のAlessandro Frau (アレッサンドロ・フラウ)シェフは、元々、Sheraton Grande Laguna in Phuketのエグゼクティブシェフで、12のレストラン、130人のキッチンスタッフを率いていましたが、立場上管理職としての仕事も多く、料理そのものがしたいと、独立を決意。2008年に、自らのレストラン、Acquaをオープンしたという経緯があります。

 

プーケットや、首都バンコクからのみならず、香港などの海外からも、長年の顧客や、シェフ仲間たち200人弱が集まって、記念日を祝いました。シェフ仲間たちはそれぞれにパーティーメニューを提供。

 

タイ・バンコクからは、「ラトリエ・ジョエル・ロブション」のOlivier Limousinシェフ、

 

スコタイ・ホテルの「ラ・スカラ」からはDavid Tamburiniシェフ、

 

 

「ラ・カサ・ノストラ」のNino Scognamilloシェフ、

 

 

 プーケットの「スアイ・レストラン」からは、Tammasak Chootong シェフが参加。

 

 

さらには、香港のミシュラン三つ星レストラン、「Otto e Mezzo 8 1/2」から、ゼネラル・マネージャーのMarino Braccuさんが。

 

 

実はMarinoさんの特技はイタリア伝統のScroppinoという冷たいカクテルで、その腕前を披露しました。もちろん、Alessandro シェフ本人も腕を振るい、その様子を見ていると、料理への愛情で繋がっている仲間たち、というのがよく伝わってきます。

 

 

Alessandro シェフにお話を聞くと、10年前を振り返ると、今でこそ、高級リゾート内などを中心に、プーケットにも美食のレストランが増えたものの、当時は全く違ったとか。

 

 

美しい白い邸宅風の建物一つとっても、カジュアルな雰囲気のレストランが中心だったプーケットでは、異色だったそう。

 

 

「10年の節目を迎えて、レストランを建築していた頃のことを思い出します。毎日、建築中のレストランに来てはどうやったらこの場所が更に良くなるかのアイデアを得るために、考えていたものです。このレストランは、隅から隅まで、私が自分で設計しました。それが日に日に形になっていくのを見るのは、とてもエキサイティングな瞬間でした。こう言ったスタイルのレストランは当時珍しかったので、『料理は美味しいけれど、雰囲気がミニマルで冷たすぎる』というコメントをもらうこともありました。新しいレストランだったので、誰も私たちのことを知りませんでしたから、お客様との間に信頼と関係性を築く必要がありました」

 

確かに、10年たった今でも、プーケットの街中はのどかな雰囲気を残しており、Acquaの建物は目立つ存在。スタッフの制服も、モノトーンのスタイリッシュなもので、都会的な印象です。

 

 

(レストランについての過去記事はこちら

 

「他にも、駐車場が足りないとか、看板がよくわからない、とか、色々言われましたね。でも、今はその多くが問題ではありません。看板があろうがなかろうが、私たちの場所を探してきてくれますし、もし駐車場が十分でないなら、それに代わる方法を見つけます。今プーケットに来る人は、もしファインダイニングの体験がしたいなら、アクアを逃してはいけないと言うことを知っていますし、中には、ここに来るためにプーケットに来た、と言ってくれるお客様もいらっしゃるのは、とても幸せなことだと思います」

 

 

しかし、プーケットならではの難しさもあるという。

 

「2009年の開業からずっと、モダンな本物のイタリア料理をモットーにやってきました。その当時はそういったコンセプトの店はとても少なかったのです。

イタリアとヨーロッパからの本物の食材を輸送し、本物の味を提供してきましたが、今でも、時にして「高価なレストラン」と言われることがあります。それに対応するために、1200タイバーツ(約4220円)からの、手頃な価格から始まる幅広いメニューを用意しています。

もちろん、プーケットにもフーディーの方は来てくださいますが、その数は十分ではありません。いつか、プーケットが、香港やシンガポール、バンコクや東京のように、人々がファインダイニングのためにやってくるような食の旅先になれば良いと思います。

 

(プーケットのAndara Resort & Villas)

 

そう言った意味で、ミシュランガイドブックがプーケットにも上陸したのは良いことですし、自分たちをアップデートさせて、食材、流行、調理法、プレゼンテーションなどにおいて進化していかなくてはなりません。だから、自分のスタイルも『進化するイタリア料理』でありたいと思っています」

 

(Andara Resort & Villasからの夕焼け)

 

今回、Andara Resort & Villasに宿泊しましたが、タイの伝統建築を生かしたゆったりとした部屋の作りや、自然の美しさを満喫しました。

 

Alessandroシェフも、「ライフスタイルの面では、プーケットは天国のような場所」だと言います。でも、ビジネスでいうなら、ハイシーズンは年の4−5ヶ月しかなく、人口も100万人程度、バンコクのような大都市の約10分の1なのだとか。だからこそ、この場所で10年、リゾート内でない街のレストランとして成功し続けてきたのは、大変なことだったのだろうと想像します。

 

「プーケットで成功するならば、どこでも成功できるだろうと思います」と語るシェフ、将来的に、バンコク、もしくはヨーロッパにアクアをオープンするという夢を持っているそうです。

 

 

 

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■Acqua Restaurant Phuket(アクア・レストラン・プーケット)

営業時間:ディナー 17:00~23:00、無休

住所:324/15 Prabaramee Road - Kalim Bay

Patong - Kathu - 83150 Phuket

Thailand

電話:+66 76 618127

https://www.acquarestaurantphuket.com/