ラグジュアリーなリゾートホテルが立ち並ぶプーケットですが、一歩リゾートの外に出ると、ひなびた田舎町の雰囲気を残すエリアが多いもの。そんな街中にあって、一味違う洗練されたイタリアンを提供しているのが、Acqua Restaurantです。
Thailand Tatler Best 20 Restaurants in Thailand2018に選ばれるなど、多くの賞を受賞。
キッチンを率いるのは、イタリア・サルディニア出身で、メキシコ、スウェーデン、フィンランド、パリなどで経験を積んだAlessandro Frauシェフ。2004年にSheraton Grande Laguna in Phuketのエグゼクティブシェフに就任、12のレストラン、130人のキッチンスタッフを率いていましたが、立場上管理職としての仕事も多く、料理そのものがしたいと、独立を決意。2008年に、自らのレストラン、Acquaをオープンします。
イタリア人シェフらしく、スタイリッシュにデザインされたレストランに一歩足を踏み入れると、上質なリゾートドレスに身を包んだ欧米人などで賑わいを見せていて、まるでヨーロッパのリゾート地に来たかのような雰囲気。
とはいえ、敷居が高すぎる訳ではなく、小さな子ども連れの姿も見かけました。
オープンキッチンになっているので、活気ある厨房の様子を眺めることもできます。
今回は、シグネチャーを集めた特別なコースを作っていただきました。
パンも全て自家製です。
Sardinian sausage, Pecorino cheese, green olives on Sardinian pane Carasau bread
サルディニア出身のシェフだけに、自分の郷土の味を知ってほしい、とサルディニアの食材を集めた前菜から。
海沿いのリゾート、プーケットならではのサンゴをかたどった皿のプレゼンテーションなどにも、シェフのこだわりが見られます。
Pane Carasauと呼ばれる、サルディニア伝統の天然酵母の平たい自家製パンの上に、ペコリーノチーズやサルディニア産のサラミのようなソーセージ、緑のオリーブを乗せて。
Frittura of Sicilian Red prawns Rosso di Mazara del Vallo Riserva
Alessandroシェフが「世界一美味しい海老」だという、シシリア産の赤海老、マザラ海老のフライ。表面はカリッと、内側はジューシーで、シェフこだわりの甘い身と、味噌のコクを楽しめます。
Home made smoked Scottish salmon, mustard mayo and ikura
薄いチャバタに乗っているのは、地元産のオークの深みのある香りのスモークをかけた、脂の乗った自家製スモークサーモンに、マスタードマヨネーズ、イクラ。
French Oysters Gillardeau, served with condiments
フランスの「牡蠣のキャデラック」と呼ばれることもあるGillardeauの牡蠣に、やや甘いラムネのような味わいの、ジントニックの球体を合わせて。牡蠣の上に水滴のように見えるプレゼンテーション。お好みで、チリソースとシャロットビネガーを添えてあります。
Tuna and swordfish tartar on avocado mash, Hokkaido sea urchin, salmon eggs, caviar, burrata cheese and rice crispy
キハダマグロとタチウオのタルタル。マグロもタチウオも、サルディニアでは塩漬けにしてからスモークにしたり、生で食べる習慣があるのだとか。そんな二種類の魚をスモークし、「赤と白の彩りも綺麗に見える」ことから、混ぜてタルタルに仕立ててあります。
マグロと相性のいいアボカドはシトロネラの香りを添えて、濃厚さが重なる北海道産のうに、いくら、ブッラータチーズ、Arenkha caviar と呼ばれる、ニシンの仲間の卵を添えて。
ここで、ワインは大麦のパフのような香ばしさのある、イタリアの白ワインに。
Scallops carpaccio served with black truffle, raw asparagus in olive oil and lemon juice and truffle essence
アメリカ産のホタテのカルパッチョは、とても柔らかいテクスチャ。薄切りにしたアスパラガス、シトロンとレモンのドレッシング、今の時期ということで、ウンブリア産のサマートリュフのスライスをかけて。冬の時期はピエモンテの黒トリュフ、アルバ産の白トリュフを使うこともあるそうです。
