モダンヨーロピアン料理、Iggy's と、京都で地元の食材を生かしたイタリアンを作っているGion 245、どちらもミシュラン一ツ星を獲得する両店が、3日間限定のコラボレーションを行いました。

 

去年から新しく厨房の指揮を執るIggy'sのHelioシェフにとっては初めてのコラボレーションですが、実は3年前にも一度コラボレーションでやって来たというGion 245の吉岡シェフ。「驚くほどストレスフリーのコラボレーション」と語ります。

 

そんな今回のコラボレーションのタイトルは、「Genesis(起源)」Gion245の吉岡シェフは、Iggy's のオーナーであり、シンガポールの著名なソムリエでもあるIggyさんと話し合う中で、サブテーマである「対照」という言葉が浮かび上がってきたと言います。

 

その中の一つが「生と死」というテーマの一皿。

 

 

「料理には、様々な対照的な要素がある。僕たちは食材の命をいただいて仕事をしている訳です。料理をすることで、食材はその命を失います。しかし、ある意味命を奪った食材を、美味しく調理することでその命を輝かせることができる。そして食べた人の命をつなぐものになっていく訳です」

 

「この皿のソースは菊。生け花も同じです。切り取った時点で花の命は失われますが、生け花を見ると、その中にある命を感じることができますよね。そんなイメージを重ねました」

 

父が大阪の市場で鮮魚の卸を営んでいた関係で、子どもの頃から市場に出入りし、魚に触れて育った。中学になってからは、本格的に店を手伝うようになったという吉岡シェフにとって、魚の扱いはお手の物。カノビアーノに8年、ヨーロッパで1年学び、8年前にGion 245をオープンしたそう。

 

私がいただいた150ドルのランチコースの内容をご紹介していきます。

 

Spring-Summer-Autumn-Winter

 

Gion 245からは、スペインのイベントでも人気を博したというホタテとチーズのピンチョスを。

 

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桜の葉をイメージした紫蘇の葉を敷いて、切ったホタテに梅のペーストを混ぜた小麦粉の衣をつけて揚げてあります。

 

Iggy'sからは、ポメロを乗せたチリクラブのタルト、フォワグラのムースにポルトワインのゼリーをかけ、砕いたヘーゼルナッツを散らしたもの。

 

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Gion 245からは、鰻とうずらの卵。

 

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鰻は一度炭焼きにしてから蒸して、最後にフライパンで皮目をカリカリに焼き上げてから、さらに、うずらの卵とともに、「桜の木よりも穏やかな香りになるから」と選んだ、りんごの木のスモークをかけてあります。

表面がカリッとしながらも、脂が重すぎない仕上がりになっていました。飼育している鰻全てをメスにできるという、三河の養鰻業者から、600グラム以上のものに限って仕入れているのだとか。

 

ここからが、Life-Death というテーマ。

Gion 245からは、Flower and Snow Crab

薄いライスペーパーに包んだ兵庫県産のズワイガニのフリット。菊の花に、島根の実家で育てているというニホンミツバチの蜂蜜、マスタードなどを効かしたソースを添えて。

 

Iggy's からは、Heart-to-Heart。

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Helioシェフが、ポルトガルらしい料理をと考えついたもので、2種類のハート、仔牛の心臓を炭火で焼き、レタスの芯(ハート)の部分の上に乗せ、更に薄いイベリコ豚のラードを乗せてあります。

 

Heaven-Earth

このセクションは、どちらもGion 245のメニューです。

土の中のごぼうと、放し飼いの鶏の手打ちキッタラパスタ。

 

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もっちりとしたパスタ、香り高いゴボウに、冬のねぎがとても甘く、そして旨味の詰まった京都・奥丹波産の鶏肉に、パルミジャーノよりも優しいコクのグラナパダーノチーズが寄り添います。

 

メインコースの前に野菜の一皿を。

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黄色いトマト、オリーブオイルと塩でマリネしただけというべにくるりという品種の赤い大根は、オアりんごのようにさっぱりとした味。玉ねぎのスープをモレキュラーのテクニックで球状にしたもの、サフランの揚げ玉、ゴマのスノー。

 

そしてメインもGion 245 が担当。

Past-Future

過去と未来、というテーマで、肉と魚のチョイスで提供します。特別に両方いただいてしまいました。

 

まず、魚は愛媛産の鰤。出世魚だけに、ツバスという幼魚(右)と、成魚になった鰤の食べ比べです。

 

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ツバスは若いだけに、脂ののりもあっさりしていて淡白。鰤の方が身の赤みが強く、旨味も濃厚で、横に添えられたわさびや柚子胡椒ともよく合います。

 

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牛肉は、「旨味和牛」として知られる鳥山和牛で、4週間エイジングしたもの(手前)とそうでないもの(奥)。同じトンビという部位ですが、奥の若いものはまだしっかりと肉の繊維を感じ、噛むとアンガス牛のような、赤身の強い旨味が感じられます。そしてエイジングした方は、コンテチーズのような熟成香、そしてとても柔らかでした。ソースは牛の端肉などを煮詰めたものに、赤ワインビネガー、ゆず、醤油、みりんなどの日本の味を加えて。最後に生の玉ねぎのすりおろしを少し入れると、フレッシュ感が出るのだとか。

 

デザートは、エスプレッソのプディングに、ヘーゼルナッツのソース。たっぷりとココアパウダーをまぶしかけて。

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小菓子。マカロンはねっちりしたタイプのものでした。

 

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カノビアーノで8年半働き、最終的には料理長を務めた吉岡シェフは、意識はしないけれども、「にんにく、バター、唐辛子をあまり使わないのは、自分も同じ」なのだそう。

食材がどんどん美味しくなっていく中、前回のCentiとのコラボレーションもそうでしたが、素材の味を生かすイタリア料理と日本料理の共通項が感じられる新しいカテゴリーの料理が、これからますます増えてくるような気がします。

 

<DATA>

■Gion245 x Iggy’s

日時:2019年1月18日〜20日(終了)

 

■Iggy’s (イギース)

営業時間:ランチ 12:00~13:30 (L.O.)、ディナー 19:00〜21:30 (L.O.)、日曜、月曜休

住所:581 Orchard Road Level 3 Hilton Hotel, Singapore 238883

電話:+65 6732 2234

http://www.iggys.com.sg/