NYのDanielなどを経て2年前に香港の中心街、セントラルに自らのレストラン、VEAをオープンしたVicky Chengシェフ。「フレンチ・チャイニーズレストラン」と銘打って、フレンチの技法を生かしながらも、アジアの食材を積極的に使ったモダンな料理を提供しています。

 

オープンして2年になる今年も去年に続きミシュランの一ツ星を獲得、香港のフードシーンに欠かせない注目の若手シェフとなっています。

 

先日シンガポールでもコラボレーションイベントを行いましたが、香港のお店にお邪魔してきました!

 

VEAの名前は、Vickyシェフの名前と、共同オーナーの、バーテンダーで2015 Diageo World Class Hong Kong & Macau でチャンピオンに輝いたAntonio Laiさんの名前から。

 

 

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ビルの30階にある開放感のあるオープンキッチン、細長い形がとても面白いです。Vickyシェフ自ら案内してくれました。

 

 

 

キッチン全体のシェフの人数は17人。オーナーシェフとして、皆がしっかりと休める体制づくりを考えているのだとか。

 

 

 

その裏にあるのは、チームを大切にしたいという思い。キッチンの壁には「One team one dream」一つのチームで一つの夢を目指そう、という意味の言葉が書かれています。

 

 

 

 

(写真左は、Hong Kong Tatler のWilson Fokさん)

本来は夜のみの営業ですが、今回は香港タトラーのT.Dining Award に先駆けた、メディアイベントの一環として、特別にお昼から開けていただきました。

 

まずはスタートに手を拭きます。この圧縮したペーパータオルに水をかける演出は最近よく見かけるようになりましたが、一風変わっているのは、自分で試験管の中のローズウォーターをかけること。東南アジアだと、強烈な香りの香料がついたペーパータオルが多いものですが、自然な香りのローズウォーターは、ホッとする香りです。

 

 

そして、テーブルに散りばめられているのは、落ち葉の形のビスケット。時期によって、形は変わるそうです。黒胡椒、キャロットジンジャー、ナスと、甘すぎないスターターです。

 

 

最初のアミューズは、薄いタルトの上に、和牛のタルタル、スモークサワークリーム、中国産のオシェトラキャビア、ウニを乗せています。

 

 

Dried Fish and Bokchoy Tart

 

 

Vickyシェフが子どもの頃好きだったという、香港の歌手、George Lamの歌に着想を得たタルト。歌詞の中に「あなたといれば、干し魚と青梗菜だけでも、とても美味しく感じる」という言い回しがあるのだとか。身近で、慎ましい食事の代表とも言える食材を、「干し魚に青梗菜のタルト」という形にして、洗練されたものに生まれ変わらせました。ひよこ豆で作ったタルトの中には、干し魚を揚げたもの、干し魚とジャガイモのピュレ、ミルクで作ったブランタード、その上には乾燥した青梗菜のパウダーと乾燥して素揚げした小魚、コリアンダーの芽。

 

一緒に合わせるのはジャスミンティーで、「塩気をさらに美味しく感じさせる苦味がある」と選んだそう。

 

 

 

 

サンセールの白ワインは、 青リンゴのような甘酸っぱい香りと程よい酸味があるフレッシュなタイプ。

 

Shima Aji - Rambutan - Lemon Balm - Young Ginger

 

シマアジの刺身の中には、タルタルにしたシマアジに、生姜の甘酢漬けやきゅうり、ラディッシュ、生のロンガンや玉ねぎのみじん切りなどが入っています。

 

 

 

そして、レモンバームのオイルに、ロンガンジュースを合わせたソース。やや甘めの味わいです。凍らせたガラスの器にこの冷たいソースをかけると、皿の上でシャーベットのように固まります。

こうしてゲストの前でテクスチャが変わる料理というのは、最近Pollenでもお茶がゼリーになるデザートを体験しましたが、面白い演出です。

 

Roasted Sea Cucumber - Flowery Crab - Chicken Fat - Rice Noodle

 

 

最高級の日本産のナマコに、フラワークラブのムースリーヌをつめ、たっぷりの脂で揚げるように火を通してあります。12年ものの紹興酒と鶏の脂で作ったソースを添えてあります。

 

 

 

 

 

下には自家製の米粉の麺が添えられています。

 

 

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心地よいバランスのボルドー、ポムロールの赤ワインと共に。

 

 

Australian Wagyu Short Rib - Winter Melon - Girolles - Garlic Chives

オーストラリア産の和牛は、じっくりと24時間加熱した後に、表面を備長炭で炙ってあります。

 

ジロール茸はソテーにしたものとピクルスの2種類、ガーリックチャイブの蕾を添えて。

ソースは、「台湾の牛肉麺にインスパイアされた」とVickyシェフが語る、中華風のホタテと鶏の出汁に、五香粉などを合わせたアジアな味わい。

 

 

Milk Jam - Salted Duck Egg Yolk - Quinoa - Jujube

 

 

液体窒素でひんやりと冷やした塩漬け卵黄のパウダーをかけて

 

 

ミルクを煮詰めて作ったソルベ、中国産のデーツのピュレ、そしてデーツにマスカルポーネを混ぜたピュレを添えて。下にはカリカリの食感のキヌアのパフが添えてあります。

 

乳製品とアジアの味が、意外に合うことに驚きます。

 

 

お茶と一緒に提供されたのは、焼きたてのマドレーヌ。こんなクラッシックなお菓子がきちんと出てくるのは、きちんとフレンチで学んだシェフのアイデンティティを感じます。マダガスカル産のバニラビーンズをたっぷりと使っているということです。

 

 

今香港の潮流は、アジアの技法や食材に敬意を払いつつも、西洋のテクニックなど、新しい形でそれを表現していく料理。どこか懐かしいけれど新しい、そんなバランス感覚が受けているように思います。

 

また、チームワークをテーマとしてキッチンに掲げているところも、「今の時代のレストラン」という気がします。

 

 

若手の香港人シェフによるこういったレストランが、中国料理にも影響を与え、また新しい時代のこの国の料理を作っていくのかもしれない、そう感じたひとときでした。

 

【DATA】

■V.E.A.(ヴイ・イー・エー)

営業時間:18:00〜 25:00、日曜休
住所: 29 & 30/F, 198 Wellington Street, Central, Hong Kong
Tel:+852 2711 8639