Sous vide cooked Octopus salad, marinated in extra virgin olive oil, lemon and vinegar, fennel leaves, celery and Taggiasche olives DOP
61度で低温調理したタコのサラダは、Taggiasche olives DOPという、トップクオティのエキストラバージンオリーブオイルとレモン、酢であえて、フェンネルの香り、みずみずしく甘い、ローカルのセロリがアクセントになっています。
Sardines like the Sardines festival in Emilia Romagna, lightly breaded pan fried sardines, smoked paprika, lime mayo,spicy green pepper and home made pickled vegetables
徳吉洋二シェフのシグネチャーを思い出すプレゼンテーションですが、こちらはAlessandroシェフの手描きの「サーディンの骨」が出てくるのが可愛らしい。
子供の頃から行っていたサーディンフェスティバルで、色々なサーディンの料理を食べたという思い出から。ローカルのサーディンだそうですが、とても新鮮、シンプルにフライにしてありました。イタリアの三色旗をイメージしたソースは、スペインのスモークパプリカ、マヨネーズ、グリーンペッパーのマヨネーズで。シンプルだけれども素材の良さが際立つ素朴な美味しさでした。
55 minutes slow cooked egg on a Parmesan cheese fondue, fresh black truffle and crispy pancetta powder
温泉卵とパルメザンチーズのフォーム、黒トリュフとパンチェッタのパウダーという、間違いのない組み合わせ。濃厚なパルメザンのフォームに、とろりとした卵黄がよく合います。
Acqua Signature Tortelli “Il Mare” stuffed with Burrata cheese in a sauce of vongole juice, squid ink, Sardinian sea urchin and marine plankton
「料理はアートピースのようなもの、美味しいことはもちろんだけれども、形や色のバランスがよく、全てが調和していることが大切」と、ビジュアルも料理作りの重要なインスピレーションと語るAlessandroシェフ、こちらは「Il Mare=海」をイメージした、一皿です。ブッラータチーズを閉じ込めたパスタ、トルテッリに、アサリの身ではなく、ジュースだけを使ったソース、イカスミ、サルディニア産のウニ、そしてプランクトンパウダーを散らしてあります。
海の様々な味わいを重層的に重ねた皿で、皿のデザインも海の潮をイメージしたもの。さらに、「食べた後に残るイカスミとアサリのソースが混ざり合った様子も、海のように見えるでしょう」とAlessandroシェフ。
Smoked buffalo mozzarella risotto with Sicilian capers, Cantabrian anchovies, red prawns and caviar
バッファローのミルクで作ったモッツァレラチーズにスモークをかけて、アルデンテのリゾットに、シシリアのpantelleria産のケイパー、カンタブリア産のアンチョビ、赤海老とArenkha caviarを添えて。塩漬けのアンチョビの臭みのないフレッシュさ、マザラ海老のねっとりとした甘み、ケイパーの酸味など、様々な味わいを一つの皿にまとめています。
ここでワインはしっかりとしたボディのある赤に。「サルディニアの最高のワイン」とAlessandroシェフが選んだのは、Turriga Isola dei Nuraghi 2011 Argiolas。カンノナウ、カリニャーノなどの土着品種で作られたワインは、しっかりとした、なめらかなタンニンと豊かなダークフルーツ感、針葉樹林の中を歩いているような香りがあります。
Pan fried USA scallops with Foie Gras, chilly jam and truffle pumpkin sauce.
