タイの中でも有数のゴージャスなリゾートが立ち並ぶプーケット、その中でも最高級リゾートと呼び声が高いのが、トリサラ。

 

 

2004年のオープンですが、去年大規模な改装を果たし、それと同時に新しく生まれたのが、プーケットの食材にフォーカスしたガストロノミーレストラン、PRU(プルー)。

 

 

オランダ生まれの若干28歳、Jim Ophorst シェフは、実際に数ヶ月かけてプーケット内の生産者を訪れるだけでなく、広大な敷地で野菜を育て、鶏や鴨を飼育して、生みたての卵を料理に使っています。

 

「家のそばにはたくさんの温室がある、農村地帯で育った。だから、農園に来るとホッとする」と足繁く通っては、新しいメニューのインスピレーションを得ているのだとか。

 

Jim シェフ(左)、ゲストシェフとして訪れたバンコク、Le Duの Thitid Tassanakajohnシェフ(右)と。

 

 

 

窓の外には海が望めます。

 

コースは、大地と海のイメージ、そしてそこから生まれた植物を表現したアミューズからスタート。大地を表現しているのはトマト。甘いクッキークランブルに、トマトウォーターのグラニテ。

 

 

そして、海を表現するのは、プーケットではサラダに使われているという海ぶどうを。

パフブレッドの中には、中東や地中海を思わせるナスとゴマのピュレですが、スパイスは使われておらず、自然な味わい。

 

 

 

そしてこちらは、大地と海から生まれた恵みを表現。真ん中のオクラの中には、トリサラリゾートの浜辺で毎日取れるサンドフィッシュという魚をスモークし、ニンニクと合わせた旨味たっぷりのピュレ、上にはポメロの果肉が飾られています。

 

 

薪で焼き上げたサワードゥブレッド。

 

 

表面をやや強めに焼き上げてあり、内側はしっとり、というほどではありませんが、水分を残しています。全粒粉のような芳ばしい胚芽の香り。

 

 

タイ北部クラビ産のクリームを使いプーケット島内で作ったという口どけの良いバターは、プレーンに海塩を乗せたマイルドな味わいのものと、タイの海藻パウダーを混ぜ込み、しっかりと発酵をさせたやや酸味の効いたもの。

 

農園で取れたタイバジルを使ったオリーブオイル。

 

Yellow Tail Hamachi tartar, crème fraiche vinaigrettete, rosella powder and Oscietracaviar from Hua Hin

 

 

ハマチのタルタルは、酸味の効いたヴィネグレットに漬け込んだハマチにごく細かく刻んだ生姜を混ぜ込み、上からロゼラの実の粉、タイHua Hin産のオシェトラキャビアと海ぶどうを乗せたもの。

 

上から、酸味のあるフレッシュクリームのヴィネグレットをかけて、まろやかさをプラスします。まるでヨーグルトのようなまろやかさと酸味のバランスに、カフィライムの皮とジュース、生姜の効いたハマチがよく合います。シャロットやタイバジルなども散りばめられています。

 

 

2015 Astrolabe, Sauvignon Blanc, Marlborough, New Zealand

ワインはニュージーランド産のソーヴィニョンブラン。少し動物性の、はっきりとした草原の香り。

 

 

Pickled duck egg with ingredients from in and around our farm ‘Pru Jampa’

 

 

農園で育てている鴨の卵を使った農園を表現した一皿。62度で2.5時間低温調理した鴨の卵黄に、塩漬けにした鴨の卵黄のパウダー、シャキシャキした細いハスの根は、しっかり甘酢の味付けにしてしまいそうなところを、控えめな味付けで好印象。ベビーケールの葉を散りばめ、最後にベタルリーフのソースをかけて。ベタルリーフの苦味と卵黄のコクがよく合います。

 

 

そして、この一皿にはマッシュルームのブリオッシュ。丁寧に作ってあるバターの芳醇な香りのブリオッシュに、マッシュルームが旨味をプラス。

 

ちなみにこれが唯一、Jimシェフが低温調理器を使う料理なのだとか。

 

ワインは、

2016 Granmonte “Spring” Chenin Blanc, Khao Yai, Thailand

 

 

野生的な酵母の、ナチュラルワインに近い、穀物などを思わせるような、複雑で厚みのある味わい。どこか肥沃な土のイメージに近い香りです。これが、卵黄と植物の緑の、異なったベクトルの、どちらも濃厚な味わい、そして大地のイメージのあるマッシュルームのブリオッシュにもとてもよく合いました。

 

Cauliflower stem cooked in brown butter with a bone marrow crème, foraged mushroom and sardine powder

 

 

シンガポールで行われたS.Pellegrino Young Chef のコンペティションで作った一皿。

 

 

甘みのあるカリフラワーの茎を焦がしバターで焼き上げ、薄くスライスした生のマッシュルームとカリフラワー、さらにマッシュルームの粉とニシンの粉をかけたもの。

Phuket fiddleheadsと呼ばれる、プーケットのジャングルに自生するシダの仲間を素揚げにしたものがかかっています。

 

さらに、ソースに使われている酸味は、桑の実と天然酵母を使って半年かけて自家醸造し、さらにタイの伝統的な保存方法、竹の筒の中で1年間熟成された酢。

 

 

味見させていただきましたが、まろやかな酸味で、とても奥行きのある、少しバルサミコを思わせるような赤酢でした。

 

2014 Lorenzo Begali, Valpolicella Classico, Veneto Italy

 

