2015年11月にオープン、翌年にはミシュラン1つ星を獲得した、気鋭のレストランVEA。Daniel などで働いた、香港人のVicky Cheng シェフがチームを率いています。

 

 

セントラルの駅からほど近いビルの30階、エレベーターの扉が開くと、活気のある細長いキッチンが目に飛び込んできます。12席のテーブル席と、最大10席の個室を除き、メインは25名が座れるというカウンター席。

 

One Team, One Dreamの合言葉のもと、統率の取れたチームが、緻密な皿を生み出しています。

 

 

その一番の特徴は、物語性。香港の「らしさ」を表現しながら、チームが織りなす世界観を楽しんでほしい、そんなお店です。

 

席に着くとまず置いてあるのが、スナック。季節感あふれるモチーフをかたどったもので、私の訪れた3月下旬はてんとう虫と緑の葉でした。

 

 

Chinese Caviar / Steamed Bao / Smoked Sour Cream

アミューズは、中華系らしく、小さな一口サイズのマントウ、その上にスモークをかけたサワークリーム、中国産のハイブリッドキャビアを乗せてあります。

 

 

Smoked Quail Egg / Chinese Vinegar

 

 

続いては、小さなうずらの卵。液体の卵黄に、日本の米酢を入れ、りんごの木でスモークをかけた煙とともに登場します。

 

そしてここで、今日いただく食材が披露されます。立派なアワビ、黒トリュフ、ウニなど。

 

 

小さなグラスの上に、葉脈だけになった葉が置かれ、何が始まるのだろう?と思ったら、これがこれからのコースの幕開け。一つの花が一つの世界、と書かれており、自らのルーツに戻り、その美しさを追求していきたい、というVickyシェフの思いが感じられます。

 

 

Salted Fish / Bak Choy / Crispy Codfish Skin

 

 

Vickyシェフが子どもの頃好きだったという、香港の歌手、George Lamの歌がベースになったスナック。以前はタルトの形で提供していました、新しいバージョンに生まれ変わっていました。歌詞の中に「あなたといれば、干し魚と青梗菜だけでも、とても美味しく感じる」とあることから、身近で、慎ましい食事の代表とも言える食材を、洗練されたものに生まれ変わらせたいという思いがあります。乾燥させた鱈の皮で作ったベースの上に、塩漬け魚のピュレとバクチョイのピュレが乗っています。

 

提供されるタイミングに合わせて、先ほどの葉をストレイナーがわりに、クマリンの香りが重なる、桜の花とトンカビーンズを漬け込んだジャスミンティーが注がれます。

 

塩ハマグリに、発酵した黒豆を合わせたタルト。

 

 

V.E.A. とはVicky et Antonio の略。共同経営者でもあり、バーテンダーで2015 Diageo World Class Hong Kong & Macau でチャンピオンのAntonio Laiさんの手による、カクテルペアリングをいただきました。

 

 

Taiwanese Tomato

Local Oyster / Firefly Squid / Ikura

 

 

季節によっては地元のトマトを使うこともあるそうですが、今は台湾産を使っているのだそう。トマトのエッセンスで作ったフォームの下には、とても甘いトマト、地元産の牡蠣、ホタルイカ、イクラなどが隠れています。

 

 

Basil

マティーニグラスに入った、エルダーフラワーとシャルドネのワインで作ったカクテル、オリーブのように見えるのは、実はマスカット。トマトと相性の良い、バジルの香りをつけて。

 

 

Threadfin “Ma Yau”

Sichuan Chili Oil, Fermented Cabbage

 

 

スレッドフィンというスズキの仲間の白身の魚の柔らかい身を生かしてふんわりとグリルして、発酵キャベツ、魚の出汁のスープとともに。カリカリとしたライスクリスプ、花椒のオイル。「もっと辛いのが好きな場合は、皿のサイドにある花椒をどうぞ」とVickyシェフ。

ペアリングはShiso Lime。

 

 

りんごジュース、紫蘇、ウォッカで作ったカクテル。ライムの香りが、柑橘系の花椒の香りに合います。

 

 

Roasted Sea Cucumber

Flowery Crab / Chicken Fat / 22 years Hua Diao Wine

 

 

シグネチャーのナマコは、

フラワークラブと呼ばれるローカルの蟹のビスクに鶏肉の脂肪の部分を入れたものと、平たい米粉の麺とともに。

 

仕上げに香水瓶に入れた紹興酒をスプレーして、香りのアクセントに。

 

 

ペアリングは、Ginger。

 

 

メスカルという、リュウゼツランからできたメキシコの蒸留酒を、香港の蟹酢と、ジンジャービアで割って。

 

 

 

Truffle / Parmesan / Caviar

 

 

ほうれん草のラビオリの中には、日本の太陽卵というブランドの卵の卵黄がとろりと流れ出します。オシェトラキャビアをたっぷりと盛り付けて、パルメザンチーズのフォームを周りに流してあります。

