モード誌編集者歴35年の平工京子です。

 

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プロローグ

 

 

ダイヤモンド【悪夢のLAロケ⑦/

  あの大スターに遭遇…】

からの続き

 

 

きょうは、

私のブログの原点でもある

『流行通信』物語の第22話

【悪夢のLAロケ⑧/怪人二十面相】

を一部加筆修正して、

再アップします。

 

 

PHOTO/小暮 徹

 

 

宝石赤 宝石赤 宝石赤 宝石赤 宝石赤 宝石赤

 

 

1987年1月。

『流行通信』の編集者だった

20代の私、ヒラクは、

 

 

LAロケ初日の晩に、

撮影用に借りた

アクセサリーとバッグを

ごっそり盗まれ、

 

 

その後、撮影が連日続いた

約1週間のあいだは

盗まれたものを弁償する

保険のことで頭がいっぱいで

撮影の現場ではうわの空、

というありさまでした。

 

 

フォトグラファーの小暮さんが、

最初の打ち合わせで言った通り、

すっかり子守をさせてしまいました。

 

(↓その件については、こちらを)

ダイヤモンド【悪夢のLAロケ①/暗雲の予感】

 

 

 

それでも

巻頭のハリウッド特集の他に、

2本のファショッンページを

なんとか撮り終えられたのは、

ひとえに、小暮さん

同僚の松野君のおかげです。

 

 

 

 

 

帰国してからは、

盗られたものを貸してくれていた

ブランドのプレス(広報担当)20件に、

まず、お詫びの電話です。

 

 

何とか保険はおりました。

 

 

が、シーズンの立ち上がりの紛失は

どこのブランドにとっても

大きな痛手でした。

 

 

それがどんなに重要なことかが、

よくわかるので、

私は申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 

 

 

が、エディターの仕事は

それで終わりではありません。

 

 

 

撮影したすべての写真の中から

各々のページに

使用するカットを決めて、

レイアウトに回し、

各ページに入る原稿を書きます。

 

 

写真のセレクトは、

何百、何千と撮ったカットから

まず、フォトグラファーがあら選びします。

 

 

1987年、

写真はまだ

アナログの時代。

 

 

フォトグラファーの小暮さん

今回のLAロケの写真を

35ミリのポジフィルムで

撮影していました。

 

 

 

 

 

現像が上がって、

セレクトができるようになった時。

 

 

小暮さんには

次の海外ロケが入っていました。

 

 

その仕事が終わって帰国してからでは

入稿スケジュールが間に合いません。

 

 

何としても小暮さんの出発前に

セレクトをもらわないと。

 

 

私は、成田空港に向かう車に

小暮さんといっしょに乗り込みました。

 

 

小暮さんは、車内で

40ページ分のセレクトを

してくれました。

 

 

ポータブルのライトテーブルに

ポジフィルムを挟んだ

透明のシートを置き

ルーペで覗いて、

これはと思うカットに

ダーマトで丸を付ける。

 

 

成田に向かう道中、

ひたすら、これの繰り返し。

 

 

車酔いしそうになりながら

それでも、

なんとかやり遂げてくれのです。

 

 

おかげで私は、無事、

小暮さんのセレクトを

受け取ることができました。

成田で。

 

 

 

 

 

 

トップの写真は、

全25Pの巻頭特集中、

サンセット大通りで撮ったページ。

 

 

モデルのアンジーの動きと、

抜けの風景を

広角レンズで捉えた

ダイナミックな写真です。

 

 

「ハリウッドの光と闇」という

編集長のイメージはいつしか吹っ飛び。

 

 

 

 

現状のモデルとロケ場所で

最善を尽くそうと方向転換した結果、

この特集は「ハリウッド探検記」

なったのでした。

 

 

今、あらためて見ると、

我ながら、なかなかの力作です。

 

 

 

話は1987年1月の成田に戻ります。

 

 

ロケに連れて行く

アシスタントと

カートに

カメラ機材を山積みにすると、

 

 

小暮さんは車内で

大切そうに脇に置いていた

ケープを羽織りました。

 

 

ん?  ケープ?

 

 

小暮さんのこの日の出で立ちは、

奥さんの

こぐれひでこさんのデザイン。

 

 

 

 

 

 

ダブルブレストのジャケットに

くるぶしの見える丈の

パンツを合わせた

きちんとしているけど、

ふつうとはちょっと違うスーツ姿。

 

 

そこに同じ素材のケープです。

どう見てもただ者ではありません。

 

 

 

↑ こんな感じでしたね。

パンツ丈はもっと短いですけど。

出典:TABARRO

 

 

 

小暮さん、あなたは

怪人二十面相ですか?

 

 

私は、そう、ツッコミを

入れたくなりました。

 

 

小暮さんは、

 

「じゃ」

 

と手をあげると、

さっそうとケープをひるがえして

成田空港の人混みの中に

消えて行きました。

 

 

『流行通信』物語

悪夢のLAロケ[完]

 

 

【LAで買った、古着のセーター】

へ続く