フライパンで焼き上げたアメリカ産のホタテの貝柱、鴨のフォワグラ、トリュフと相性の良いかぼちゃのピュレを合わせて、フォワグラと相性の良い甘みのソースに。イタリア産のペペロンチーノとパプリカ、玉ねぎ、砂糖とサルディニア産の月桂樹で作った唐辛子ジャムを添えて。
Black cod fish La Maison Atlantique, Italian wild asparagus sauce and Swiss chard
大西洋で獲れたブラックコッドに、イタリアのワイルドアスパラガスのソース、ニンニクとともに炒めたスイスチャードを添えて。ワイルドアスパラガスのソースは、シンプルな野菜のピュレのような素朴な味わい、そこに、日本の白味噌に漬けて香ばしさと甘味を加えた、脂の乗ったブラックコッドがバターのような濃厚なニュアンスを加えます。
Wood fired roasted suckling pig, saffron and violette potatoes, broad beans and it’s own sauce
この日の料理の中で個人的に一番気に入ったのが、この仔豚のロースト。61度で24時間加熱した後、屋外にある薪オーブンで焼き上げています。表面はまるで醤油せんべいのように香ばしくてカリカリ、身はジューシーに仕上がっています。サイドのサフランマッシュポテトはとても香り高いサフランが効いていて、ジュのカレーの香り、アントシアニンのほんの少し収斂性のあるニュアンスの紫ジャガイモのマッシュとの相性も良かったです。サフランの香りが良いですね、とお聞きすると、イタリアの中でも最高級の、サルディニア南部のSan Gavinoのサフランを使っているんだ、と嬉しそうに語ります。
ここからがデザート。
Vanilla flan with moka coffee caramel
ふるふるしたとても柔らかな食感のバニラのフランは、日本のプリンを思わせるような懐かしい味わい。苦味のない穏やかなモカソースを添えて。
Sicilian “Cannoli” stuffed with sweet ricotta cheese, candid orange
chocolate shavings in the Marsala flavored Cannolo
右奥は、シシリアのお菓子、カンノーリ。シシリア産のマルサラ酒で味をつけた生地の中には、甘いリコッタチーズのフィリング、チョコレート、オレンジピールを閉じ込めて。香ばしいピスタチオのアイスクリームを添えて。
Acqua Signature lemon tart with mixed berries
レモンタルトは、とてもなめらかなテクスチャのフィリングに、クッキークラムのベースの素直な味、イチゴのゼリーの球体を散らしてあります。
小菓子は、オルゴールに入ったチョコレートのかかった小さなシュークリーム、フルーツタルト、
Parduleと呼ばれるサルディニアのお菓子。
「酪農の盛んな北部イタリアと違い、南部はバターがあまりなく、代わりにラードをよく使います。こちらも、卵とラード、小麦粉で作った生地にサルディニア産のリコッタチーズ、シシリア産のサフランのフィリングを入れて、オーブンで焼き上げてあるのです」とAlessandroシェフ。
サルディニアを中心とする南部イタリアの食材の良さを紹介したい、というAlessandroシェフの郷土愛を感じる料理の数々。「伝統的なイタリア料理の良さを生かしつつ、モダンな手法も使っていきたい。農家も、新しい品種を生み出すなど、その世界で革命を起こしているでしょう?素材も変わっているのだから、料理も革命を起こさなくては。車と同じで、デザイン(プレゼンテーション)も機能(味わい)も、よりよくなっていかなくてはいけないと思っています」と語ります。イタリア、特に郷土サルディニアの食材の話になると、止まらないAlessandroシェフ。そんなシェフの情熱を傾ける南イタリアからの本場の味わいの食材も織り込みながら、14年間プーケットで過ごしている中で発見したローカルの食材も使いこなした料理の数々、雰囲気も含めて上質な時間が過ごせるイタリア料理のお店です。
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■Acqua Restaurant Phuket(アクア・レストラン・プーケット)
営業時間:ディナー 17:00~23:00、無休
住所:324/15 Prabaramee Road - Kalim Bay
Patong - Kathu - 83150 Phuket
Thailand
電話:+66 76 618127
https://www.acquarestaurantphuket.com/