 

トリュフが香る、中国の揚げパン、油条を添えて。

 

ペアリングは、茸つながりで、トリュフとの相性抜群の、Shiitake。

ウィスキーに、椎茸を含めて4種類の野菜で作ってから清澄したという、温かい椎茸のコンソメを足して、ウイスキーの香りとともに、椎茸の大地の香りを楽しみます。

 

Aust. Blacklip Abalone

オーストラリア産のアワビとウニに、トリュフを削りかけて。

 

 

 

ペアリングは、Onion Oolong。玉ねぎで香りをつけたラム酒に、烏龍茶、玉ねぎのスープ、ライムリーフ。仙草ゼリーや愛玉のような少し中華系のコクを感じる味。ライムの皮を添えて。

 

Smoked Goose

Preserved Chinese Apricot / local Sugarcane / Morel

2週間寝かせたというガチョウは、サトウキビの汁を煮詰めたものを塗ってキャラメリゼさせたという表面が美しいです。

 

 

 

同じサトウキビを使ったカクテルPearとともに。サトウキビの汁に、コニャック、梨のジュース、ナスターチウムという組みあわせ。

 

 

ガチョウの胸肉には、Wokと呼ばれる油の焦げた香りが楽しめる、シャキシャキの食感を残しつつバーベキューしたキャベツにパセリを散らしたもの、表面をカリカリに仕上げたガチョウのフォワグラ、雲南省で穫れたモリーユ茸にシェリービネガーを合わせたもの。根セロリのピュレ。

 

 

最後に、香港の人なら誰でも知っているという、昔ながらのパッケージの乾燥杏を溶かし込んだソースを添えて。

 

 

スモーキーなガチョウは、やや提供温度は低めですが、サトウキビのグレーズのカリカリした感じが生きていました。

 

Aust. Wagyu Short Rib

Daikon, Shiitake, Garlic Chives

 

 

続いては、オーストラリア和牛のショートリブを、24時間かけて真空低温調理したもの。台湾の牛肉麺をイメージしたという、五香粉の香りとマッシュルームピュレの旨味、玉ねぎのピクルスの酸味が生きた仕上がりに。

 

Chrysanthemum

菊の花と、イングリッシュブレックファーストティー、ジンのカクテルを添えて。

 

 

 

Japanese Strawberry

Cheesecake / White Pepper/ Graham Cracker

 

デザートは、日本のいちご。これだけの種類を一つのレストランで見かけることはなかなかない、バラエティ豊かな品揃え。地図を出されて、その下にいちごが隠れているというプレゼンテーションも楽しいです。産地の県の名前がしっかりと書かれているのも、日本のいちご産地を少しでも香港の人たちに知ってもらえそうで、嬉しいものです。

 

好きないちごを選んでください、と言われるのですが、選びきれなくて、白いちごの佐賀ホワイトダイヤモンド、ピンクの奈良の淡雪、高知の大粒のいちごにさせていただきました。

 

 

そのイチゴを、ただ提供するのではなく、ハーブやエディブルフラワーの入った水に丁寧に入れて、すすいでから提供されます。

 

 

「生のいちご」の良さをそのまま出したいけれども、いくらプレミアムな食材とはいえ、そのまま出すのでは物足りない。

こんな一手間加えた演出も、特別感を感じさせてくれます。

 

 

デザートに合わせるカクテルは、Mango Yuzu。

 

 

パイナップルやリンゴなどのドライフルーツと薔薇の蕾を漬け込んだウォッカとジン。

 

Lapsang Souchong

Chinese Mulberry, Hazelnut, Chocolate

 

 

松の葉で燻したスモーキーな中国紅茶、正山小種(ラプサンスーチョン)のデザート。中国の生の桑の実と、桑の実のスポンジ、正山小種のアイスクリーム、ヘーゼルナッツのムースに正山小種のグレーズをかけたもの。

 

食後のチョイスも、ウィスキーから紅茶、フレーバーコーヒーまで、幅広い選択肢で、目移りしてしまいそうです。

 

 

 

 

小菓子は、可愛らしい陶器のボールにリボンをかけて提供されます。

 

 

 

コンデンスミルクの餅、抹茶とパッションフルーツのタルト、小豆のミルフィーユ、オレンジとアールグレイのマドレーヌという組み合わせ。

 

 

 

「香港らしさ」を織り込んだこだわりのプレゼンテーションとストーリーに、驚きと楽しさがたくさん詰まっているお店。記念日などの特別なシチュエーションを、きっと思い出深いものにしてくれるのではないでしょうか?

 

 

 

【DATA】

■V.E.A.(ヴイ・イー・エー)

営業時間:18:00〜 25:00、日曜休
住所: 29 & 30/F, 198 Wellington Street, Central, Hong Kong
Tel:+852 2711 8639