 

赤ワインはLorenzo Begaliのヴァルポリチェッラ。リパッソと言って、屋内で乾燥させたぶどうで作ったワイン、アマローネの搾りかすにワインを入れて二重発酵させてあるため、豊かなレーズンやはちみつを思わせる香りが、カリフラワーとマッシュルームの野性味とボーンマローのこくを引き立てます。

 

 

Carrots cooked in the soil they came from, fermented carrot juice, cured egg yolk from the farm

 

 

自家農園の人参を、土の中で焼き上げ、発酵させた人参のジュースをビネガーの代わりに使ったサバイヨンソース、自家農園の鴨の卵から作った塩漬け卵黄を削りかけたもの。

 

主役はとにかく、表面をほんのり焦がして、バターをまとった柔らかな人参の甘み。ふんわりとしたクリーミーで酸味のあるソース。アスパラガスのサバイヨンソースを思わせるような、ほぼ人参だけの、シンプルな料理。メインの前、いわゆるグラニテの入るタイミングで、まっすぐ直球のストレートな料理が入ってくるのは、とても心地よかったです。

 

「土の中で焼き上げる」というのと、とても柔らかい人参の食感をどうやって引き出したのか気になってお聞きしたところ、この人参は地面を掘って作ったくぼみの中に、スモーキーさを出すユーカリの薪と、甘い香りを与えるロンガンの薪を入れて炭にしてから、生の人参にタラゴンのオイルをかけてからバナナの皮で包んだものを入れて蓋をしてから再度土をかけて、5時間から8時間かけて炭の香りをつけて焼き上げたもの。「なかなか都会のシェフはこんな手間のかかる作り方はできないでしょう」とJimシェフ。この焼き方自体は、オランダに住んでいた頃に、近所にエジプト出身の方が住んでいて、特別な日にはこのやり方で料理をしていたことから着想を得たのだとか。

 

土の中でじっくりと火を入れて引き出された人参の甘味があるこその、人参が主役の料理。

 

2013 Barrahonda Barrica, Yecia, Spain

 

 

ワインは果実味のボリュームもぐっと上がった、スペインの赤。ダークフルーツの印象が甘さに寄り添いつつ、しっかりと効いたタンニンが、甘さを引き締めます。

 

Aged Duck roasted over open fire with sweet tamarind, red onion marmalade and a duck sauce infused with pickled Thai cherries

 

 

人参と同じ2種類の薪で1時間半かけて焼き上げた、熟成鴨。タマリンドのソース、バターソテーにしたしいたけ、小さなインド料理のプーリのようなパフ、焦がした玉ねぎと米粉のソース、紫玉ねぎを加熱してマーマレード状にしたもの、タイ産のさくらんぼは3月に収穫したものをピクルスにして保存し、赤ワイン、タイムや月桂樹と共に煮込み、最後に鴨のジュをかけて仕上げたもの。

 

オーブンで焼き上げた鴨は、しっとりとした食感ながら、細胞の中の水分が壊れていない、みずみずしい印象。スモーキーな香りが食欲をそそります。皮はあえてクリスピーではなく優しくしっとりと。そこに、しっかりと甘いクラッシックな鴨のジュを使ったソースをたっぷりと。

 

 

サイドに添えられているのは、鴨のモモのコンフィを詰め込んだ、手間のかかったパン。このパンをソースにつけながら食べるのも良かったです。

 

2014 Two Paddock, Picnic Pinor Noir, Central Otago, New Zealand

 

 

ワインは、鴨と抜群の相性のピノ・ノワール。最初、スモークの香りとの相性の良い、ナチュラルワインらしい、野生的な酵母、穀物を思わせる香りがありますが、その後から鴨肉本来の味と合う、上品なピノ・ノワールらしい香りが現れます。

 

プレデザートはハスの花びらにグラニュー糖をつけた砂糖菓子、後味にほんのほんの少しだけ花の香りがあります。同じくフローラルなタイのサフランと農園から撮ってきたパッションフルーツのジュースを合わせたアイスクリーム、ライスパフと合わせて。自然な甘さのマンゴーの角切りと。

 

 

‘Pru Jampa’ pana cotta of Dahla flower, lemongrasss sorbet and foraged sorrel fruit

 

 

トーチジンジャーのパンナコッタと、同じトーチジンジャーのパンナコッタにロゼラの粉をまぶしたもの、すっきりとしたレモングラスのソルベ、ほんのりとした甘さを強調する塩水に漬け込んだ酸っぱい小さいスターフルーツのような果物、Sorrel Fruitsと。丸いものはシンプルなチュイル。

 

 

最後は、鉄瓶に入ったトーチジンジャーとレモングラスのお茶で締めくくり。

 

 

今年2月に、ホテルのフロントで働くタイ人の奥様と結婚したJimシェフ。しっかりとタイに根を下ろした料理を作っています。

 

 

こちらのレストランは、トリサラ宿泊客でなくても利用することができます。

コースは私がいただいた6コース(4500THB、ワインペアリング+2500THB)の他にも、4コース(3000THB)、8コース(6000THB)があります。ぜひ訪れてみてくださいね。

 

<DATA>
■PRU
営業時間:ディナー 18:00~22:30(日曜休)
住所:60/1 Moo 6, Srisoonthorn Road, Cherngtalay, Thalang, Phuket 83110 Thailand
TEL:+66 (0)76 310 100
URL: http://prurestaurant.com

 

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